17.1話 準備って大事よね
数ヶ月しか経ってないはずだが、何年もの時が過ぎたかの様に感じた。
それほどここ数ヶ月は濃密な時間を送ってきたと言える。
我が調査開拓団、その名前の通り、只今絶賛開拓者精神溢れる者の需要が高まっており、スカウトの旅に訪れている。
教官への挨拶を済ませ、本訪問の最大のターゲットの所在地へ向かった。何度雑用を押し付けられたか、忘れられない日々。
開き慣れたドアを開く、相変わらず変な音を発するドアだ。
「お久ぶりです、マガリャンイス教授」
「おお生きておったか、ハイジ君や」
◆
調査開拓団の発足にあたって、一番不足しているもの、それは情報だ。
西大陸の情報については、それは禁忌にあたり、一兵士たる者にどうこう出来る代物ではない。
ならば賢人に求めるしかない。
「西へ向かいます、情報をご提供頂けますか」
「ええよう」
あっさりと提供が決まった。
教授は保有している禁忌文献は全面的に無制限で情報開示しようとしたが、流石に機関からストップがかかった。いくら賢人とて行き過ぎた行動は制限の対象となる。
少し時間を要して、何を開示するか、誰に開示するかの話し合いが上で行われた。
教授はつまらなそうに、義務的な会議に参加した。
ありがたい事だ。
◆
「それよりハイジ君や、ほれ、これ持っていきんさい」
「これは…完成したのですね、おめでとうございます」
提示されたのは、煉獄鋼鉄。
一年ほど前から教授が熱心に取り組んでいる、魔鉱材だ。死者の魂を練り込んだ鋼鉄。
魔物の死骸から抽出された魂が自然の鉱材に混ざり合って出来た、自然の煉獄鋼鉄は存在する。それを人工的に精錬する方法を教授はついに完成させた。
高炉に突入される魂を、如何に制御するかが鍵とされている。具体的な技術は、開示が制限されている為、分からないが、現段階では量産はまだまだ困難らしい。
天然の煉獄鋼鉄の特徴として、混ざり合った魔物の特性、魔力、特有魔法が刻まれている事だ。
人工の煉獄鋼鉄では、さらに発展させ、任意の特性を刻む事に長けている。
天然の人工にはそれぞれ一長一短があった。
前者は、その刻まれた能力の質は後者より高い、しかし量産が出来ない。
後者は、量産が可能とし、かつ任意の特性を付与出来る、難点としては天然程の威力を出せない事。
研究が進み、量産技術の開発、または刻印出来る特性の向上は追々と上がるだろう。
「あげるよ」
「いいのですか、こんな貴重な物…」
「それ君の血を媒体にしているから、ええんじゃよ」
「何をしているのですか、教授…」
相変わらず賢人は頭が可笑しい。
◆
「てことで、この禍々しい鋼鉄を使って、武器を作ろう」
「ウヒョ!噂の煉獄鋼鉄ですぞ!これはテンション爆上がりですぞ!制作意欲湧いてキタァ!」
技術屋は、新技術に弱い、これはどの世界にも通用する不変の原理だ。
「うげぇまたコレかぁ…オイラぁ打ちたくねぇよぉハイジぃ…打つたびに何か阿鼻叫喚がして恐ぇよ」
「…それに関しては本当にごめんゴードン」
現場の人間によっては、新技術が歓迎されるかはソレゾレ、これはどの世界にも通用する不変の原理だ。




