第23話【ご挨拶に伺いました】
呼吸が乱れたソシオに対し、微動だにしないケーボーイ。何が起きたのか……理解出来ない。
「ソシオ君、普段のキミの活動は僕らの理想なのに、なぜ彼のチームに?」
ソシオは出した拳を引っ込め、止まらない汗をその手で拭う。
「ハァッ……ハッ……オマエ、俺の記憶を見たのか?」
ケーボーイは軽く指を揃えて拝むように構えた。その含羞んだ様子は、本心なのだろう。
「ごめんね、キミの熱い拳が迫ったからつい能力をね。殴ろうとしたらどうなるかを教えるのに『視る』と『魅せる』は同時に行われるんだ」
なんて?
ケーボーイの能力は記憶の改ざんじゃないの?
「ッッかあああ恥ずかしィーッッ!!!! 俺の過去覗かれたぁぁぁ!!!!」
ソシオ、めちゃくちゃ赤面。うるさい人だなぁ。
若干だけどケーボーイが困っているじゃん。
「……参った、こりゃ勝てねぇわ。能力の相性が悪過ぎる。オマエも悪かったな、骨壊しちまって」
「えっ、いやっ、ケーボーイ! どうなってんの!?」
湖沼くんも私も驚きしかないよ!
ポケットに手を入れ、戦意を収めるソシオ。
「湖沼くん、音咲さん、説明はまたの機会にね」
安心のリーダー。好き。
「そうだ、ケーボーイ、他のメンバーとニッタが――」
私が言いかけた所で、カッコよく制止される。
「状況は完全に把握出来てるよ。これもまた悪いけど、二人の記憶も到着と同時に読ませてもらった……ごめんね」
「到着と同時に!? 視るのに一瞬……というかコンマゼロ秒も掛かってないんじゃ……」
生徒への被害もなく、戦闘を最小限に抑えたケーボーイ。
さて、この敵さんはどうするのだろう。退いてくれるのかな?
降参のポーズをしながら薄ら笑みを浮かべるソシオは、そっと口を開く。
「『金縛り』は俺の能力じゃねーんだが……まぁいいや、どうやらウチらのボスがアンタに挨拶をしてえんだとよ。だから――」
ケーボーイに向かって言い放つと、強力な銀色のオーラを再び纏わせ、拳をグッと握り込むソシオ。
バタバタバタバタッーー!!
百人を超える生徒と、先生達が一斉に倒れた。
この場に立っているのは私たちだけ……思わず声を上げてしまう。
「な、何を!?」
「落ち着け嬢ちゃん。俺の能力『安眠枕』で眠って貰っただけだ」
体育館の床に寝そべる生徒達。意識を失ったかのように、心地良さそうな笑顔を浮かべて、中には涎も垂らしながら眠っている生徒もいた。
これは大丈夫なやつ!
「うん……音咲さん、湖沼君、僕の傍から離れないでね」
「わああああ言われたい台詞ランキング3位出たああああ!!!!」
あまりの興奮に推死してしまいそうよ!!
凄い顔で湖沼くんが私を見ているけど気にしない!!
――ふざけている場合では無かった。
ブゥンッ!
破壊されたステージから、本日最後であろう、ボスとやらが出現したのだ。
その出立は……あ、見たことあるイケメンじゃん!
「……これはこれは。お久しぶりですね、タツヤ」
壇上からノーモーションで降りる……落ちる? そのイケメンは恐ろしくゆっくりと近づいて来た。
ってタツヤあああああああああ!!!!!!!!
ああああ!?!?!? タツヤって言うの!?!?
ふざっ、ふざけてる場合じゃないのにぃい!!
「……ユウ。やはりキミだったのか」
羊の覆面、その奥深くから、鋭い眼光が見えた気がした。
ハンドポケットを崩さないまま、ユウと呼ばれたイケメンシルバースーツは距離およそ5メートルの地点まで来た。
「お互い忙しい最中、今日は会えると信じてましたよ」
「……」
数歩下がったソシオに対し、一歩一歩近づいてくる敵の親玉。ソシオがそう言ったのだから親玉なのだろう。
ケーボーイとケンタがいるから半ば安心しているが、油断してはいけない。視線を外さぬよう真剣な眼差しで対象を捉える。
だが推し活により、私は鼻血を出している。
「……もう……親友と呼んではいけないのかい?」
余裕の笑みを浮かべたまま、おしゃれなパーマ掛かった茶髪を掻き上げると、丸眼鏡の奥から悍ましい視線が突き刺す。
これは……怒り?
