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0.1話 きっかけは何でも良いんですよ


なんでぃなんでぃ。なんでぃオイラぁだけこんな窮屈な所に行かにゃなんねーんだ。

兄ちゃん達は直ぐ工房入ってよぉ、修行してるじゃんか。父ちゃ……親方は何考えてんだったく。


オイラぁも、10の歳になったら、炎の前で槌を振るってよぉ、親方や兄貴達みてーに、スゲェもん作りてーんだよ。

なんだよぉこいつらもあいつらと来たら、どいつもこいつも腕ほせーし、本当に飯食ってんのか?肉食え肉をよ…周りに亜人っぽいやつは居なさそうだしぃ、オイラぁやっていけるかぁこれ。


なんでぃ、オイラぁが寺子屋みてーな所でベンキョーしねーと行けねーんだ。



初めての駄々だと思います。


成人すれば、自分が受け継ぐべきものの偉大さをよく知っています。

お姉様やお母様、おば様に、お婆様。

皆さまをしっかり見てきました。


 そうあるべきと、教えられましたし、私もそうしたいと心から思っています。


 だから来るべき時が来るまで、それまではせめて、自由を、少女らしく居たい。おじ様に頼んで、駄々をこねてみました。



 親戚の制止を振り切って、島を飛び出した。何のツテも無かったが、一つだけ道はあった。


 開拓者訓練団への参加だ。


 試験に合格さえすれば、費用諸々は掛からず、一部給金も出る。修了者には各国が引き取り手になるほど高待遇が待っている。

 また、過去の有名な冒険者や英雄だって、この訓練団で学んできた事例もある。島では、武人たる心技体を幼少期から叩き込まれたし、亡き親父の元で多少の技術も見て盗んできた。持ち前のポテンシャルを活かして試験に挑んだ。


 学科、技術、魔力操作、戦闘、それぞれで悪くない手応えを残した。しかし、潜在的能力検査、まさかの魔力量が絶望的な少なさを叩き出した。

 幸いにして入団は認められた。魔力量は成長と訓練により伸びる可能性に期待しつつ、かつ魔力量以外で合格点以上の結果を出した為、訓練団としては不合格の印を押すのも躊躇った。

