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第54話 また積み重なる思い 後編

英春「疲れたぁぁぁぁ……。」

鍛郎「に、2度とこんなこたぁやりたかぁねえ…。」

疾照「さすがに…、今日疲れなかった人は…、いないはずですよ…。」

素朗「いや、ここにまだ元気な人がいるよ…。」

虎彦「ん?俺か?」

幸伶「僕じゃない?」

英春「どっちもなんだが…。」

あれから幸伶と幾斗による営業妨害さえ打ち破り、あれよあれよと売れ、ついには材料の在庫も尽きて完売。一部を除き俺たちはクタクタに疲れ、こうして屋台裏でイスに座ってだらけている。

ちなみに、追加分の調理は計4回行われた。

直我「みんなお疲れさん。」

瑞穂「うえ、先生、どこ行ってたんだよ。大変だったんだぞこっちは。」

望美「うわ、何か美味しそうなものいっぱい持ってる…。」

そういえば、矢張先生は、この屋台の監督責任を持っているはずなのに、いつの間にか消えていた。手に持っているものからして、どうせ祭りを満喫していたのだろう。本当に頼りにならない大人だなぁ…。

直我「お、おい、英春何なんだその目は…。」

英春「いや、頼りにならないなぁと、思いまして…。」

虎彦「おお、ヒデが悪口言ったぞ!」

和城「悪口ではないだろ。」

直我「な、頼りにならないとは何なんだッ!」

英春「いや、先生、現場監督じゃないですか。なのにほぼ半日くらいどっか行ってましたよね。あまり褒められた行動ではないですね…。」

望美「おお、言うねえヒデ…。」

直我「そ、そうか、なら、屋台の後片付けは俺に任せて、お前らは祭りを楽しんできなさい!」

剣蔵「英春ナイスー。」

瑞穂「おおお!!英春やるなあヒデ!」

七夜「すごいね英春くん。」

直我「あの、それ許可したの俺なんですが…。」

先生の話に聞き耳を持たず、俺たちはそれぞれ散り散りに屋台の列に紛れ込んだ。

俺の近くには幸伶と望美、七夜がいたので、この4人で巡ることになった。

望美「でもヒデすごいね。大人を言葉で封じ込めちゃったよ。」

七夜「あそこまで言う必要なかったんじゃない…?」

英春「これは俺の持論だが、他人の悪目は指摘しないと治らない。本人のためには嫌われようがそれを言う必要がある。」

幸伶「そんなことよりさ、射的あるよ射的。みんなでやろうよ。」

幸伶が指さす先には、確かに射的屋がある。取られている景品もあるため、怪しいところでは無さそうだ。

望美「え〜?私焼き芋買いにいきたいんだけど…。」

英春「…まあ、そう言ってやるな。結果的には、今回の屋台の好調ぶりは、ある意味幸伶のおかげだ。少しくらい文句も聞いてやろうじゃないか。」

七夜「そうだね。しかたない、今日くらいは幸伶の無理に付き合ってあげよう。」

望美「…仕方ないなぁ…。後で焼き芋屋だけは絶対行くからね。」

幸伶「みんなありがとう。よし、さっそく行こ〜う!おじさん、4人でやりまーす!」

「はい4人分ね。1人500円だから合計2000円だ。」

みんなからの許可の言葉を聞いた幸伶は、着ぐるみの着脱のとき並みに素早く屋台に向かい、いつの間にか料金を支払っていた。

幸伶いわく祭りが終わったあとにお金を返してくれればよいらしい。

俺たちも幸伶に追いついた。そこで、それぞれ火縄銃を模したコルク銃と、コルク弾5発をもらった。

幸伶「よーし、僕は何を狙おうかなー…。」

望美「うーん、キャラメル…。焼き栗…。ぶどうの缶ジュース…。」

英春「…相変わらずだな望美は…。」

望美「まあねー。…ちぇ、焼き芋ないよここ。まあいいや。とりあえず焼き栗落とそうかな…。」

七夜「とりあえずで落とせるの?結構重そうに見えるけど…。」

望美と幸伶は狙うものを決めたらしく、すでに1発を撃っていた。

まあ素晴らしいくらいに外れているが。

それに対し、俺と七夜はまだ狙いを定められていない。

特に欲しいものもないので、俺はそこそこよさげな文具セットに狙いを定めた。すると、

幸伶「あ!倒れた!」

「お、おめでとう。景品は年賀状の束だな。」

幸伶「やったーー!!」

英春「…いるのか年賀状……。」

幸伶「いるよ!!」

七夜「まあ、人それぞれだよね、欲しいものは…。」

望美「あ、全弾外れた…。」

望美と幸伶はすでに終わった様子。七夜も少しずつ景品を撃ち落とそうとしている。俺も早く済ませねば…。

とりあえず俺は、先ほど狙いを定めた文具セットに照準を合わせ、引き金を引いた。

英春「………???」

幸伶「え、えええええええ!?弾が……!!」

俺が撃った弾は、大きく外れたと思ったら、跳ね返って屋台の壁に当たり、それも跳ね返って別の壁に当たるを繰り返している。……どういうことだ……??

望美「え、ええええ??ええ…?」

英春「…どういう事だ…。物理法則を無視している…。」

そして、数秒跳ね回っていた弾は、勢いよくこちらに跳んできて、俺のほほに凄まじい音を立てて直撃した。

英春「ぎゃああああああああああああああ!!!」

幸伶「ひ、英春くうううん!!」

英春「……痛え……。…射的やめます…。」

「そ、そうか…。なら弾4発残ってるから、400円返金な…。安静にしろよ…。」

屋台のおじさんの親切で、一部料金の返金があったが、そんなことなんて気にもできないくらい、痛かった。どうやら、俺は飛び道具の扱いがド下手くそであるらしい…。


英春「ひどい目に遭った…。」

幸伶「あれももはや才能だよ。」

英春「なぐさめになってないぞ…。」

望美「あ、神社で何かやってる。」

七夜「アレは神社に伝わる伝説を演劇風に仕立て直した劇だよ。」

望美が指さす先に、台が置かれている。そこで、着物を着た人々が歌いながら舞を踊っている。

観客や、屋台を巡る人々の騒ぎ声のなかでも、その歌は聞こえてくる。

♪はるかかなたよりあるまほろしのあるじは〜べにはのひとわざをつかふひとのわざなり〜♪

望美「変な歌だね。」

英春「どちらかというと盆踊り演歌っぽいな…。」

七夜「これが刺さる人もいるんだって。」

幸伶「ふ〜ん。」

♪いつのほどよりか〜それらはいまわれきえふせたり〜♪

そうして、しばらく俺たちはその演劇を観ていた。

数時間すると、祭りも一段落ついたのか、人だかりもかなり減った。

いつの間にか俺たちの屋台も先生たちの手によって片付けられた。

さて、またいつも通りの生活が帰ってくる。この空気は、ここに置いて、家に帰るか…。

幸伶「えー?疾照も和城も年賀状の良さをわかってないなんて!もったいないなぁ。」

疾照「いや、年賀状を否定するつもりはないのですが…。」

和城「50枚もいるか…?」

幸伶「え?…いらないかも…。」

望美「ほら〜私たちが言った通りだったじゃん。」

英春「自業自得だな。」

しかし、帰路につく俺たちは、みんな笑っていた。

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