14話 The Roar of Ice and Dragon
光の剣というより、魔力の剣。術式次第だが、切れ味などは実体の剣にも勝る。
しかし、魔力の剣には一つデメリットがある。
それは耐久性だ。
白い騎士の光剣に対して、無数の短剣で対処していく。近づき過ぎない距離を保つ。
白い騎士の引き寄せる魔法と、恐らくつかみ、吹き飛ばす魔法も残っている。
どちらの魔法を喰らっても、剣の数でけん制し、対応する。
(一発が即死、とにかく当たらない事を意識)
言うが易し。
現時点では一度も被弾は無いが、状況は悪い方向を辿っていく。
白い騎士は初期と比べて攻撃が当たらないと見るや否や、立ち回りに一工夫を加えた。
ハイジに一撃で屠る事を意識しつつも、当たらなければ動きを制限する方向に剣を駆使していった。
現にハイジはじりじりと、白い騎士との距離を縮めさせられた。
「どうした白いの!自慢の剣が当たらなくて残念ですね!」
無数の剣の操作、量が増えた分、相応の魔力消費が必要とされる。
ハイジとしては長時間戦闘を避けたかった。
「俺決めたんだよ、次お前に合う時は絶対お前を切り刻むってね!その白い兜の下を切り裂くって決めたんだよ!」
「……gele aap!」
魔力の躍動。
「《The Ehthertial Pardon》!」
(来た!)
身体が引き寄せられる。
そして、魔力弾を装填。飛炎砲の銃口を白い騎士へ向ける。
「《神の投擲槍》!」
一閃、白い騎士へ襲い掛かる。
「Kut!《Salvator's Gradios 》!」
白い騎士は両手に光の剣を形成。光の弾丸を光剣で切り裂く。
刹那の魔力の揺らぎ。
見えぜる魔力の剣が、白い騎士を切り裂く。
「…was?!」
掌印無し、無詠唱の《羅刹》
「よくも部下たち(馬鹿たち)を切り刻んだな!」
引き寄せの勢いを逃さない。
《羅刹の剣舞》、無数の短剣から、後方に突き刺した剣へ術式対象を変えた。
後方から高速で接近する剣を、白い騎士へ目掛けて飛ばす。
白い騎士は光剣で受け太刀するが、《羅刹》の魔法を浴び、切断力が高まった実剣の耐久性に、光の剣は耐えられるか、いや耐えられない。
「馬鹿が!そこで光剣で受けるのは悪手だよ!」
光剣は無常にも砕け散る。
距離が0に近づき、直接相対しようとした。
「《Salvator's Gradios 》《Maximal》!」
白い騎士の両手に光の大剣が形成される。
白い騎士は大剣を振り抜く。
「光剣を持っているのは、自分だけだと思うなよ!」
懐から、筒状の金属体を取り出し、魔力を込めた。筒状の金属棒の先端、鍔から光が放たれる。 光は拡散することなく、尖形状の光刃を形成する。
光刃を振り抜いた。
光の大剣と光の刃がぶつかる。
光の刃は切る、というより、溶かす、に重きを置く剣だ。
光の大剣はその耐久と威力を発揮する事無く、溶断された。
そして、もう一度光の刃を振り抜き、白い騎士の腕を切り裂く。
「お、おい…ハイジ小隊長が、あの白い死神と渡り合っているぞ」
「タイチョー…」
「うお!一撃入れた!
「腕一本とった!」
「オラ達も続くべ!」
「「「うおお!」」」
◆
「魔力ギリギリだよ全く……さてと腕一本か、上出来だね、完全に倒したとは思わないよ」
片腕の白い騎士は立て膝の状態のまま動かない。
最後方の部隊の位置から、煙弾魔法が空に打ち上げられた。色は黄色だ。
「…黄色ってなんだっけ」
「援軍だぁ…援軍の合図だ!」
「おっしゃ援軍だ!」
後方より全速力で走ってきた、比較的若い兵士が、その身体つきから想像出来ない大きな声で伝令を伝える。
「伝令ええええ!本国と、同盟国マーレオネより援軍到着です!」
「聞いたかお前ら!もう一踏ん張りだ!」
「「「うおおおおおお!」」」
◆
白い騎士は微動だにしないままで居た。
「だそうだ、猿の言葉理解できる知らないけど、アンタ。どうする。撤退してくれるとありがたいんだけどね」
白い騎士は溶断された光の大剣を支えに立ち上がる。完全に立ち上がると、光の剣は光の塵と化した。
「……《Summon》《"D"Ranzam》《Maximal》」
白い騎士の周囲の地面にて巨大な魔法陣が展開された。
氷原にて、複数の魔法陣から巨大な黒竜が現れた。
「ハハハ、これは詰みかな、流石に」
その場で尻餅をつき、胡坐をかく。
白い騎士からは勝ち誇った顔が伺える。
白い騎士は手を挙げ、竜に指示を送るようだ。それに応えるように竜は雄叫びを挙げた。
「…死ね、猿」
今度こそははっきりと聞えた。
「…次も、勝つ」
ハイジは誓った、更に強く誓った。
白い騎士は挙げた手を振り下ろした。
黒竜たちはその口の正面にて魔法陣を展開した。
恐らくブレス攻撃を繰り出す気だろう。
しかし、黒竜の攻撃はこの世に放たれることは叶わなかった。
「GRaaaaaorrrrr!」
一体の黒竜が炎に包まれた。
その場にいる誰もが、今起きた事を理解出来なかった。
振り返ると、背後の山脈の頂点に、荘厳な竜が見える。
目の前にいる黒竜たちと比較出来な程、巨大な竜だ。
『聞け我らの豪咆を!受けるがいい、この悲痛の業火を!』
その悲痛の叫びがこの氷原に響き渡っていた。
(…ナーガ)
そして竜とは別の叫びが伝わってきた。
『…ねがい、、ます、、も、やめ、、、、て』
(…この声)
竜の頭上に、光が集約した。
竜は光を飲み込んだ。
『《終焉》』
竜はそう叫び、山頂からその咆哮が、この世の全てを破壊する光が、黒竜に向かって放たれた。
西果ての白き軍勢全てを、飲み込むように放たれた。
◆
「…はぁはぁはぁ、ウッ、カデ…これをドラガン王へ」
「…は、はい」
カデは涙を堪えながら、黄金の鍵を受け取り、ドラガン王に託す。
「「《ハイネスト・サイレンス》」」
「「《ハートビート》《マキシマ》」」
「「《フィーネ・エクスプラヴァ・ビート》」」
「「《ハートビート》《マキシマ》」」
複数の巫女がラトナに向けてスキルを使用する。
「閉じろ、死の門よ」
ドラガン王が唱えたのち、禍々しい光が消え、寺院の中は灯篭の明かりのみとなっている。
そして手中にある黄金の鍵は塵も残さずに砕けた。
「大儀であった、嘆きの巫女よ」
「…いいえ、心遣い痛み入ります、ドラガン・ムルジャ・11世」
そう言い残しラトナの意識は遠のいた。倒れ行くラトナをドラガン王は受け止めた。
「あの小娘が…立派になったものだな、お前たちも良く仕えた、これからもラトナを支えてくれ」
「「「ハッ!」」」
ドラガン王はラトナを従者に託し、寺院を後にした。




