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8.1話 進路って迷うよね


 開拓者訓練団「ソフェルディ開拓団」は各国や著名人、ギルドなど多方面からの寄付、融資、支援によって運営されている。自費で開拓者訓練団に入団しいく団員も一部いるが、多くの団員は無償で訓練を受けられる。


 そのため、団員は訓練終了後の進路に関しては一部の制限が掛かっている。

 大抵はスポンサーが手を上げ団員を確保していく。優秀人材の取り合いになった場合は、融資額を基準に優先権が与えられる。


 訓練期間に掛かった費用の返還などに応じれば自由な道に進むことが可能だ。勿論分割払いにも対応している。

 多くは各国のエリート待遇で迎えられる為、自由な道を進むものは少数となっている。


 これだけの高待遇を受けられるのは、ソフェルディ開拓団が何よりも優秀な人材を輩出してきた名門であるからだ。 ソフェルディ開拓団出身が名高い冒険者になったり、ある国の大戦力になったり、数えきれない人材を輩出してきた。


 優秀な修了者はどこも欲しており、修了式の1、2年前から争奪戦が始まる。


 自分?

 自分はというと、恥ずかしながら修了式ギリギリまで決まっていなかった。

 なにせ昨年までは成績がパッとしない玉無し野郎だったからだ。マガリャインス教授や、技術部のツテなどもあるが、あくまでも戦闘職に拘っていた。

 最悪冒険者などに成ろうと思っていた。



 教官室に呼び出された。

 恐らく終了後の進路だろう。


 応接室に案内された。


「ハイジ団員、君に届いたオファーだ。昨年はまったくオファーがなく、マガリャインス教授のツテのみの時と比べれば、君はなんて躍進したんだ、感動だよ……優先権の事情もあるが、渡したのはどれもお得意様ばかりだ、好きに選びたまえ」

「はぁそうですか……では見させてください」


 そこには十数枚の求人票代わりの手紙が提示されていた。

 アバド皇国の武官に限らず技術士官や文官まで、大手冒険者ギルド、複数の技術研究機関から、戦闘職から技術職、文官などのオファー受けた。


「いやぁ私としては君の技術力と戦闘力を両方活かせるアバド皇国の総合官職がベストと思うがね、待遇は一番良い。もしくは君の出身地である日出國のオファーが適切だと考えている。そうだ、教授から何としてでも入れろって言われているが無視しても良い、どうしてもと言うなら受けてもいい、そうなると私が優先権を持つ方々に頭を下げなければならいがね」


 最後の一枚。

 そこには、あの人の名前が記されている。

 忘れもしないあの日の背中。


「ああ、それかい……それはね、うーんそうだね、しかし、あまり推薦したくはないね」

「なぜです」

「多額のスポンサーの一つであり、優先権を持っているが、それを使わずに率先して成績下位のもの引き取ってくれる有難い所ではあるがね……優秀人材を送るのは少し躊躇うのだよ、君もそこがどういう所か分かるだろ?」

「…まぁ一般知識程度には知っています」

「しかしなぜ今回ばかり成績上位者を指名したのか、こんなの初めてだよ」

「…」


 その紙には、軍人、という職が記されている。



 ここ数年よく出入りする研究棟。

 修了式前ということもあり、人の出入りが極端に少ない。


 ドアを開く。

 いつもに増して、紙があちらこちらに広げ、放置されている。


「片付けはした方が良いですよ教授」

「おぉハイジ君かい…今日はどうしたのじゃ」


 手元の紙を顔の横まで上げてみせた。


「今日はご挨拶に、そして進路のことです」

「そうかいそうかい、ゆくのかい、あちらに」

「当初から教授にはお声掛けを頂いたので、まずは筋を通そうかと」

「気にせんでええ、そうじゃ、誰じゃったかお主の若いのからの、挨拶いうて贈り物の茶を貰ったのじゃ、淹れようか」

「ルディですか、律儀ですね」


 教授は慣れた手順で魔法を使いこなしてみせた。たちまち、水瓶がコトコトと揺れ蒸気を発し、茶器各類は空を舞い、茶葉はまるで木枯しの様に踊る。

 魔法は奇跡の力。この一連の工程を、何度見ても、美しく、まるで物語の世界に引き込まれる感覚に引きずり込まれる。


「西へゆくのか……覚悟は、聞くまでもないのぉ」

「はい」



 ハイジ隊室、数カ月後に正式にルディ隊室に譲渡される。

 下級訓練生を新規隊員に加入させるに留まらず、新隊長に抜擢するのは、今思えばあの少年に大変な負荷をかけたのと、反省。


 教授の魔法を見様見真似で再現。

 出来上がったものを味見するが、渋い。

 水の温度管理と、抽出時間管理が肝だな、次回に向けて改善の余地あり。


「ゴードンはそのまま親父さんのギルドに入るんだね、中々会えなくなるね」

「ハイジぃ…寂しいぜぇ」

「泣くなよ」

 お互いの進路が決定した。

 それはつまり、離れ離れになる、当たり前のことだが、どこか、また明日も一緒に訓練する、この隊室で談笑している、当たり前に思っていたものが、当たり前でなくなる。


「だってよぉ…ラトナぁとハイジぃは会おうと思えば会える距離じゃねぇか、オイラぁだけよぉ……」

「寂しいねゴードン君……中央に行く事あれば必ず会いに行くね」

「コーキなオカタにそうそう会えねぇよぉオイラぁじゃ、うおおおお」

 落ち着くどころか、ますます号泣してしまう小さき友人。

 そんな友人を見て、ラトナは目を合わせて苦笑いしてしまった。


「それでナーガはどうするの」


 この1年、自分の特定席として、高級座布団の上で君臨している小竜。

 今日も今日とて、揚げバナナを貪る。


「情報を集まりやすいここを離れるのは惜しいが……ふむ」

 小竜は、揚げバナナをつまむ手を止め、一考。

「やっぱり私と行くのが良いのでしょうかナーガ様」

「レネイさんの出身でもあるしね」


「小僧に付いて行くとしよう、小僧の行き先に興が湧いた」

「えっ、俺?」

「俺様の魂が西へ進めと言っている」

「不穏だなぁ……」


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