第74話 その人の為に成る事を
雪が毎日のように降る以外は、特に何も起きずに毎日がはじまり、終わっていった。その間にドラマと言えるようなドラマはないが、その場にいる俺たちにとっては幸せな時間が流れていた。
しかし、そういう時間はすぐに終わり、とうとう冬休みがはじまってしまった。
ついこの前まで夏休みだった気がする。時間が惜しい。もう少しゆっくり進んでくれ。
そう願ってみても別にゆっくりになるわけではないのが、悲しいところだ。
さて、今日は12月の24日。
現代に生きる人々なら、この日が何なのか、すぐにわかるだろう。
クリスマス・イブ。いわゆるクリスマスの前日だ。
俺が豊橋に住んでいたときは、状況が状況だったのでほとんどそんなものはできなかった。故に馴染みがあまりない。
だが、幸伶がクリスマスのパーティをやりたいと言い出したので、仕方なく付き合うことにした。
幸伶いわく、とにかくご馳走を用意するらしいのだが、俺にはわかる。どうせあいつはそういう類いのものを食べたいだけだ。
そして、何かプレゼントも用意しなければならないようだ。
だが、俺は日頃本を大量に買うせいで、毎月のこづかいがすぐに消え失せる。
本当は同じ本を何度も読み返したほうがいいのだが、一ヶ月でそれらを擦り切れるまで読んでしまうので、すぐ次に手を出す。
なので、俺は家にあるものでプレゼントを自作することにした。
英春「うーん…、とはいえ、何を作るか決めてないんだよなあ…。」
俺は自室にこもり、ずっと悩んだ。
今日が24日なのだから、正直言って、残された時間はほんのわずか。幸伶、望美、和城、疾照の4人に渡すものを作らないといけないのだから、あまり大層なものは作れないな…。
英春「うーん、食べ物のほうがよさそうだな…。幸伶と望美は食い意地張ってるし、和城と疾照もおいしいものなら文句は言ってこないだろうしな…。」
しかし、問題はそれを菓子ものにするのか普通の料理にするのかという点だ。
英春「うーん…、一旦、望美のところに行くか…。」
今日は俺と望美の2人で夕食を作ることになっている。なので、言ってしまえば今日出す料理は俺と望美の独断で決めることもできる。
あまりそういうことはやらないほうがいいのだが、他の人からものをもらっておいて自分だけ渡さないというのはもっとよくない。
俺は、とりあえず1階に降りた。
英春「と、言うわけだ。」
望美「なるほどねえ。えっと、今日はフライドチキンとローストビーフ、あとはピザの予定だね。」
英春「なるほどな。…なら、クッキーとか焼いたほうがよさそうだな…。」
望美「いいねえそれ。って、それ私に言ってもいいの?」
英春「ああ。俺とお前での合同作ということにすればいいだろう?」
望美「あ、確かに。よし、私はお菓子作り大得意だから、まっかせなさ〜い!」
英春「頼りがいがある。」
望美「なら、さっそく作っちゃおう!」
俺は望美と共に、材料を出していった。
幸伶「うーん、何がいいかなあ…。」
僕は、スーパーに来ていた。ここのスーパーは雑貨も売ってるから、何かプレゼントを買うにはもってこいなんだよね。
幸伶「英春くんだけ全然決まらないなあ…。何がいいかな…。」
望美たちは前から関わりがあったから好みはよく知ってるけど、英春くんは今年出会ったばかりだから、まだ深い部分までは知らない。英春くんも、何か隠している感じがするし…。
幸伶「うーん、…悩んでも仕方ないか!英春くんを知ってる人に聞いてみようかな。」
僕は買い物かごのなかに入っている、望美、和城、疾照へのプレゼントを買って、店を出た。
澄晴「へ?英春の好み?」
博斗「なぜ突然そんなことを?」
幸伶「英春くんへのプレゼント、何にするか迷ってるんだ。」
森三郎「なるほど…。」
僕は、澄晴くんたちに相談した。よく英春くんと会ってるから知ってることも多いだろうし、中学生なら僕よりいい案を出してくれるかも。
幕奈「あの子なら、君からの贈り物は何でも喜ぶと思うけどな。」
幸伶「そうかなあ…。」
琴徹「そうだぜ。あいつ、よくお前らの話をしてたぞ。」
幸伶「え?そうなの?」
澄晴「そうだ。なあ、博斗。」
博斗「うんうん。君たちは自慢の友人なんだってね。だから、気持ちがこもっていれば何でも喜んでくれるさ。」
幸伶「なるほど。ありがとう。」
幕奈「あ、1つ助言しとくと、あいつ鉄道が好きらしい。」
幸伶「鉄道?」
森三郎「そうだ。鉄道だ。」
博斗「鉄道関係のものだとより一層喜ぶかもね。」
幸伶「そうなんだね。じゃあ、さっそく買ってくるよ。相談に乗ってくれて、ありがとう!」
澄晴「気にすんな。」
森三郎「よきクリスマスを過ごせよ。」
幕奈「じゃあな、幸伶。」
僕はみんなに礼を言って、さっきまでいたスーパーに戻った。
英春「ふう、何とか焼き上がったな。」
望美「お疲れ様。あとは袋詰めするだけだね。」
何時間もかけて、俺たちはクッキーを焼いた。オーブンから出した、焼きたてのクッキーを、5袋ずつ小分けにしていく。
望美「あれ、何で5袋も…?」
そう問われた俺は、一袋を望美に差し出した。
英春「俺からお前へのプレゼントだ。少し時間が早いがな。もう一袋は、お前から俺へってことで、いいだろうか。」
望美「…え、全然、それでいいよ…。」
英春「そうか。」
俺は、残り3つの袋をわかりづらいところへ隠した。
すると、玄関の扉が開いた。
幸伶「ただいま〜。」
望美「おかえり。遅かったね。」
幸伶「いや〜迷いに迷ってさ。何とか買えたよ。」
英春「…なんか、嬉しそうだな。」
幸伶「そう?そういうふうに見えてるだけじゃない?あ、今晩のご馳走でも作ってるの?僕も手伝おうか?」
英春望美「断固拒否する!」
幸伶「えー何でさ!!」




