第52話 また積み重なる思い 前編
祭り当日となった。俺たちは早朝から学校に集まり、何時間もかけて塗装した屋台のパーツやら、売り物が入っている大きいクーラーボックスやら、発電機やら、屋台運営のために必要なものすべてを持って神社前に向かった。
元はといえば今回の"4年い組屋台出店"は学校側の暴挙だった。今回のことについては学校側が100パーセント悪いので、学校が資金を出している。その一環で、荷車を使わせてくれることになった。
よくよく考えれば、今回の出店で学校側はかなりの大金を使ったはずなのだが、大丈夫なのだろうか。
PTAが黙っていないような気がするが、俺たちの問題ではないため、何も気にせず、祭りを運営側として楽しめる。
素朗「忘れ物はない?」
英春「発電機よし、商品よし、小銭入れよし、屋台のパーツも全部ある。何も問題はない。」
望美「あれ、ガソリンは?ガソリンないと発電機使えないよ。」
凌貴「矢張先生が持ってきてくれるらしい。さすがに子供が扱っていい代物ではないからね。」
鍛郎「それもそうか。」
幸伶「あ!忘れ物あった!」
優来「えー?あるのー?」
疾照「ちゃんと確認しろとあれほど言ったじゃありませんか…。」
虎彦「はよ行ってこい。」
幸伶「うん!行ってくる!」
そう言って、幸伶は校舎の方に戻っていった。本当に大切な時でもアイツはある意味の平常運転をし続けている。緊張して変なことをしないのはよいことだが、アイツの平常運転は、俺たちにしてみれば異常運転なため、迷惑すぎる。
東の山々がほんの少し明るくなって、その周囲の青い空も色が薄くなり始めた。
そろそろ時間も押してくるはずだ。神社は距離的には近いが、学校から、バス停から続く村1番の大通りに出るまでの道がひどく狭い。荷車で通るとなると、時間がかかるのは明白だろう。はやくしろ幸伶…!
その念が通ったのか、幸伶は校舎から戻ってきた。
…変なものを持ち出して…。
剣蔵「やっと戻ってきたか…。」
七夜「…なにそれ…。」
幾斗「うわ、またSACHIREIが変なもの持っとるぞ!」
瑞穂「うーわ、お前そんなん作ってたのかよ。」
幸伶はダッシュで戻ってきたのだが、その手には、白や緑の色をした布のようなものが握られていた。
…その色を見て、疾照はすぐさま察したらしく、少し間をおいて、俺や凌貴、鍛郎、素朗も察した。
疾照「……またもや嫌な予感が…。」
英春「何であいつはいろんなもの持ってるんだよ…。」
案の定、それは巨大タマゴンとまめめんで、何と、それは着ぐるみであった。
いつ作ったのか、どこからこんなものを引っ張り出してきたのか、疑問はたくさん出てきたが、時間もないので、とりあえず荷車にぶち込んで、俺たちは学校を後にした。
神社の前に着くと、すでにいくつかの屋台が店を開いており、早くも村は祭りの雰囲気に包まれようとしていた。
俺たちはあらかじめ教えられていた屋台出店場所に向かった。
和城「…凌貴、力仕事なんてして大丈夫か…?」
凌貴「少しはやらせてほしい。」
英春「無理すんな。それで悪化したらどうすんだ。」
凌貴「だ、だが…。」
おちゃらけメンバーは幸伶、幾斗、虎彦、剣蔵、瑞穂。無駄真面目メンバーは凌貴、鍛郎、素朗、七夜、疾照、あとは、たぶん俺。中間グレーゾーンは優来、和城、望美。
少々説明が長くなってしまったが、ご覧の通り変なやつが強者揃いなので、凌貴も自分がどうにかしないとと思っていたのだろう。
最終的に凌貴には会計を任せることにして、俺たちは屋台の組み立てをして、荷車の片付けは望美と素朗に任せた。
和城「重い…。」
虎彦「ちゃんとやってくれよー!俺たちが死ぬ気で持ち運んだ屋台だからな!」
瑞穂「わかってる!集中させろ!」
鍛郎「もうちょっと協調しろよ…。屋台の組み立てなんてみんなやったことないだろ…?」
剣蔵「それもそうだなあ…。」
幸伶「英春くん、ここどうやればいいの?」
英春「え、それは単純にはめ込むだけだろ。」
幸伶「あ、ほんとだ。」
七夜「なるほど、そうやればいいのか…。」
土台だの骨組みだの屋根だの、様々なところを同時に組み立てているせいで、どうしても効率は悪くなってしまう。
そんなこんなで屋台組み立てをする間も、他の店も少しずつ営業を始め出し、祭りの空気感をさらに醸し出すようになった。もう少しで屋台も完成する手前、ようやく矢張先生がガソリンタンクを持ってやってきた。
直我「待たせたなー。ガソリン持ってきたぜ。発電機に入れとくぞ。」
疾照「ありがとうございます。」
英春「先生、一応ここにいといてくださいよ。何が起きるかわからないんで。」
直我「ああ、校長からいろいろ言われてな、俺もここにいないといけないようになった。」
優来「そりゃそうだよね。」
虎彦「みんなー、屋台の店名の旗をつけるから、集合!」
和城「何だなんだ…。」
幸伶「うわ楽しそう!」
七夜「こんなのあったっけ。」
いつの間にか、屋台はほぼ完成しており、後は旗を屋台上側につけるだけの状態になっていた。
業者に頼んだのか、謎技術を持ち合わせる幸伶が作ったのかは知らないが、高い完成度だ。
剣蔵「これみんなでつけるぞ。」
優来「そのほうが楽しいよね。」
英春「…仕方ない、付き合ってやるか。」
疾照「そうですね。」
望美「あ!何か面白そうなことしてる!」
素朗「へえ、面白そう。」
荷車を置いてきた望美と素朗も合流し、4年い組のクラスメイト総勢14人がそろった。
凌貴「いいなあ俺もやりたい…。」
瑞穂「じゃあやりな。」
剣蔵「やれよ。お前も。」
英春「ほら、固定用の紐だ。」
凌貴「ありがとう〜…。みんな優しいね…。」
望美「もう大げさだなあ。当たり前じゃん仲間なんだからさ〜!」
疾照「そうですよ。」
そうして、全員が固定用の紐を手に取り、総出で紐を結んだ。
みんな「できたー!!」
ここまで数時間しか経過していないことに驚いたが、その分、祭りを楽しめるってこと。俺たちは残りの屋台の道具やら商品やらをあらかじめ決めておいた置き場所に設置した。
もういつでも営業を始めることができる。
太陽もようやく顔を出し、少しずつ賑やかになってきた。
果たして、何人のお客さんが現れるのだろう。




