17.2話 空の陵墓
朽ち果てる街。
草木が生い茂る道。
澄んだ水が川となり、絶え間なく流れる。
故郷と同じ自然の営みが、この大地ではどこか、別世界のようだ。
まるで世界には、自分たちしか居ないみたいだ。
◆
火竜連峰高原、数百の騎馬が大地を駆ける。
「進めえ!進めえ!後少しだ!」
先頭を走る騎馬から号令が轟く。
騎馬隊の中部、静かに前方を見つめる、部隊の長。
(やっと…)
◆
「兵長、あちらです、古代リバ文字も確認しました、間違いないです、ですが兵長…」
「良いんだロッキー、ありがとう、皆に休息とってって伝えて」
「…はっ」
青年は馬から降り、この旅の最大の目的地が眼の前まで迫っていた。
足が重く感じた。錘が何個もぶら下がっているようだ、何かが眼の前のそれを見るなと、止めようとしていた。
生物が生きるに適さない、火の竜の住まい。それでも、それは、そこには花は咲いていた。
「花を、供えに来たよ、ナーガ」
魂が今でも記憶している焼けた肌色の少年。
友人とともに過ごした、あの輝きし黄金時代が思い起こされる。
小竜の故郷とされている、土地に咲いていた花束を添えた。
それには、傷だらけの、今にも朽ち果てそうな剣が聳え立っていた。
剣を抜いた。
◆
数百の兵士は、ワジャの東の果てまで戻った。
そこはもう寂れ朽ち果てる運命の街ではなかった。
魔力に溢れ、暗闇をも照らす灯し火が煌めいた。
日は沈んでいるはずが、少なくない民が、兵士の帰還を出迎えてくれていた。
そこには、白い軍勢に怯える、迫害の民は居なかった。
そこには、明日を楽しみしている子供たちが居た。
「…ハイジぃ」
「ナーガは居なかった」
覇王の陵墓は空洞。
古代のリバの風習では、風葬が大半だ、覇王とて例外ではない。かの村と異なり、大規模な陵墓を築けないがそれでも、そこには亡骸は残されるはずだった。
しかし、死体は無かった。
そして氷獄での戦い。
そこに現れた黒竜たち。
「取り戻すさ、心配しないでよゴードン」
「うん…」
友人と、この西の果てまでこうして食事を共にする事が出来る。
ただ、少しだけ、何かが欠けている。




