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第48話 再構築

幸伶らによる大乱戦のせいで、俺と疾照、凌貴、七夜はそのまま帰宅することになった。

4年い組のメンバー全14人のうち、お咎めなしで午後に帰らされたのは上記の4人だけで、あとは未だに先生から説教を食らっている。

もちろん、矢張先生も説教できる立場ではなく、幸伶たちと共に説教を食らっている。

特にやることもない俺たちは、移住メンバーの家に集まった。

凌貴「ほーう、いい家だね。落ち着きがある。」

英春「お前もわかってくれるかこの家の良さを。」

七夜「私もこういう家好きだよ。」

疾照「性格が似ると好みまで似るんですね。」

メンバーがメンバーなので、特にストレスも感じることなく会話ができている。普段から幸伶やら望美やら瑞穂やら幾斗やらの世話ばかりやっている俺たちからしたら、この家は楽園だ。

疾照「………。」

英春「…疾照…?どうかしたか?」

疾照「いや、幸伶さんのあのアメ玉、改良することってできないのかなって、考えてまして…。」

凌貴「うーん、確かに見た目だけなんだよな、あれの難点。不潔な顔に目をつむれば普通においしそうだし。」

七夜「あれって、アメの中にラムネを埋め込んでるんだよね。案外、私たちでも簡単に作れるんじゃない?」

凌貴「まあ、あの幸伶でさえ作れてるんだしね。」

英春「本当に幸伶が作ったかどうかは正直怪しいぞ…?」

しばらく時間が経ったので頭が冷めてきたのかは知らないが、皆、幸伶案を頭ごなしに否定しなくなってきた。

とはいえ、幸伶が持ってきたサンプル品がそれぞれ1つずつなうえ、その片方を幸伶自身が食べてしまったので、例のアメ玉の実情は定かではない。

そして、どういうわけか、そのアメ玉を自分たちでも作ってみようという流れになった。

別に、アメの作り方は心得ているし、市販のラムネを使えば再現はできそうではある。

だが問題は、やはりあの不潔な顔だ。

アレを再現するのは不可能に近いかもしれない。

七夜「…あ、この前スーパーにかき氷シロップが在庫処分で安売りしてたよ。」

英春「…まさかそれでラムネを着色する気か…?」

凌貴「頑張ればできるぞ。」

英春「できていいのかそれは。」

疾照「作ってみましょうよ。あのアメ玉。どうせ暇ですし。」

凌貴「いいね。やってみようか。」

七夜「おもしろそう。」

英春「…はあ、仕方ない、協力しよう…。」


ひと通り家にある材料をかき集めた。ラムネやアメ本体を着色するための食紅は買わないといけないが、それ以外はあらかた集まったと言えるだろう。

凌貴「…で、ここからどう作っていくかだよなぁ…。」

七夜「だよね…。」

幸伶いわく、タマゴンはソーダ味、まめめんはメロンソーダ味らしいが、いまいち再現できる気がしない。

しかし、疾照が家にあったサイダーから原材料を読み取り、それらを準備することで問題はあっさりと解決した。

しかし問題は、やはりあの不潔な顔の再現である。

あの独特な顔は忘れるわけがないのだが、あの小さなアメに、目と鼻、さらには口をつける必要がある。

はっきり言おう、そんな技術、持ち合わせている人間はこの場にはいない!

いつの間にか家に帰ってきてから2時間経って、時刻は14時をまわってしまった。

結局、4人で熟考した結果、単純にアメに市販のラムネを埋め込むだけに留めることにした。

本当、幸伶のあのラムネで絵を描く謎技術はなんなんだよ…。

疾照「…どうですか…?」

凌貴「色合いはよさそうだね。」

英春「よし、全員で試食するぞ…。」

最終的に七夜が提案したかき氷シロップでアメを着色した。

こうして出来上がったアメは、まあそれはひどい出来なのだが、食べてみると、しっかりとそれらしい味がした。

この味が幸伶のつくったタマゴンとまめめんと同じかは定かではないが、全会一致でたぶん同じだということになった。

英春「で、作ってみた結果、まあ見た目はともかく、味は申し分ないだろうな。」

疾照「本当に見た目だけなんですよね…。」

七夜「幸伶に交渉するしかないかな…。」

凌貴「他の人の意見も聞きたいね。」

英春「他の人か…。……。」

疾照「…あー、なるほど…。」

俺が思いついた人、それは澄晴くんをはじめとした例の10人組だが、前に会ったとき、同居人と素朗、瑞穂、幾斗にしばらく会わないようにしようと提案したのは俺である。

軽はずみな考えであんな事を言った数日前の俺をボコボコにしてやりたいが、このまま案が出ないのもよくないため、やむを得ず3人を引き連れて澄晴くんに連絡を取ってみることにした。

時間を潰して16時になったので、試しに電話をかけてみたが、すぐに繋がった。

英春「あー、もしもし、澄晴くん?」

澄晴「あー英春か!なんかあったか?なんかあったら博斗の家にいるから来てくれー!」

英春「え、あ、まだ内容話してな…、…切れた…。」

家の固定電話の受話器からは、長めの機械音が鳴っている。

…一応、行ってみるか…。


博斗「なるほど、それで幸伶くんが作ったアメを再現したから意見が欲しいと。」

英春「お願いする…。」

博斗「まあ、それは全然やるよ。それはそうと澄晴。君、人の話を一切聞かなかったらしいな。」

幕奈「うわ、嘘だろ…。」

澄晴「ひ、ひぃひゅうひぃ〜…」

なんか、口笛の吹き方が幸伶みたいだな…。吹けてないけど。

まあ、そんなことを話していても進まないので、俺は疾照に頼んで、例の再現タマゴンを差し出した。

幕奈「ほう、これが…。」

森三郎「ふむ、ひどいものと聞いてはいたが、よく出来ているように、思うが。」

博斗「うんうん。よくできてるよ。って、澄晴!食べるの早すぎだろ!」

いつの間にか、澄晴くんは再現タマゴンの1つに手を伸ばし、そのまま食べてしまっていた。

その速さは、まるで望美である。

澄晴「うんうん、…うまぁい!」

博斗「どれどれ…、うん、おいしいな。」

幕奈「これなら売れるさ。幸伶くんに言ってやりな。」

森三郎「これはなかなかのもの。安心せよ。」

その後、俺たちはこの4人からよい意見を聞けたので、一安心することができた。

そのまま澄晴くんたちにお礼を言って、今日はそれぞれの家に帰った。

その頃には、太陽もだいぶ沈み始めた。

疾照「それにしても、意外と好評でしたね。」

英春「ああ。やっぱり頭ごなしに物事を否定するのはよくないな…。」

疾照「まあ、仕方ないですよ。何せ、あれを作ったのが幸伶さんなんですから。」

英春「そうだな。幸伶だもんなーー…、」

疾照「ん?どうしましーー……。」

なんということか、家の前に幸伶と望美が倒れていた、というか、寝転がっていた。

それも、あまりにも故人のようなたたずまいで…。

…え……?

疾照「…幸伶さん…?望美さん…?」

英春「…熱中症で、死んでいる……。」

疾照「きゅ、救急車あああああああああ!!!」

さすがにこんなことしてくるやつの意見を採用しろっていうほうが無理があるな…。

…あ、ちなみに幸伶と望美はいとも簡単に息を吹き返した。

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