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魔力雑魚の俺が英雄になるまで  作者: いずやゆうじ
The Roar of Ice and Dragon
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17.2話 空の陵墓


 朽ち果てる街。


 草木が生い茂る道。


 澄んだ水が川となり、絶え間なく流れる。


 故郷と同じ自然の営みが、この大地ではどこか、別世界のようだ。


 まるで世界には、自分たちしか居ないみたいだ。



 火竜連峰高原、数百の騎馬が大地を駆ける。


「進めえ!進めえ!後少しだ!」


 先頭を走る騎馬から号令が轟く。


 騎馬隊の中部、静かに前方を見つめる、部隊の長。

(やっと…)



「兵長、あちらです、古代リバ文字も確認しました、間違いないです、ですが兵長…」

「良いんだロッキー、ありがとう、皆に休息とってって伝えて」

「…はっ」


 青年は馬から降り、この旅の最大の目的地が眼の前まで迫っていた。


 足が重く感じた。錘が何個もぶら下がっているようだ、何かが眼の前のそれを見るなと、止めようとしていた。


 生物が生きるに適さない、火の竜の住まい。それでも、それは、そこには花は咲いていた。


「花を、供えに来たよ、ナーガ」


 魂が今でも記憶している焼けた肌色の少年。

 友人とともに過ごした、あの輝きし黄金時代が思い起こされる。


 小竜の故郷とされている、土地に咲いていた花束を添えた。


 それには、傷だらけの、今にも朽ち果てそうな剣が聳え立っていた。


 剣を抜いた。



 数百の兵士は、ワジャの東の果てまで戻った。


 そこはもう寂れ朽ち果てる運命の街ではなかった。

 魔力に溢れ、暗闇をも照らす灯し火が煌めいた。


 日は沈んでいるはずが、少なくない民が、兵士の帰還を出迎えてくれていた。

 そこには、白い軍勢に怯える、迫害の民は居なかった。

 そこには、明日を楽しみしている子供たちが居た。


「…ハイジぃ」

「ナーガは居なかった」


 覇王の陵墓は空洞。

 古代のリバの風習では、風葬が大半だ、覇王とて例外ではない。かの村と異なり、大規模な陵墓を築けないがそれでも、そこには亡骸は残されるはずだった。

 しかし、死体は無かった。


 そして氷獄での戦い。

 そこに現れた黒竜たち。


「取り戻すさ、心配しないでよゴードン」

「うん…」


 友人と、この西の果てまでこうして食事を共にする事が出来る。

 ただ、少しだけ、何かが欠けている。


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