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6話 リスペクトしあうって大事だよね


 ルディが無事クリスタルを破壊したことを確認。

 一瞬喜んだが、すぐ次の戦闘へ切り替えたのは加点ものだ。


 空を見上げる部隊、それを遠くから眺める。


 隊員もこちらに気付き手を振る。手を振り返したのちに、ルディに向けて親指を立て、よくやったと意思表示。



「褒められたぞぉルディぃ~よかったなぁ」

「ははは、次はきっちり一人でも仕留めてみせます!」

「なにぃ生意気なぁ~このこの」

「ふふふ」



 一方、旧市街東部。

 魔法の残滓に溢れかえる、焼け野原と化した街。

「4か、だいぶ稼いだんじゃないかフィリップ」

「消火してくれ、ジョーダン、やりすぎて後で何か言われるのも面倒だ」

「了解、殿下」


 戦闘中ではあるが、中央南よりで2つの消失反応を確認。

 転送直後の一つと合わせて、あの男は3つ。


「まだだ、圧倒してやる」



 旧市街が闇夜に包まれる。

 当然だが、明かり一つもない。

 遠くから、モンスターの遠吠えと魔法の音が聞こえる。


「《サイレンス》」


 先ほど戦闘した市場から少し離れた、四方から射線が遮られている建物で拠点を構えた。

 遮音魔法をラトナにかけてもらい、また周囲に魔力感知用の罠と、市場にはダミー用魔力発信短剣を置いてきた。

 一日目を終えようとした。


「大人びても、さすがにまだ12歳ですねルディ君は」

「信じて突っ込め!って言われても突っ込めないよねぇ普通、すごいぜぇルディぃ」

「一人で先に抑えろ、って指示に、なんの躊躇いもなく、はい!だったよ」

 年長3名が眠ってしまった自分を出汁に話に花を咲かせるなんて、先に寝落ちしてしまった少年では知る由もない。

 そんな少年、少年らしく寝てしまったルディを見て、年長者は称賛を送った。

「この子は強くなる、俺が保証するよ」


「それでそっちどうだったよぉハイジぃ」

「見たことない部隊だから、別の団の人たちだろうね、連携が凄かった。《茨の抱擁》《■■》を使ってしまった、それくらい強かったね。次は対策されるだろうね、実際、飛炎砲は簡単に対策されたし」

「成績上位者には、初見殺し以外では難しいですね」

「まぁまた、新しい手を考えるよ」



 見張りは2名体制で警戒網を構築し、2名は休憩に当たる。

 ラトナとゴードンが休憩にはいり、代わりに先ほど爆睡したルディが、若干眠気を残しつつ警戒に回った。


「敵…襲いに来ますかね」

「様子見じゃないかな、来ないと思うよ。明日以降、戦況はどうなると思うルディ」

 時折、部隊長は自分を試すように問いかける。


「正確な数は分かりませんが、恐らく10部隊、3分の1が初日で脱落。2日目からは初日ほど戦闘が起こらないと思います」

「なぜ」

「ポイントを稼いだ部隊、稼いでいない部隊で動きが変わるからです。前者は慎重に生存を狙い、後者は追い上げを狙いに行きますが、逃げに徹する相手を狙うのは困難だからです」


 ルディは戦況が見えている。

 いや、読めているだけではない。


「なので、僕らはじっくりと様子を見て、戦闘が起きそうな所へ介入。無理はせず、取れそうな所を取っていく、という動きはどうでしょうかハイジさん」

「いいねルディ、戦況をよく読めているよ」


 まだだ、この子は更に上に行ける。

 素直さと堅実さはルディの取り柄だが、戦場は更に無常で理不尽で流動的だ。


「方針はルディの案で行く、加えて応用と行こうか」

「応用ですか…」

「読むだけに留まらず、動かそう、戦況を」

「?」



 夜が明けた。


 旧市街外苑南東の建物内にて、身軽な4名が話し合いの場を設けていた。

 4名から疲労困憊が垣間見えた。

「くそぉ…初日、何も稼げなかったな」

「東も南にも漁夫の利を狙ったのにね」

「挽回のために、夜襲狙いで夜通し動いたが…」

「…成果なしとは」

「ガウ…」

「「「「はぁ…」」」」


「…ん?」

 窓に向けた。

 目が合った。

 それは10倍では済まない大きさの眼。


「退避!!」

 上空から、破城槌のごとく、破壊の一撃が繰り出された。

「ガウアアアア!」

 巨大な怪獣は吠える。

 遠くにも、同様の遠吠えが耳に入る。


「大型亜竜…なんてもん投入したんだよ教官たち!」

「街の外側に配置…こもりは許さないってワケね…」



 旧市街東部。

「殿下ピリピリしていますねジョーダンさん」

「察してやれエヴァン」

「はい」


 フィリップは高台から街を眺めた。

 外苑に投入された大型亜竜。

 魔力の反応を複数感知、中央部へと集結していく。丘もあり、比較的高さが確保出来る北部では、戦闘を観測。

(野郎は…南西を抑えに行くだろう)


「北に行くぞ、外側の奴らをかたっぱし抑えに行く」

「「「イェス・ユア・ハイネス」」」



「ラトナとゴードンはこのまま中央の南西地区あたりで拠点になりそうな所を見繕って欲しい、戦闘はしなくていいからね」

「あいよぉ」

「分かりました」


「俺は北と西にちょっと行ってくるよ…それでルディは」

「このまま南行かせてください、頑張って誘導します!ゴードンさん頼みがあるのですが、盾を…」


 こんなにも早く頼もしさを身に着けるとは、一夜過ぎれば少年も大人になっていく。


「では、散」



 亜竜とは、竜の下位存在。

 竜と異なる点は、高度な魔力操作はできず、原始的な魔法攻撃のみを扱う。下位存在とはいえど、簡単に対処できるものではない。

 亜竜討伐には平均的なフォーマンセル部隊を4部隊連携による討伐が目安とされている。だからこそ、1部隊による亜竜討伐は一種の実力のある部隊の証でもある。開拓者訓練団に入団または修了する人材は大抵、単部隊による亜竜討伐は可能としている。


