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魔力雑魚の俺が英雄になるまで  作者: いずやゆうじ
The Roar of Ice and Dragon
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17話 いざ魔大陸ワジャへ


「お前らも偉くなったもんだなぁええ?分隊長たち」

「いやえへへそれほでもありまっせタイチョー」

「これもあれもタイチョーのシゴキのお陰っすわ」


 氷獄の戦いから時間が、数か月と少しが経った。

 西大陸への進出しようにも色々準備が必要だ。


 また近辺整理もしなければならない。


 ハイジ小隊はその技術力を買われ、分割され、分隊として活動。各分隊はウェスト・ドラガン全域の基地に技術指導に当たっていく。

 こうして部下達は晴れて分隊長まで昇進した。

 罪人崩れのあの荒くれ者たちの晴れの日。

 隊長としては祝わざる得ない。


 各分隊長に、ウォタファーとゴードンの特製、魔力直剣を手渡した。


「タイチョー…うっ」

「タイチョーもオラ達を気にせんでください!」

「存分に旅してください!」

「ったくお前らな」


 ハイジ小隊はこうして解散した。


 遠くない未来、部下達から各種相談事が舞い込んできた。

 どうすれば荒くれ者たちを制御出来るか、懇願された。


 今日も飯が美味しい。



 前線奪還作戦以降、白い悪魔の軍勢が一度も現れていないという。特段と珍しい事ではないが、ここ数年では見られない現象だったそうだ。


 使い魔により遠隔で西大陸まで調査にで向かったが、竜の咆哮による甚大な被害が西大陸で見られている。


 リバ大陸では賛否両論となっている。

 より大陸の守りの強化を求むもの。

 大陸への攻勢をより強めたいもの。


 ウェスト・ドラガンは後者だ。

 我がドラガン王の、就任以降悲願としていた、西への帰還。調査開拓団をウェスト・ドラガン主導で結成。


 勿論、開拓団には強く志願した。


 そして各国からも我こそ西大陸へ、という強者も募った。

 白い軍勢が蔓延る魔大陸、自殺とも言える片道切符の遠征。

 志願者は多くはない。


 しかし、だからこそ、自らの意思で進撃する者と、切り拓く者と旅をしたい。


 募った人数は延べ300名程度の一個中隊。


「ハイジ隊長、これがメンバーリストです」

「ありがとうロッキー、えっとどれどれ、アバド皇国の殲滅鬼に、南の黒魔導士、そして王…って噓でしょ?!」

「…上層部も一応全力で拒否をしまた、がしかし止められませんでした」


 来るものは拒まない、を国是とするウェスト・ドラガンであるが、来るものは選抜し拒絶したい、と変更して欲しいくらいの、名前が連なっている。


「…ええ、これなんかあったら国間戦争起きる?責任取らされる?」

「…保証しかねます」


 本当、拒みたい。



 舞台はウェスト・ドラガン首都アムドラ・プラの宮殿広場。

 調査開拓団発足式が執り行われた。


 舞台の上では、ドラガン王自らが宣誓に当たる。


「先の氷獄の戦い、リバ大陸が一同となって初めて勝利を掴みとった」

 300名の志願兵、そしてそれらを見守る群衆。


「これは好機だ、1000年来の西大陸への進出だ、始まりの王の悲願でもあり我らリバの民の故郷」

 本当は500年前に進出しているが、それらは禁忌事項で、一般市民には知られていない。


「我らリバの誇り高き戦士たちを、道を開拓せよ」

 轟く歓声。



「調査開拓団団長を務める、アレックス・ファーガソンだ。形上団長を務めるが、貴君らを率いるのはこの男だ」


 発足式を終え、実務的な集会が開かれる。

 この度の責任者は、北部基地のトップが指名された。かつての王の懐刀として長年支えてきた方だ、これ以上の人選はないだろう。

 そして、現場指揮を務める、実質のトップ、それは…


「兵士長を務める、ハイジです」


 ざわめきが立つ。

 無理もない、この300名の中で若い部類に入る人選だ。

 疑念の声、期待の声の比率は、99.9対0.1くらいの温度差だ。

(…やはり一番大事なのは挨拶か)


