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第68話 初雪

直我「とまあ、今は見えなくなってしまったが、秋には空に秋四角形が見えるわけだな。」

俺たちが大変な思いをして運んできたストーブのおかげで、冬なのに暖かく過ごすことができている。

不要になってしまった上着は、ランドセルの中に詰め込まれている。

理科の授業で星座を習っているものの、今日もあいにくの曇り空なものだから、星を拝むことはできそうにない。

直我「よし、今日はここまでだな。」


幾斗「あ〜あ、雪でもHURANかな…。」

優来「呼んだ?」

幾斗「CHIGAU。そっちの"ゆき"じゃねえ。」

英春「…雪か…。豊橋だとあんまり見ないよな。」

幸伶「だよね。僕見たことないもん。」

望美「それはウソでしょ。」

授業後、俺たちは珍しく全員でまとまっていた。

それにしても、雪か…。もともと住んでいた豊橋の町では、海が近いせいで全然雪が降らなかった。

確かに雪で思いっきり遊んでみたいとは思うのだが、ニュースで毎年のように北陸とか東北の雪の事を聞いていると、嬉しいのか嬉しくないのかよくわからなくなる。

虎彦「雪乞いでもすれば降るんじゃねえか?こんな天気だし。」

凌貴「雪乞いなんて初めて聞いたんだけど…。」

瑞穂「安心しろ。どうせそのうち降る。毎年降ってんだろ?」

幾斗「それはSOUDANA。」

優来「確かにね。」

素朗「いいよ雪なんて降らなくても。2年前それで家から出れなかったんだから。」

英春「いやいや、いくら山の中とはいえ、そこまでは降らないだろ。」

素朗「それが降ったんだな。残念なことにね。」

鍛郎「あの時はひどかったな。村の老人が"黒のナンタラカンタラが〜たたりが〜"って騒いでたな。」

幸伶「うえー、何か嫌な話だね。」

そうやって、俺たちはいつも通り雑談をしていた。

季節もすっかり移り変わってしまった。

春から始まり、夏、秋、そして冬になった。12月というのは忙しい時期なのだが、俺たちはそんなことも気にせず、いつも通りに暮らしていた、はずだがね。

剣蔵「降れ〜降れ〜雪よ〜降れ〜!!」

英春「ああ、変なこと言い出すから剣蔵が本当に雪乞いはじめたぞ…。」

凌貴「大丈夫だよどうせまだまだ降らないから。」

疾照「そんなこと言って大丈夫ですかね…。」

そうしてしばらく話していたのだが、その間も剣蔵は雪乞いを続けていた。

…そういえば、剣蔵と虎彦も俺や幸伶のような転校生なんだよな。雪が降らないところから来たのだろう。

でなければ、ここまで熱心にやってない…。

そして、お約束ではあるが、本当に起きてしまったのだ。

幸伶「…ん?あ!!みんな見てよ!」

望美「雪が降ってきた!」

素朗「ウソでしょ…?」

幾斗「おう!YATTAZE!」

鍛郎「効くんだな…、雪乞い…。」

そう、雪が降ってきた。窓を閉めているので教室内に入ってくることはないだろうが、それでも触ったら痛いほど冷たいのだろう。そう思えるほど、雪は真っ白だ。

凌貴「これは…、夕方くらいには積もるかもね…。」

七夜「え…、積もるの…?」

瑞穂「雪ダルマ作れるな。」

幸伶「英春くん、今日の晩ごはん、少し遅くしようよ。」

英春「えーー、まだ下準備なにもしてない…。」

疾照「…まあ、英春さん、今日は遊びましょ。幸伶さん、冷凍食品でも文句はありませんね?」

幸伶「僕はおいしければ何でもいいよ。」

望美「あれ?幸伶、夏休み最終日の時、そうめんに文句言ってなかった?」

幸伶「わあああああああああああ!!!すごい量降ってきた!」

和城「…耳が…。」


今日の授業は終わった。その間も雪は絶えず降り積もってきている。

俺たちはランドセルや手提げカバンを全部教室に置いてきて、そのまま校庭に走っていった。

すでに多くの児童が校庭内を走り回っているが、まだ雪は積もる。

幸伶「よーし!雪ダルマ作るぞ〜!!」

英春「作り方わかるのか?」

幸伶「まず、ちっちゃい雪玉を作って、それを転がしていって…、」

幸伶は素手で雪に触り、そのままにぎって固めた。

英春「お前、手痛くないのかよ…。」

幸伶「…とても、痛い…。」

英春「それ見ろ…。」

雪なんて、言ってみれば氷なんだから、そりゃ冷たくて痛いわな…。

幸伶「いいなあ英春くんは手袋あって…。ねえ英春くん、軍手とか持ってない?」

英春「持ってない。」

そう言いつつ、俺は上着のポケットに手を突っ込んで探ってみた。

すると、底の方に布の塊のようなものがある。どうやら引っ張り出せるらしい。

俺はそれを引っ張り出す。それは、春のときに瑞穂に誘われて芋掘りに行ったときの軍手だった。

英春「えええ!?軍手あった!?」

幸伶「あったの!?」

英春「…この上着、一応洗濯して保管してたが、…この軍手…。」

幸伶に聞こえないようにぼそっと言ったが、この軍手はかなり汚そうだった。だが、いつも幸伶に妨害される俺は、特に罪悪感もなく、その軍手を幸伶に渡した。

すると、幸伶はすごい勢いで雪玉を転がし始め、次の瞬間には顔の飾り付けをしていた。

幸伶「できたー!」

英春「…なんだこいつ…。」

幸伶「え?雪ダルマだけど?」

英春「…色々言いたいことがあるが、まず、何だこの点の目は。唇だけやたら立派だし、まゆ毛が左右でつながってるし、髪の毛が落ち武者みたいだし…。」

幸伶の作ったそれは、確かに雪ダルマではあるのだが、先ほどまで球体だったはずの胴は筒状になってるし、どうやって作ったのかわからない雪の髪の毛がついているし、はっきり言っておかしい代物だ。

幸伶「よし、これの名前はザリナモだ!」

英春「名前つけるな。」

そうやって話していると、どこからともなく雪玉が飛んできた。

そして、俺と幸伶に見事に着弾。飛んできた方向を見ると、虎彦と疾照、望美がいた。

英春「雪合戦だな?」

幸伶「やったるぞー!」

俺と幸伶も応戦するように、手元の雪で弾を作り、3人に向かって投げた。

俺の雪玉は全然関係ない方向に飛び、幸伶のものは見事に命中した。

英春「……あーーー…。」

幸伶「…やっぱり、英春くんは遠距離攻撃、苦手なんだね…。」

英春「…らしいな…。」

すると、向こうの3人は反撃のつもりか、たくさんの雪玉を投げてきた。

特に、虎彦の雪玉はあまりにも正確に飛んでくるので、避けるのはまず無理だ。

幸伶「くそ〜!こうなったら、とりゃああああああ!!」

英春「ええええ!?ザリナモ壊すのおおおおおお!?」

幸伶は、先ほどまで真剣に作っていた雪ダルマのザリナモの頭を外し、それを向こうに投げた。

虎彦「うわああああああ!!!」

望美「それはよくなああああああい!!!」

疾照「せ、戦略的撤退を…!」

…ザリナモの頭は見事に命中。砕けて粉塵をまき散らしていた。

虎彦「負けるか!反撃だあ!」

幸伶「僕も!!」

いつも通り、やかましく意味のわからない現象の連続だが、それでも俺たちは、楽しく遊べたのだろう。


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