 南部外苑。

 一つの部隊が亜竜と対峙している。


「こいつやっても意味ないんじゃなかった?!あまり相手したくないんだけど」

「足止めしたら、さっさと中央目掛けて、点取りに行くぞ」

「了解!」

「《パラライズ・マキシマ》!」

「グウアアア!」

「今の内だ!行く…うん?」


 北側に、身軽の装備の少年が立っている。

 片手には剣持っており、それを旗代わりに振っている。


「おいここらへんに迷い込んだ餓鬼か?」

「いいやそんなワケが…」

「あっあいつ、玉無しんとこの、新人じゃないか?」

「えっってことは…」


 少年は笑顔で、剣を振りながら、叫ぶ。

「竜さーんこっちこっち!《ハウルオブベイン》!」

 少年から、この世の終わりに聞かされるであろう、禍々しい喚き声が発せられた。


「あの餓鬼ぃ…ふざけんな!」

「「「グオオオン!」」」


 周辺に居た亜竜が声の許へ駆けていく。

「逃げろ!」



「ゴードン、ラトナ、戻ってきたよ。あらかた仕込みは終わった」

「おかえりぃハイジィ」

「ルディ君はまだ戻ってきてないよ、大丈夫かな」

「ルディなら大丈夫だよ、それになんか派手にやっているみたいだし、やり過ぎないといいけどね…予定通り省エネで行きつつ、しばらく様子見で行こう」



 2日目から4日目は生存重視に方針を切り替え、戦闘を控えめにやり過ごした。


 そして5日目深夜。

 部隊数も残り10部隊程度。


 モンスターの大量投入や戦術級爆撃により、旧市街の活動範囲も、序盤と比較して、大幅に制限。

 夜闇でも活動が活発なモンスターも徘徊しており、また部隊討伐点を狙い夜襲への警戒も強まっていき、日に日に身体を労わる時間が減っていく。

 各部隊では疲労のピークを迎えている。


「今日と明日の見張り番は一人ずつで交代、ちょっとでも休む時間を増やしたい」

 部隊員へ休息を指示。

 幸い、ハイジ隊は混戦極まる中盤において戦闘を極力さけており、部隊討伐を伸ばすことが出来なかったものの他部隊と比較しても余力が残すことが出来た。

 長期戦に向かない、友人2名にはなるべく負担をかけない戦略だった。

 

(さてと、明日で終わるはず……あの方との戦闘は避けられないだろうな)


 屋上へ向かう階段から、足音。

「僕はここ数日、目立った戦闘していないので少し元気なんです、眠るまで少しだけどお話しいいですか」

「少しだけねルディ」


 ルディは隣に腰を掛け、周囲への警戒を継続したまま、問いかけてくる。

「最終日まで引き延ばさず、明日で終わらすつもりですかハイジさん」

「よくわかったね」

「ハイジさんの仕掛けとか、ペース配分とかから考えました。ハイジさんの指導のおかげですね」


 一の指導で十まで吸収する少年の見えない底力に、恐れさえ抱いてしまう。

「今回の戦闘で最大の難関は、フィリップ王子なんだよね、あの人に勝てないと結局生存は見込めない、粘ったとしても7日目で確実に負ける」

「でも、ハイジさんは最近王子に勝ちませんでしたか」

「あれは、剣と魔法に絞った模擬戦闘だったから、それにあの時は初見殺しみたいなズルだしね。制限なしの戦闘、なんでもありなら、うーん、今でも勝てるかな?個人戦なら一か八か…部隊戦にもなると、余計向こうの方が練度は高いし、勝てないだろうね…」

「…ええと、フィリップ王子を個人戦に持ち込むつもりですか?乗ってきますか?部隊でゴリ押した方が勝利すると思いますし、する理由がないです」

「あの人にはある…多分乗ると思う。だから、まぁ、うん、勝ってみせるよ。ルディが頼りだ、明日は頼むよ」

「はい!」



 北部の神殿屋上、大胆にも焚火をたき、休息の拠点を設けているフィリップ部隊。

 誰も自分たちを襲わない、襲っても返り撃ちにする、という意思表示の炎だ。


「明日で全てを終わらす、いいな」

「「イェス・ユア・ハイネス」」


 フィリップの言葉。

 白と言えば、黒だろうと白にする。

 臣下たちはそうやって主の意図をくみ取り、主に引っ張られ、主を支えてきた。

 その中でも生まれてから隣で、王となる男とともに生き続けた男、ジョーダン・レックス・シルバーメイン、フィリップの右腕と評される男は、言葉の上を更に読み取り、主を最上へと押し上げる。


「フィリップ、やってきてもいいんだぜ」

「ジョーダン…完封なきまでの勝利だ、俺個人の事はどうだっていい」

「はっ何言ってんだ…そいつに借りを返した上での勝利だろ」

「…ははは、いつまでたってもお前には敵わんな」



 6日目。

 旧市街中央部には街一番の広場があった。

 広場を囲うように炎や茨がひしめき合っている。

 まるでこの二人の邪魔をさせないようにするため。


「詫びよう、お前は戦士だ」

「殿下から、そのような評価を頂けるのは、光栄ですね」


 最後の戦場、ここに竜虎相まみえる。


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