 ファーガソン司令に目を向けた。

 司令は目を閉じ、手を前方に向けた。

 好きにせよ、と。


 剣を抜刀。

 刹那の魔力の揺らぎ。

 会場の周囲から十数の剣が舞う。


 そして剣は、疑念の声を向ける群衆へ急襲。


「なっ?!」

「無礼であろう!」


「この中には白い軍勢と対峙したものは、いますか?」


 会場は静まり返る。


「…いない」


 そして剣は舞台まで舞い戻り、剣を全て地に突き刺した。


「白い軍勢…それを率いた白い死神、それを屠ったのは俺だ、文句ある奴は前に出な、相手してやる」


 疑念の声は、やがて消えてゆく。


「無いな…ならば付いてこい、西の果てを見せてやる」


 荒くれ者たちで学んだ事、一番大事なのは挨拶(脅し)だ。



 白い騎士と対峙した位置まで辿り着いた。そこには黒竜の残骸が散らばっていた。

 思い出される竜の咆哮。西の悪魔達のみを焼き尽くした破壊の光。


「ねぇロッキぃ、本当に白い悪魔は居ねーのぉ?」

「ゴードン殿、奪還戦以降一度も確認出来ておりません。私も驚く程に静かです」


 また前線基地の復旧作業も進んでいた。以外にもこの位置まで兵士だけでなく、神官等が複数見られた。

 アンデット系モンスターが発生しないようこんな前線まで弔いに出向くとは、神官の労働環境は中々過酷なものだ。


 そして、幸運にも、霧が晴れており、前方には西の果て魔大陸が相見える。名の通り、大陸からは禍々しい雰囲気が漂う。

 西方向正面には、霊峰アグンにも負けず劣らずの、巨大な連峰が存在感を示し、その頂上から火山による煙が漂う。

 霊峰が神秘的で幻想な存在だとすると、目の前の連峰は圧倒的な力を誇示している。


「ハイジ兵長、準備整っております」

 副官を務めるロッキー班長。

 同じく開拓者訓練団出身、アムドラ・プラ本部から直接派遣された期待の若手だ。


「全員、西の魔大陸へ、進軍せよ!」

「「「おお!!」」」


 300名の兵団が全速前進で西へ、駆けていく。



 西大陸に上陸した。


 周り一面は平にされた地と崩壊した建物があった。

 まるで一面が何か破壊され尽くされたかのように、大量の瓦礫が積みあがっていた。

「一応聞くけど、もしかしてあの竜の咆哮ってここまで届いていたの?」

「…状況証拠だけですが、恐らくそうだと思われます」


 かつては港だと思われる場所だった。

 人一人の気配も感じられない、不気味な場所だった。


「ここを給養所とする!各位、動け!」

 仮設基地として設定。


 司令部にて今後の調査方針について話し合いが行われた。

 現状で北方か南方に調査に向かうか、で意見が分かれている。


「ここは北に進みましょうよ!【パスルバヤ王国】や【黒魔術の孤島マダラ島】の調査に行くべきです!」

「いやいやその二つは遠すぎる!やはり南だ。南なら直ぐ近くに【幻妖薫川】や、生き別れの民がいるとされている【最果ての半島】に行くべきです!」


「せっかく1000年ぶりの西大陸ですよ?!ここで冒険しないといつ出来ますか?!ここは余り情報がない北側に行くべきでしょ?!」

「だからこそだろうが!ここは文献をより詳細に、よし確実に検証する為に、過去の託された思いをしっかり繋ぐためにも南に行くべきだろ!」


「頭固いな!それでも開拓者ですか?!」

「若い奴らって怖いもの知らずだな?!」


「…白熱しているね」

「…すみません、何分志願兵達は、好奇心旺盛な精鋭ばかりでして」

「いや、開拓魂溢れる若者は好きだよ」



 結局南方向に調査を行う方針に決定された。


 第一方針は、生き別れの民、最果ての半島を目指す。

 現地の生き残りを捜索し、中長期での開拓活動の礎を築く為だ。


 数十年振りの西大陸調査という事もあり、過去文献の精査に注力する事にしたそうだ。加えて、こちらの本来の目的である墓参りもとい、ナーガ探索に関しては、禁忌文献によれば南側に進むのが良いとされている。


 言い伝えでは、覇王は西大陸進軍の際に、【幻妖薫川】を進んだとされ、更に南西に進み【バーガー海岸】まで進んだとされる。覇王は南沿いを辿って白い軍勢の本山に戦いを挑んだとされている。


「意外だね、西大陸には整備された道が残っているなんて、西側の文明はもう滅んだと書かれているのに」

「滅んだと断定するのは本来可笑しいんですよ戦士長、歴史文献は推察で書くべきです。意図的な情報統制でしょう」


「ねぇロッキー、禁忌文献とワジャ地図を照らし合わせるとさ、覇王って中部で死んだんでしょ?…めっちゃ遠いんだけど」

「あぁそれはですねまだ研究が進んでいる訳ではないのですが、一説ではラジャは中部古都の戦いで敗れ、火竜連山まで生き延びたとされています。連山にはラジャの墓があるという説ですね」

「それならありがたいね。流石にワジャの中央まで進めるとは思えないし」


 今回の魔大陸遠征に伴って、禁忌文献の開示が求められた。

 各国は出し渋ったが、賢人の名の下に、その知識が提供された。一部の閲覧者の制限を情報開示の条件とされている。


 そこには、確かにナーガの軌跡が紡がれていた。

 誰かが、死も厭わず、その生きざまを後世に残そうとしていた。


 これは名も無き者の戦果だ。


「待っててね、ナーガ…必ず見つける」


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