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魔力雑魚の俺が英雄になるまで  作者: いずやゆうじ
The Roar of Ice and Dragon
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13話 奪還作戦


 北部防衛統括拠点、作戦室。


「馬鹿な、前線が壊滅する事態なんて、聞いたことない」

「この目で確かに確認しています早急に救出部隊を編成して向かいましょう」

「お前が一人で戦場に恐れて、ノコノコと逃げてきただけじゃないのか?ええ?」


 事態を重く捉えない第1部隊に苛立ちを隠せず、強くテーブルを叩いてしまった。

「時間がないんです!今も仲間たちが戦っています!急げば半日で着きます!一人でも多く命を救えます!」


「落ち着きなさい、ハイジ君」

「ファーガソン司令…」

「入れ」


 作戦室にウォタファーと、使い魔の情報伝達を映し出す筐体を運ぶ兵士。


「まずは確認じゃろ」

「…はい」


 そして筐体から映し出される光景に、作戦室が静まり返る。

 壊滅状態の中継基地、氷の上に築かれた数百の屍。そして、前線は黒氷壁まで後退を余儀なくされている。


「早馬を出せ、ワシが王に直接訴える」

「はっ」


 映像から目を離せずに居た。



「ハイジ殿…調整を終えたでござる」

「悪いねウォタファー君」

「ハイジ殿…その、ゴードン殿は」

「大丈夫だ、必ず助けて見せる」

「頼んだでござるよ」


 ウォタファーから金属のケース一つ、筒状の金属体を受け取る。


「白騎士…必ず」



 馬車は海沿いに沿って西方向に走っていく。

 昨日と異なる速度で走っていく。


 西に近づくに連れて、塩作りや漁業に取り組む人たちはもう見当たらない。

 代わりに浜辺には瓦礫の山や墓標などが確認できる。


 太陽は西へと沈んでいき、空もどんよりと黒く移り行く。

 西果てとの距離に反比例して瓦礫の量や墓標の数は増え、この先さらに増えると確信したしまった。西果てに近づくに連れて、凍てつく空気が肌を刺し、吹雪が吹き荒れ始めた。


 道中及び、トーヤ・プラにて、第2部隊と合流。兵士たちは疲労困憊が見え隠れる。


 当然だ。

 第3部隊と交代するまでは、戦場にて任務に当たっていた。数日もたたずに戦場へ引き戻される。強行行軍に、これから待つ戦場で待つもの、兵士たちは何を思うだろうか。


 そしてトーヤ・プラの広場にて全部隊が集結。


「全員謹聴!前線基地は崩壊した!前線は黒氷壁まで後退した、南部は辛うじて耐えている!」

 地理的に首都アムドラ・プラから戦力が補充し易い事から、南部は前線を何とか持ちこたえている。


「しかし北部は崩壊寸前だ!そこで我らがいち早く駆け付く事で、戦力を補完していく!」

 対して、北部前線は崩壊一方手前だ。幸い、早急な情報伝達と部隊再編と投入により、その均衡を崩さずに行ける算段だ。


「我らは黒氷壁まで前進する!白蝙蝠どもに我らの力を思い知らされようじゃないか!」

「「「おおお!」」」

「奪還作戦を開始!」

「「「うおお!」」」



 目下に黒氷壁、壁の向こうから爆音と悲鳴が響き渡る。生き残った第3部隊を合流し、前線の兵士と戦力を交代。


「ハイジぃ!」

「ゴードン!無事でよかった…」

「怖かったぜぇハイジぃ…」

「とにかく、従軍非戦闘員はトーヤ・プラまで後退して!ゴードン、ほかの人達も頼めるね?」

「分かったぜぇハイジぃ!」


 友人の無事を確認出来た。あとは、前線に未だ戦っている部下達だ。

 西風が勢いを増していく。極寒が疲労困憊の身体を蝕んでいく。


(無事でいてくれよ…お前ら)



