第8話 初登校 〜午後編〜
授業もするする終わり、あっという間に昼食の時間となった。みんな各自でまとまって弁当を広げる。
英春「うーん、慣れんな…。弁当は。」
和城「本当にな。元いた学校は給食だったし。」
素朗「私も給食食べてみたいよ。」
英春「…あんまり良いもんじゃない。」
和城「うん、貧相なものしか出ないしね…。」
優来「え〜?なら弁当でいいかも…。」
朝早くに焦って作ったので、かなり雑になってしまった。早起きして弁当を作る大変さを、身にしみて理解した。
運動会だの特別授業だので弁当を作ってくれていたじいちゃんには感謝しかない。
そして、その弁当を作っている時に発覚したことがある。
望美、料理がうまい。あいつが作れる側だったのは知っていたが、ここまでとは…。趣味が料理と公言するだけはある。
幾斗「よおHIDEHARU、KAZUKI!弁当見せてKURE!」
英春「他人の弁当見てる暇があるなら自分の食えよ。」
幾斗「今日弁当をWASURETA。だからみんなから一品ずつ食材をもらってる。」
素朗「またやってるよ幾斗のやつ…。この前それがバレて先生に叱られたばっかなのに…。」
優来「醜いでござる。」
和城「たくあんならあげるよ。」
幾斗「え、ああ、もういいたくあんは…。」
英春「…あー…。」
幾斗「なんでみんなたくあんばっかりオレにWATASUNDA!」
英春「たくあんうまいんだけどな…。ま、それはそうと幾斗。もらえるだけありがたいと思ったほうがいいぞ。」
優来「そうそう!感謝してよね!」
幾斗「お前は何もKURENAKATTAだろ!」
優来「いや、弁当忘れてきた幾斗が悪い。」
素朗「そうそう。私たちに恵んでやる義務はないよね。」
幾斗「ぬおおおおおおん!」
今は昼休み。いつもより長い休み時間だ。俺と七夜以外は運動場へ遊びに行っている。
俺は本を読んでいたかったから断ったのだが、七夜は、誰からも話しかけられず、ただ、外を見ている。
…話しかけないほうが良いのか…。
似た者同士、気が合うかもしれないという淡い期待はあるものの、初対面の、それもすでに自分以外のクラスメイトと話している人間と、心置きなく会話、なんて、無理な話だ。
実際、これだけ他人と話している俺でもちょっときつい。
…そういえば、次の授業は体育か…。運動苦手なんだよなあ…。
教科書の準備をしようと立ち上がった時、七夜も立ち上がり、教室を出てどこかへ走り去っていった。
少しすると、入れ替わりで幸伶が教室に入ってきた。
幸伶「あれ、英春くん、さっき七夜さんが走ってどっか行ってたけど、なんかあった?」
英春「いや、なにも。」
幸伶「ふ~ん。…七夜さんってさ、英春くんのタイプだったりするの?」
英春「…そもそも恋愛に興味ない。」
幸伶「え~意外。」
英春「…そこまで意外か…?小4だぞ。興味ないのが普通だろ。」
幸伶「いやいや、好きな子のタイプの話とは関係ないでしょ!まあ僕は好きなこのタイプあるけどね。」
英春「聞いてねえよ。」
…あんまり秘密をこいつに教えるべきではないな…。
なんとなくだが、どこでこのことを口にするかわからん。俺はこいつのことを信用していない。
下手に教えて周りに言いふらされたら、俺の立場も、はたまた七夜の立場もなくなりそうな気がする。
変な噂は、立たないに越したことはない。
すると、学校中にチャイムの音が鳴り響いた。予鈴だ。5時間目の授業もすぐはじまる。
えーっと、体育は運動場でやるんだな。
幸伶「ヒデ春く~ん、早く行こ~!」
英春「あ、ああ。」
なんでこいつは外で遊んでたのに戻ってきてるんだ…。
…七夜のことが気がかりではあるが、まずは距離を置いておこう。過干渉は逆効果なのでね。
俺と幸伶は、すぐさま体育の準備をして、運動場に向かった。
英春「……。」
体力測定中、足をひねって走れなくなり、絶賛見学中である。
運動苦手→運動しない→体が弱まる。そりゃすぐケガするか。
かといって、自主的な運動なんて絶対にしたくないので、これからも今日みたいなことは起こりそうだ。
英春「…なんでお前がいる。」
素朗「いや~、砲丸投げで腕やっちゃって。」
英春「…俺も砲丸投げやったら腕が死ぬ自信がある。」
素朗「ほんと、なんで運動なんてやってるんだろ。記録とかいうけど、できない奴はできないって相場が決まってるのに…。」
英春「わかる…。」
素朗と話していると、向こうからボールが飛んできた。
英春「どぅええええええええ!!!!」
そして、きれいに俺の顔面に直撃した。あまりの衝撃に、一瞬頭が吹っ飛んだ感覚がした。
でもって、体が動かないので俺はその場に倒れた。
素朗「ヒ、ヒデエエエエエエエエ!!」
優来「あ、ごめん。」
英春「ごめんで済むかああああああああ!」
優来「別にケガしてないんだからいいじゃんか。」
英春「よくねえよ!こっちは痛いんだからグアアアアアア!!!」
素朗「なにしてんの…。」
無意識に立ち上がってしまったがために、ひねった足がひどく痛んだ。
直我「コラーーーー!!優来!なに見学の人にちょっかい出してんだ!早く戻って来い!」
優来「は~い。」
…よくよく考えたら、あいつの球、なんでここまで届いてるんだ…?
砲丸投げの場所から結構距離があるのに…。
…にしても痛い…。
素朗「…顔腫れてるよ。保健室に行ってきたら?」
英春「あ、ああ、そうするよ…。…グアアアアアア!足がああああああ!」
素朗「だめだこりゃ…。」
幸伶「はい。冷やすやつ持ってきたよ。」
英春「なんでここにいるんだよ。男子はまだ50m走があるだろ。」
幸伶「なぜか、理由を知りたい?」
素朗「まあ、そりゃ知りたいっちゃ知りたい。」
幸伶「…優来の投げたボールが僕の肩に直撃して、腕が上がらなくなった。」
素朗「え、また優来…?」
英春「…あいつ本当に人間か…?」
優来「呼んだ?」
英春「うわッまた来た生物兵器!」
優来「え、なんでそんな呼ばれ方してんの…?」
直我「優来いいいい!何度言えばわかるんだ!!戻ってこい!!」
5時間目は、終始矢張先生の怒号が響いた。
…先生も大変なんだな…。




