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サラエボの丘  作者: はまゆう


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7/7

第6章 「世界が見た“価格表”」

1


翌朝、アミールは壊れたラジオの前に座っていた。

雑音の向こうで、外国のアナウンサーが早口で何かを読み上げている。


「――サラエボ包囲戦に関する新たな証拠が――」

「――民間人を標的とした“娯楽行為”の疑い――」


アミールは息を呑んだ。

ついに、世界が知ったのだ。


だが、世界の反応は一枚岩ではなかった。


2


■ 欧州のニュースルーム


ロンドンの通信社。

編集長は、机に広げられた“料金表”のコピーを見つめていた。


「……これは、戦争犯罪の証拠になり得る」

「だが、出所は?」

「サラエボ内部の記者から。信頼できる筋です」


編集長はしばらく沈黙し、

「掲載しろ」と短く言った。


その決断は、

翌日の欧州各紙の一面を飾ることになる。


“子どもと妊婦が高額、老人は無料――

 戦争を娯楽に変えた“価格表”の存在”


読者の反応は激しかった。

怒り、恐怖、そして信じられないという声が渦巻いた。


3


■ 国連本部の会議室


ニューヨーク。

国連の会議室では、緊急の非公開会合が開かれていた。


「この文書は本物なのか?」

「軍の印章、日付、文書形式……すべて一致しています」

「もし事実なら、国際法の重大な違反だ」


だが、別の代表が冷静に言った。


「証拠が“どこから出たか”が問題だ。

 内部告発なら、関係者の安全はどうなる?」


会議室には、

“正義”と“外交”の板挟みの空気が漂っていた。


誰もが動きたい。

だが、動けば誰かが傷つく。

その現実が、議論を重くしていた。


4


■ 国際ジャーナリストたち


パリのカフェ。

複数の記者が集まり、

“料金表”のコピーを囲んで議論していた。


「これは、ただの戦争じゃない。

 “娯楽としての殺戮”だ」

「人間の倫理が崩壊した証拠だ」

「この街で何が起きているのか、もっと掘り下げる必要がある」


彼らは取材班を編成し、

サラエボ周辺へ向かう準備を始めた。


世界の目が、

初めて“丘の上”に向けられた瞬間だった。


5


■ 一方で――


包囲側の軍関係者は激怒していた。


「内部に裏切り者がいる」

「情報が漏れたルートを探せ」

「市民の動きを監視しろ」


街の検問はさらに厳しくなり、

外出する市民の数は一気に減った。


アミールは、

世界が動き出した喜びと同時に、

街に迫る危険を肌で感じていた。


6


■ サラエボの小さな部屋で


アミールはラジオを切り、

深く息を吐いた。


世界は動いた。

だが、それは“救い”ではなく、

“嵐の前触れ”でもあった。


彼は窓の外を見つめながら呟いた。


「真実は届いた。

 あとは……この街が持ちこたえられるかどうかだ」


その夜、

サラエボの空には、

いつもより多くの砲撃の光が走った。


世界が知ったことで、

戦争は新たな段階へと進んでいく。


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