ep Radja Naga 1
小竜の過去編が始まります
「地への降臨、および3ヵ月目おめでとうございます、ヴァスキ王」
「ああ」
花や米、果物、その他リバの象徴的な品々を各テーブル、御仁の前へ忙しなく配分する女達。ココナツの蒸留酒を嗜み、雄弁に語り合う老兵達。
純白の伝統衣装を身に纏い、聖なる水がたっぷりと入った瓶を運ぶ巫女の集団が、小さき命を抱える御仁の前へと歩む。
妙齢の巫女は、水瓶とともに、花びらを盆一杯に運ぶ小さき巫女から花びらを貰い受け、花びらを神水瓶の中に浸した。
巫女は祝詞を唱え、花びら滴る雫を、目の前の御仁に抱きかかえられている小さきに命へと振りかけられ、清めた。
巫女は魔力を指先に集約させ、小さき命の額、舌、手先など、様々な部位へ魔力を落とし込み、そして祝詞を授けた。
巫女は小さき命の髪を少し切り分け、その一房を水瓶へと流した。
「ヴァスキ王、名は?」
「…ナーガだ」
王と呼ばれる御仁は小さき命の脇を抱え、その小さな足を大地へと触れさせた。
「お母さま、ヴァスキおじさまはなにをしているの」
「王子の大地降臨の儀式よ」
リバ大陸では、3ヵ月までの幼児は神からの贈り物であり、まだ神に近い存在として扱われる。3ヵ月過ぎて始めて、人界に馴染んだとして、その足を大地に触れさせ、大地に降臨した事を証明する儀式が執り行われる。しかし、始まりの王時代から500年が経った事もあり、一般リバ民ではその伝統は廃り、今では当伝統は王族階級や神職層にのみ引き継がれている。
大地降臨を機に、有力者は後継者のお披露目会を開催していくのが、リバ王族の風習だ。
「ナーガ王子は、貴女の将来の夫よ、レネイ」
「ナーガおーじ…ふむふむ」
「さっ、落とさないでね」
「うん!」
小さき巫女は自分の背丈と変わらない、丸く楕円形で、黒い曇模様を帯びた物を抱えた。
「ヴァスキ王、ならびにナーガ王子、大地降臨おめでとうございます。
本日は、王子の名にふさわしい物を贈らせて頂きます」
「ナーガおーじ、はいコレ!」
「ははは、ありがとうレネイ姫、ナーガも貴女から贈り物を頂いて、大変喜んでいる」
小さき巫女は、黒い曇模様の楕円型の物体を御仁へと渡した。
「これは…ふっ、竜の卵か、巫女にはお見通しという訳だな」
「ふふふ、我が娘もどうか頼みますね、ヴァスキ王」
「ああ」
卵を抱きかかえるナーガ。
卵がふと、ころんと動き、そして曇模様の殻にひびが広がっていく。
「あら」
「わぁ!」
「これは…これも運命か」
黒き幼竜がこの世に舞い降り、ナーガとともに眠りに着く。
そして宴はまだ続く。