 開拓者訓練団は優秀な人材を追い払う程余裕ある訳ではない。本人の希望を考慮するが、いずれ戦闘以外の道へ行かせる、とい思惑を感じ取れた。


 この機会を逃す訳には行かない。中に入れば、後は自分のやりよう次第だ。


 日出国の民は魔力量が極端に少ない種族である。その代わり、五感や魔力操作など、優れた適正を持つ。

 魔力量に依存しない武人を多く排出し、またその天与の適正で数々の匠を世に放ってきた。

 他国を侵略する程の戦力は保たない。しかし、自国を守る力を保有する。

 他国との関係性を維持する提供品も創造し続けていく。

 それが日出国だ。


 しかし、自分が憧れたのは、武人ではない。

 あの日、あの禍々しき翼を薙ぎ払ってきた、あの人の背中を追いたいのだ。



 下級訓練初期過程は、基礎戦闘や基礎魔術、基礎技術、基礎実務などの基礎訓練を中心としたものが行われた。

 戦闘職、技術職、文官コース問わず、一定の基礎を身に着けさせられる。下級訓練中期過程以降で、本人の希望と適正に合わせて専門訓練を受けていく。


 初期訓練は特に問題は生じなかった。


 しかし、中期以降で実践的な訓練が増えるにつれて、徐々に魔力量の少なさが足を引っ張り、思うような評価を得られるずにいた。


 特に魔術訓練では、魔力操作や術式理解などで一定の評価を得ているも、実践で必要な魔法習得に困難を極めた。


 結局、魔力量を少なからずカバー出来る、戦士職でありかつ剣士の道に進んだ。純粋な剣の技術では負けないと思っている。

 だが、世の中は甘くはなかった。


 肉体強化魔法を前提とした基礎戦闘が確立されている事もあり、自分の魔力量の少なさでは持続戦闘の適正に難を示してしまった。


 訓練団は落第生を養うほど余裕はないし、甘くはなかった。



 変なヤツがいた。


 座学とか、技術の腕はあるのに、戦闘がからっきし駄目なヤツだ。なのに戦士を目指していると来てやがる。


 戦闘が駄目なのは言い過ぎだぁ。剣の腕とか普通に良いし、魔術とかもなんか分かんねーけど凄い。

けど、魔力が全くねーらしい。

 ドワーフのオイラぁよりも少ない。そりゃ戦闘には向かねーよ。


 なのにこいつは頑張る、一人黙々と寝る間惜しんで、コソコソとなんかやってらぁ。


 ほんで、最近なんか色んな所に顔を出しては、色んなヤツを助けているってらしい。


 そんなヤツを見て、自分も最近注意された事を思い出した。学科をなんとかしねーと、落第しちまう。

 こいつに頼んでみるか、頭イイらしいしな。

 ちょうど庭でぶっ倒れている。


「なー、オメェだよぉオメェ、なんでそんな頑張ってんのぉ?」

「はぁはぁ……優秀じゃないからさ……ちょっとでも良くはなりたいでしょ……はぁはぁ、それで君は?」

「あぁ~オイラぁゴードンはゴードンって言うんだぁよろしくなぁ」

「ゴードンね、俺はハイジ…はぁはぁ、ちょっと待ってね、魔力、欠乏…」


 ぶっ倒れやがった。



 折角お里を離れましたし、ここでは一般の少女らしく振る舞ってみたいと思います。

 なのに、周りはほっといてくれません。


「ラトナ様いけません、野蛮で暑苦しい輩と接しては行けませんよ」

「そうですよラトナ様、こちらの清き正しい僧侶の皆様と学びましょう」


 身の安全を考慮して、歳の近い里の者も帯同しました。

 贅沢は言いません。

 むしろ、あの里から離れる事自体が奇跡な事です。

 監視役くらいは覚悟しています。


 しかし、やはりもっと自由に過ごしてみたいです。


 剣を振ってみたいですし、変な機械をポチポチと操作してみたいですし、壮大な魔法とかも学んでみたいです。


「カデ、サリ、折角お里の外に出ましたし、もう少し自由にさせて下さいまし…」

「行けません行けません」

「そうですよ、ラトナ様」


 つまりませんわ。


 それに比べて、最近話題になっているあの御方。鎖国しており実質国外と断絶関係にある、武人の島出身の少年。

 噂通り、武人達は魔力量が少なく、彼もまたその問題に直面している。なんとか逆境に抗おうと、あれこれと奔走しているとか。


 自分と少しだけ似た境遇、封鎖的な出身、それでもなお世界に飛び出した彼に少しだけ興味を湧いてしまった。


 あらちょうど裏庭で、倒れておりますね。

 話を掛けられているようですね、えっとドワーフの少年ですか、この訓練団では亜人の珍しい部類で、なんだか似た境遇の3名が集まっているようで、可笑しく感じます。


 あらら、日出の彼は、気を失ってしまいました。

 面白そうですし、回復させますか。



 本当何がどうなっているか、自分でもわからない。


 魔力量の増加には、魔力の行使による魔力貯臓器への刺激、つまり魔法を使えば使うほど魔力は増える、という理論がある。理論に基づき、裏庭で近接戦闘に必要な《強化活性》を訓練した所、ドワーフのゴードンに話しかけられた。

 思ったよりも魔力の消費が激しく、久方ぶりに魔力欠乏症で倒れてしまった。


 目を覚ました時には、何故か僧侶の、それはそれは綺麗な、噂では王族では?と言われているラトナ嬢の膝の上だ。

 どうやら回復してくれたらしい。

 それはそうと、従者?な女性から凄く睨まれているけど、俺は悪くない。


「えっと、ラトナさん?回復ありがとう」

「いえいえフフフ」

 何か楽しそうだね、お嬢様。


「ゴードンだっけ、なんか用だった?」

「ハイジぃ、オイラぁにベンキョー教えてくんねぇ?」

「お勉強会ですか!それは良いですね」

 本当、何の話、君たち?



 それからと言うものの、ゴードンに座学を教えては、お返しにゴードンに装備の作成や手入れをやって貰っている。

 どうせならゴードンと訓練もし、また最近始めた雑用関連も手伝って貰っている。


 何故かそこにラトナも参加してきた、押しかけ女房ならぬ、押しかけお嬢様だ。訓練の回復して貰っているし、術式の練習にも付き合ってくれる。また事務作業などもラトナは率先してやってくれる。

 従者にはスンゴイ厳しい目を向けられているが、時間が過ぎるに連れてどうにか許して貰っているようだ。

 勿論無茶な事したら落雷が来るが…


 上級訓練過程になり、部隊結成する際には二人と組むことにした。そもそも自分とは組んでくれそうな人はこの二人ぐらいだし、二人も特には断らなかった。

 戦闘訓練では自分が足を引っ張ていることに負い目はあるが、戦闘以外で二人の評価が上がるように、雑用だろうが何だろうが、受けに受けて、点数を稼いで来た。


 と、気付いたら、二人と過ごす時間が多くなり、二人のために動こうとする自分も居た。

 まさかあの気絶がきっかけで、この2名と長い付き合いになるとは思いもしなかった。


 友人というは、何がきっかけで出来るか、分からないものだ。


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