 首都アムドラ・プラ、そして宮殿。リバの伝統的な建築美が随所に見られる。

 宮殿の門や壁には、精巧な彫刻が施されており、リバ神話や伝説が描かれ、特に黄金に輝く門は圧巻、荘厳な雰囲気を漂わせている。

 建物の屋根にはヤシの葉を使った伝統的な手法が用いられ、歴史的価値の高い造りとなっている

また庭園には、色鮮やかなリバ古来の植物や蓮の花が咲き誇っている。


 中部の人間からすれば、宮殿というには些か華が足りない、と評価するだろう。しかしここはウェスト・ドラガン、質実剛健を国是とする地だ。


「如何なさるか、陛下」

「…そうか、ついに出てきたか」


 荘厳たる王室で鎮座するのはウェスト・ドラガンが王、ドラガン・ムルジャ・11世。


「アレックス、お主は指揮に入れ、何としてでも持ち堪えてみせろ」

「はっ仰せのままに」


 長年支えてくれた老齢の戦士、その年になっても戦いから離れられずにいた。

 それでも王は指示をする。何よりもこの地を守るために。


「洞窟の封を開けよ」

「「「はっ!」」」


 王は歩みを止めない。そして手には黄金の鍵。



 黒氷壁の門をくぐり、全速で前線に向かう。


「タンク陣構え!他!裏に回避!」

「「「「「「《ペーシェンス》」」」」」」」

 前衛の盾持ち兵士の熟練な連携と防御スキルにより、白い悪魔の猛撃を防ぎ、仲間を守り抜いた。

「耐えろ耐えろ!」

 あの荒くれ者たちがここまで戦えるまでに至った、その事実だけで、この地に来て良かったと確信した。


 刹那の魔力の揺らぎ。

 光の弾丸を装填し、銃口を目の前の白い悪魔に照準。

「《神の投擲槍(ブラフマン)》」


 一閃、悪魔を仕留める。


「この光…」

「「「タイチョー!」」」

「お前ら良く生き残った!」

「…オラ、てっきりタイチョー死んだかと…ヒクッ」

「勝手に殺すな!それより後退だ!援軍が来た」

「「「おっしゃ!」」」

「やっと休める…」



 第1部隊と第2部隊と交代し、第3部隊は黒氷壁まで後退。

 半日ぶっ通しで戦い抜け、従軍鍛冶師による武器の消耗の簡易処置を施して貰っており、束の間の給養に当たる。


 司令部にて状況報告。


「第1部隊と第2部隊を再編して、どうにか前線に合流しました」

「無事であったかハイジ小隊長…いや助かった、これで何とか持ち堪えられる」

「ええ、トラオレ部隊長のお陰です…えっと、トラオレ部隊長は」

「トラオレ部隊長は…ハイジ小隊長の敗北後、殿部隊を結成して、後退の時間を稼いでおられた」

「…」


(トラオレ部隊長がクリスタルを持てば…いや、今考えても仕方がない)


「それと、白い騎士はどうなりました?」

「ハイジ小隊長と戦闘後、姿を見せていません」

「そうですか」


(…ナーガ)


 司令部に、全身傷だらけの兵士が駆けてきた。

「司令部に、司令部に伝令!…奴が、奴が現れました!前線部隊八割壊滅!即時防御態勢及び撤

退を提言します!」

 悪夢再び、この場に白き死神が表れた、司令部から絶望が広がった。


「新種の悪魔も数体確認!」

 追い打ちを駆ける、情報が下りてくる。


「あああああここで死ぬんだあああ!」

「馬鹿野郎!弱音吐くんじゃね!」

「どうする、すぐ行かないとこっちまで押し込まれたら… 」

「行ってどうする?!100人の兵士の八割を壊滅させた化け物たちだぞ?!」

 補給に集まる後方部隊で動揺が広がる。


 暗闇に一筋の光が舞い降りる。

 再び司令部に兵士が入っていく。

「で、伝令!今しがた本国本部より『増援来る、耐え忍べ』と指示!直ちに先鋒部隊は後退せよ!敵主力に対し、防御陣形を構築!前線維持に注力!以上!」


「「「ハッ!」」」



「うわあああああああ」

「たすけてくれええええ」


 前方からは悲鳴が止むことなく、響き続けている。

 部下たちを休ませ、自分だけでも前線に戻った。


「ああああ足があああああ」

「Het zijn tenslotte een stel apen…en dit is de strijd niet eens waard… 」

 白い騎士の斬撃により築かれた屍の数。

 白い騎士の目の前にもまた、一つ、屍を築かれようとした。


「……je zou trots moeten zijn 、Dit is een goddelijk oordeel 」

「た、たすけてぇ… 」

「kut jou aap … 《Saltare Gladiator 》」

 その場を歩く事すら困難な状態の兵士対し、無情にも、地面を抉りながら光剣の斬撃は容赦なく襲い掛かる


 刹那の魔力の揺らぎ。

「《羅刹(ラクシャ)》」


 光剣を魔力の剣で打ち消す。


「…gele aap 」

「半日ぶりだね、借りを返しに来たよ」


「《Saltare Gladiator 》《Maximal 》!」

 多数の光剣が空に顕現した。


「一緒だと思うなよ…《羅刹(ラクシャ・)の剣舞(ナティヤ・サストラ)》」

 背負った荷物から無数の短剣が飛び出していく。


 光の剣と、無数の鉄剣が相見える。


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