13.1話 黄金の継承者達
天井より光刺す月明かりのみが頼りになる洞窟内にて、妖艶なるシャーマンが立っていた。
シャーマンを囲うように、7つの光の柱が存在感を示している。
3つの光の柱から言葉が発された。
『忌々しい…アレの対処はお主の役目だろう?そのための契約のはずだが』
『十分な支援も行っていマスでしょに、一時とはいえ呪い解放する必要はアルかね』
『困りますねぇ、本当困りますよ。今は黄金を変な事に使いたくない時期なんですよねぇ』
言葉の棘を隠すつもりのない3柱の発言に対して、別の光の柱が対応する。
『…死の軍勢は日々その力を強めておるのだ。急を要する事の為、理解を求める』
『ハハハ、俺は構わないぜ、なんたってこれでおっさんには大きな借りを作れるからな!』
『アタイはアンタら陰険なジジイ共が気に食わないからねぇ、賛成の側に立たせて貰うよ』
『…古代よりの約定だ、われらの大地を守るためならば反対する理由はない。力もかそう、我らの守護者よ、古きからの兄弟よ』
最初に発言した3柱と異なり、肯定的な意見が発せられた。
『三者恩に着る』
「では、竜の権能を使用する許諾をこの場にて採決を執りたいと思っております。賛成のものは黄金の鍵を差し出して下さいまし」
4つの黄金の鍵がシャーマンに集約した。
『ちっ…』
どの光か知る気もないが、不満を隠そうともしない。
やがて7つの黄金がシャーマンにて一つに集約し、黄金の鍵は更なる輝きを放つ。
「賛成多数の旨を承りました。これより竜の権能を発動させて頂きます」
『気分が悪い故、先に失礼させて頂く』
『こっちまで何か被害が来たら承知しないアルヨ?』
『早急に、迅速に、なるべく直ぐに返してくださいね?』
シャーマンの言葉を最後まで聞く気もない3つの柱から、光が消えた。
『相変わらず腹立つ奴らだな、民が哀れだ』
『本当いちいち気に食わないジジイどもだよ、アタシも先に失礼するよ』
『頼んだぞ兄弟』
続けて3柱からも光が消えた。
「では早急にそちらに向かいます」
『…あぁ』
洞窟にはシャーマンのみが残された。
◆
馬車は許される範囲の速度で整備が不十分な道を走る。
いくつかの関所を通過した。 関所の守衛は、誰一人どの関所も馬車を停める事はなかっ
「急ぎなさいカデ、命の灯火を、一つでも多く救うためにも」
「かしこまりました、ラトナ様」
(ハイジ君…)
◆
「Om pàpo’ham pàpakarmàham pàpàtmà pàpasambhavah tràhi màm pundarikàksa sabàhyàbhyàntarah sucih」
一人の老婆が古代リバ語の祝詞を、一人の壮年の男に向けて唱えた。
男を囲うように複数の妖艶なる巫女たちによる舞、複数の男性による楽が披露された。
男は上半身裸で、リバにおける伝統的なスカートを身に纏っている。鍛え抜かれた全身、数え切れない傷跡、壮年の男からは歴戦の風格が放たれている。
男は跪き、頭は垂れ、組んだ手は前方にいる老婆に差し出す。
老婆は祝詞を唱えながら、傍で水一杯の壺を持つ子どもから水をすくい、男にかけた。
老婆は祝詞を唱えながら、傍で花びら一杯載せられた盆を持つ子どもから花びらをすくい、男になげた。
儀式を一通り終えて、男は1,800段を上った。
その果てには、割れ門と城壁で囲まれた寺院が聳え立っている。階段の背後にある景色、そこには、雲でその全貌隠された荘厳なる霊峰と、リバの広大な大地が広がっていた。
男はその幻想的な光景を振り返ることなく、門をくぐり寺院の最奥部まで足を進める。
寺院の最奥部には竜の顎を催した門があり、男をその門へ導くかのように、多数の巫女が跪き道を示した。
「待たせたな、ラトナ。この度はお主に手間を掛けさせた」
「私も到着した所ですわムルジャおじ様、いいえ、ドラガン王」
壮年の男は、リバの守護者の頂点を務めているウェストドラガンの王、ドラガン・ムルジャ・11世である。
「ドラガン王、黄金の鍵はこちらに」
ラトナの付き添う幼い少女カデ、少女は黄金の鍵をドラガン王に差し出す。
「うむ」
ドラガン王は竜の顎まで近づく。
「黄金の継承者であるドラガン・ムルジャの名において、死の門よ開け」
ドラガン王は黄金の鍵を竜の顎に目掛けて唱えた。
竜の顎より、不穏な光が溢れる。
ドラガン王は黄金の鍵をラトナに渡す。
「頼んだぞラトナ、だが無理はするな」
「はいムルジャおじ様……ナーガ様、力をを借りします」




