第78話 白々しく湯気を見よ
12月28日。あと数日で2020年も終わる。特に年末感も無かったのだが、祖父と弟宛に年賀状を書いて送ったら、一気にそんな気がしてきた。最近は雪も降る量が少なくなったので、幸伶に雪かきをさせておけば済むようになった。
そして、今日は冬休みの宿題を全部片付ける日と決めていた。そして、あとは社会科だけで全部が終わる。
英春「うーん、何か難しくしてあるなあ…。まあ、俺にとっちゃあ簡単だがな。」
そう言い、俺はスラスラと問題を解いていった。
英春「終わったー。…ああ、この学力を算数でも発揮できたらもっといいんだが…。」
悲しきかな、どれだけやっても算数が得意にならない、天性の算数不得意人間は、飲み物が欲しくなってきたので、下に降りる。
そのまま、俺は台所に向かったのだが…。
英春「か、和城!?おい!和城!どうした!!」
俺が廊下を歩いていると、何と倒れている和城を発見した。見たところ、死んではいないようだが、気絶していた。
英春「…こんなところに放置するわけにもいかないよなあ…。」
俺は、和城を居間まで引きずり、そのままコタツの中に放り込んだ。
電源は付いていないし、顔も出してあるので、コタツの中で死ぬことはないだろう。
そして、俺はそのまま台所へ足を踏み入れた。
何となく、台所、気絶している人、という連想で、犯人がわかったような気がしてならない。
そして、俺は和城を居間に連れて行った時に持ってきたマスクをつけて、台所に足を踏み入れた。
英春「やっぱりお前かよ!!!」
幸伶「あ、英春くん。お昼鍋にしない?」
英春「昼に鍋はおかしいだろ!!それに、俺言ったよなあ!!お前は台所に立つなって!!何度言えばわかるんだよ!!食材も無駄にしやがって!!」
幸伶「大丈夫だよ!変な匂いがするだけで、味は問題ないよ!」
英春「その匂いが人を殺しかねない雰囲気を出してんだよ!!とりあえずそれどうにかしろ!!う、ウェッ……。」
俺は、とうとう吐き気を催してきたため、台所から素早く退避して、トイレにこもった。
結果はもちろんのことで、あまりにも気分が悪すぎて、しばらくは動くことができなかった。…最悪だ…。
あの様子じゃあ言うことは聞きそうにないし、無理やり止めようにも匂いが人を殺しにかかるので、至難の業。さて、どうしたものか…。
望美「あれ、ヒデ、どしたの。何かすごくげっそりしてるけど…。」
疾照「だ、大丈夫ですか…?風邪でも引いたんじゃ…。」
いつの間にか望美と疾照が1階に降りてきていた。
俺は、2人に事の顛末を話した。
英春「…というわけで、幸伶の悪事を止めたい。」
望美「警察に通報しようよ。虎彦の両親あたりに連絡してみようか?」
疾照「身内って通報できましたっけ。」
英春「通報して、あいつが捕まっても俺たちに面倒くさいものが降りかかるだけだ。」
疾照「なら、ガスマスクでも買ってきますか。」
英春「売ってんのか…?」
望美「スーパーの雑貨コーナーに売ってたよ。」
英春「あー、やっぱり売ってんだな…。あそこの雑貨屋は、逆に何が売ってないんだろうな。」
そうして、俺たちはすぐさまスーパーに向かった。
俺たちは、台所の前に立ちはだかった。まず、幸伶を3人がかりで封じ込め、一旦外に締め出す。そして、火を止めて鍋の中の劇物を処理する、という流れだ。
スパイの作戦指揮みたいな言い方をしたが、そもそも相手の幸伶の怪力っぷりは恐ろしく、あの連続殺人犯を素手で封じ込めてしまったほどである。
そして、俺は目で合図をし、3人で台所に突入した。
…が、そこに幸伶の姿はなく、相変わらず劇物入りの鍋がコンロに置いてあるのだが、火が止められている。
望美「…あれ、幸伶は…?」
疾照「…劇物鍋はありますよ。どこに行ったんでしょうか…。」
英春「うーん…。」
俺は、とりあえず周囲を見回してみた。特に変な部分はないか…。
英春「…あ、勝手口の鍵が開いてる…。」
望美「…え?あ、ほんとだ…。…幸伶って外にいるの?」
疾照「和城さんに確認取ってみます?あの人、いつも外にいるので。」
英春「ああ、和城なら幸伶の劇物に当てられてたぞ。」
望美「ああ、可哀想に…。」
そして、俺たちはおそらく幸伶が外にいるだろうと考え、外に出てみた。
すると、確かに幸伶はいたのだが、なぜか積雪の中に顔を突っ込んでいた。
英春「??????????」
望美「??????????」
疾照「??????????」
俺たちの脳が理解を拒んだ。幸伶はビクともしないが、幸伶の近くには、小さな皿とお玉が落ちていた。こいつ、あの劇物を実食して自爆したな…。
俺たちは、劇物を庭に掘った穴に埋めた。さすがに本当の毒物を入れたわけではないだろうから、せめて地面の栄養になってくれ。
望美「…なんか、今日は1日中汚かったね…。」
英春「あんまりそういう事言うな…。」
和城「あれ?雑草が枯れてる…。」
英春「…幸伶の劇物って除草剤になるのか…。」




