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ずっとまえから…

成一はアルバイトが終わり自宅に戻った。



台所には美鈴が居る。



今日はシチューだ。



「はぁ…」



成一はため息を着いた。



勿論シチューが不服と言うため息ではない。



「4歳の時か…」



成一は思わず小声で呟いた。



今日の下校に美鈴がチョコレートをくれる前に言った言葉が気になってしょうがなかった。



















成一小さい頃の事覚えてる?。













4歳の時の事。













美鈴が言った言葉が脳内で再生される。




成一はずっと考えて四歳の頃の僅かな記憶に公園が浮かんでいた。













この記憶は本当に僅かしか思い出せない。




公園の砂場で成一は美鈴と遊んで居た。



砂場の土で山を作っているようだ。



成一は一通り山を作っていたが手を止めた。



成一はこの時何かを決心した気がする。



「美鈴」



「なあに?」



不思議な事に美鈴の顔が見えない。


声だけだ。



「大きくなったらさ、」





ここで記憶が途切れた。



随分と中途半端な途切れかただ。どんなに考えても自分が言った「大きくなったらさ」の後の言葉がノイズがかかったかのように思い出せない。




成一は何となくだが今日の美鈴の話しとこの記憶が関係有るような気がした。



いや、本当に何となくそんな気がするだけだが。




「成一!!」



「わっ!!」



突然美鈴の声が大音量で聞こえ、成一は思わず飛び上がってしまった。



「何だよビックリしたな」


成一は思わずジト目になりながら耳をさすった。



「何だよじゃないよ、さっきから呼んでるのに何にも反応しなかったよ?」



美鈴は成一の真ん前にまで顔を近付けて抗議するように言ってきた。


少しほっぺも膨らませている。



「わ、悪い!」



成一は慌てて謝った。


顔が少し暑い。

真っ赤になっているかもしれない。



いくら幼なじみとは言え、恋している相手にここまで顔が接近すれば当然だ。



「良いけど何か考え事?」


「あ、あぁ、まあ、ちょっとな」



成一は美鈴の事を考えていたが咄嗟に誤魔化した。



「そう…あ、そうだ、シチューが出来てるからよそってくるね」



美鈴は成一に微笑んでキッチンに向かおうとした。



「美鈴」



成一は何でか美鈴を引き留めてしまった。



何やってるんだと思ったが気が付いたら喉から言葉が出ていた。



「なあ、4歳の頃って何だ?」




成一が聞いた瞬間 美鈴は悲しそうな表情になった。



成一は聞いたことを後悔した。


同時に美鈴に言わず自分だけで考えるべきだったと途端に後悔しかけた。



「…ううん、何でも無いよ」



美鈴はそう言ったが言葉とは裏腹に悲しそうな表情のままだった。



成一はやっぱり何か有るとわかった。



と言うより成一じゃなくてもここまで悲しそうにしていれば誰だってわかる。



「嘘つくなよ、何か有るんだろ? 」



成一は追及した事にした。



ここまで聞いたら引き返す訳にはいかない。


目の前の美鈴は俯いてしまった。



だがすぐに顔を上げて。



「小さい頃の話だよ、それよりシチュー出来たから食べよう」



と美鈴は笑顔になり、キッチンに向かった。



その時の美鈴の笑顔が少し無理して見えたのは気のせいではないだろう。








美鈴はあの後帰った。


帰る間際少しぎこちなかった気もするが引き留める事など出来る訳もなかった。


自分が忘れているせいだ。






美鈴が家に家帰った後成一は学生服から着替えるのも面倒くさくなり、そのまま布団に入った、布団で横になりながら美鈴の事を考えていた。考えるまでもなく、結論は出ている。



(思い出すしかないな)










成一は寝たのかもわからないまま、起き上がりカーテンを少し開けて外を覗くと少し明るくなっていた。



何時だと思い携帯を確認してみた。



時間は6時だった。



この時季の朝はかなり寒い、成一は二度寝しようかとも思ったが美鈴の事を思いだし、起きることにした。



成一は取り敢えず洗面所で顔を洗い、歯を磨いた。











何時間たったのだろうか。



成一は寝室の壁に寄りかかって座って居る。



起きてからここでずっと考えていた。



だが何度記憶を確かめても一向にクリアにならない。



「あの公園に行ってみるか」



成一はそう呟いて、学生服のままな事も忘れて小さい頃、よく行っていた公園に向かった 。








成一は公園に着いた。



公園の入り口には「新風公園あらかぜこうえん」と書かれた札がかかっている。



この新風公園は滑り台とブランコと砂場だけしかない、シンプルな公園だ。





ただ、少し広い公園でもある。



成一は懐かしさを感じながらブランコに腰をかけた。



それもそうだろう、名前も忘れる程、昔に来た公園と言うだけでも懐かしいがこの公園は昔と何も変わっていなかった。



成一はブランコを軽く漕ぎながら何気なく砂場を見た。


懐かしいと言う気持ちが大半を占めた。



小さい頃、よくここで美鈴と話をした。



そう言えばここで美鈴とあの話をしようと決心したのだ。



「ん?、決心?」



成一は思わず頭を押さえた。


けして痛い訳ではない。


成一の脳内であの時の記憶がフラッシュバックし始めた。







成一は砂場の土で山を作っている。



美鈴も隣で成一の山作りを手伝っている。



だが成一は手を止めた。



「美鈴」



「なあに?」



美鈴は可愛らしい微笑みを成一に向けて返事をした。




そう言えば美鈴はこの頃からこの明るい笑顔を成一に向けてくれていたのか と成一は思った。



「大きくなったらさ」




「ボクとけっこんしてくれる?」



ここでフラッシュバックがと切れた。



「…」




成一は暫く呆然としたが直ぐに我に帰った。



「ちょっと待ってくれよ」



「オレ、美鈴にプ、プロポーズしたって事か?」



成一は今の今までここ数年以内に美鈴に恋をしたと勘違いしていたが、実はずっとまえから美鈴の事が好きだったって事ではないか。



成一は小さい頃の事とはいえ、思わず慌ててしまい、暫く呆然と公園の砂場に佇んでいた。





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