「黙っていただけますか、獣。どうせ私の心も読めるのでしょうから」
「……」
ほんの僅かな静寂。沈黙が、とても苦しい。
臨戦体制ではないものの、一触即発と言ってよい状況だろう。
ソシオはバツが悪そうにしながらも、落ち着いている様子から、彼がソシオより更に格上であることを物語っている。
ケンタは先の闘いで精神を消耗したのか、半身を引いて胸を抑えていた。
そして――ようやくポケットから手を取り出し、肘を曲げて両手を天にかざす『ユウ』と呼ばれた男。
歪みを抱えた悪意に満ちた顔で――
「――今日はご挨拶に伺いました。私どもの宣戦布告は受け取って貰えましたでしょうか?」
「……うん。『DARK』、それが……キミの考え抜いた結果なんだね?」
ニヤッと笑い、言葉を紡ぐ。
「我々を止めようなどと思わないでください。むしろ、我々があなた方を消していく方針ですから」
「ユウ、キミの狙いは『始まりの啓典』だろ?」
ユウは一瞬驚きの表情を造ると、直ぐに元に戻る。
啓典とは一体何のことだろうか。
「……やはりか。タツヤが持っていたんだね?」
「さあ、どうだろうね」
――きっと、私の知らない重要な何かが原因で、今のこの状況があるのだろう。
死の恐怖と好奇心が、同時に芽生えてしまうのはいけないことなのだろうか。
また僅かな沈黙。
横にいるケンタが、二人の会話を他所に怒りを蓄えているように感じた。
その視線を読んだように、ユウが反応する。
「おや、彼は確か……生きていたんですねぇ。思ったより優秀なんでしょうか」
「……優秀なのは彼女さ」
照れる。ケンタ、もっと言ってやれ。
でもケンタの怒りが高まっている!
「まぁまぁ、そう頭に血を上らせないでください。今度はちゃんと殺してあげますから」
「ッ!?」
この男……本心でそれを言っている。やはり油断しちゃダメだ!
「それは僕がさせないよ。ユウ、何度僕がキミを止めたかわかるかい?」
丸眼鏡に触れ、明後日の方向を見るユウ。
「……100までは数えていました。拮抗していますねぇ。お互い本気じゃないとはいえ、確殺は難しいようです」
「えっ!? どういうこと!?」
私の正面に立つように、ケーボーイが右手を横薙ぎにする。
「彼の行動を予見して、互いの記憶領域内で何度も繰り返し闘っているよ。今この瞬間も――」
フッフッフと声に出して笑うユウ。
ケーボーイもフッと微笑み、余裕を感じさせる。
「今日は挨拶だけ……と思っていましたが、どうでしょう、賭けをしませんか?」
「「賭け?」」
ケンタとハモった。どうして敵のボスって何かを賭けたがるのだろう。
「――折角なので、後ろの二人にも説明しましょうか。我々『ダーク』のメンバー4名とそちらの『ビースト』4名が、それぞれ別の狭間で1対1で戦闘中です。果たして誰が……どのチームの何名がここへ戻ってくるでしょうねぇ?」
「チッ、くだらないね」
ケンタがイキった。同意だけど。
「俺らが小競り合いする意味もねぇようだし、ただ待ってるのもつまんねーからな。どうせ寝てる奴らも暫く起きねぇし……俺は『ダーク』の4人だけが戻るに賭けるぜ?」
あいつら強ぇーからなって小さな声で追従する小物感のあるソシオ。……だけどソシオが少なくとも私やケンタより遥かに強い事実がある。
「本気で殺し合いをしているんだとしたら、僕が止めに――」
――視界からユウが消えた。
ケーボーイの言葉と同時に、私の肩に……いや、ケンタの肩にも腕が掛けられた。
ゾッとした……死を直感した……怖い。
「止めになんて行かせませんよ? ねぇ、タツヤも学生の2人も、ここで待ちましょうよ」
ニッコニコで首から肩に腕が垂れ下がる。瞬時に振り返るケーボーイも驚嘆の表情だった。
「安心してください、殺しませんよ。今はね」
スッと腕を外して私とケンタの間を通過し、ケーボーイの肩にポンと手を置くユウ。
「守りながらでは不利なんですから、大人しく賭けに乗ってください」
「……僕のBETは決まっているさ――」
――【次元の狭間 青の遺跡】
「ッるあああああ!!!!」
青白い空間に謎の遺跡がある。
豪快な音と共にそれらが細切れにされていく中、狼の覆面はその赤眼を光らせ、追従していた。
「へっ、当たんないよーだ! もっと本気で来ないと、殺しちゃうぞバカ狼!!」
「……クソチビがコラァ!」
――ステージ2。
『スポーンVSゲーム』
闘いは続いていたーー!
あ、音咲です!
夜分遅くにすみません……深夜なのでヘッドフォンを付けてノバフラの楽曲を朝まで聴きまくろうと思います!
皆さんは真似しないでくださいね?
私は特殊な訓練を積んでおります!
それでも寝ながら音楽を聴きたい方は、難聴になってしまうので必ず音量を下げて、タイマー付けて、あと感想書いて⭐︎付けて、ブックマークも――
「またかこの野郎、NGだ!!」




