第47話 彼らなりの準備
日付が変わり、俺たち4年い組のメンバーは、再び学校に集まった。
先生は、なぜか教室の後ろにイスを用意して、そこに座っている。
今日も何とか話し合いの時間を作ってもらったが、昨日あれだけ何か準備してくると息巻いていた幸伶がいない。
素朗「…あれ、幸伶は…?」
和城「行方不明だな…。」
疾照「行方不明ですね…。」
優来「扱い雑だね…。」
英春「まあ、幸伶だしな…。」
望美「幸伶だしね…。」
相変わらず、俺含めた同居人たちからは雑な扱いを受けている幸伶だが、あいつが来ないと話し合いが進まないのも事実。
一緒に住んでいるはずなのに、俺たちが幸伶の行方を知らない理由も説明しなければならないが、まああの男の普段の行動を見ればすぐわかるだろう。
朝には既にやつの姿は消えていた。
もし来ないなら、からあげかチョコバナナかメダカすくいの3つの中から選択するしかないな…。
結局、素朗や鍛郎、七夜から待機の要望が挙がったので、仕方なく待つことにした。
そうして10分が経った頃、ようやく幸伶が現れた。
幸伶「ごめーんみんなー待たせたねー!」
英春「………。」
望美「………。」
和城「………。」
疾照「………。」
クラス全員、特に同居人からの圧が怖いのかはしらないが、幸伶はその手にある紙袋を置いて逃げようとした。
英春「逃げるなバカ…。」
幸伶「はあ〜い…。」
素朗「まあ、謝罪の前に、まずはその紙袋の中身を見せなよ。」
おそらく、幸伶が言っていた"何か"なのだろう。
幸伶は素早く紙袋を素朗のいる黒板前の教卓に持ってきた。
そして、幸伶がそこから取り出した、その何かがあらわになった。
…本当に、なんなんだこれ…。それはやや大きめなアメ玉に見えるが、一方は白、もう一方は少し濃いめの緑で、どことなく変に見える顔が描いてある。
虎彦「…なんだこれ。」
疾照「…何なのか見当がつきませんね…。」
剣蔵「うまいのかコレ。」
瑞穂「…何か変だな…。」
幸伶「何かひどい言われようで悲しい。この白いやつは、タマゴン。ソーダ味のアメ玉だよ。この緑のやつは、まめめん。メロンソーダ味のアメ玉だよ。この目と口はラムネ。食紅で色付けされてるよ。」
そんなふうに幸伶は大々的に説明するも、やはりというべきか、クラス内の反応はいまいちだった。
その原因は、わかりきっている。
英春「もうちょっと見た目どうにかならなかったのかよ。」
幸伶「え、そんなひどい?」
和城「さっき瑞穂が散々酷評していただろ。」
凌貴「あまり食欲をそそられないね。」
幸伶「ええ?ちゃんと適切な色にしたと思うんだけど。」
疾照「いや、そうじゃないんですよ…。顔ですよ、そのアメについてる…。」
幾斗「そのHUKETSUな顔をどうにかSHIRO!」
幸伶「ひどいよ。まず食べてみてよ。食べ物の本質は味でしょ?」
幸伶のその発言でも、みんなは食べてみようとはしなかった。
俺たち同居人ならわかる。幸伶の作る食べ物のまずさを。それが口伝いでクラス全体に広まってしまったがために、幸伶の作ったであろうそのアメ玉を誰も食べようとしないのだ。
やはり、普段の行いというのはその人の信用に大きな影響を与えるようで、いくら幸伶がまともなことを言っても、誰もそれを真に受けようとしない。
…前にも似たようなことを言われていた人がいた気がする…。
幸伶「仕方ないなあ…。僕が食べて毒がないってことを証明しないといけないみたいだね。」
和城「おいコイツ今"毒"って言ったぞ!?」
疾照「やっぱり普段から毒を混ぜてたんですね!?」
望美「どうりであり得ない劇物ができるわけだよ!」
前々から幸伶と面識があったメンバーから、またもや批判が飛んできているが、幸伶はそれをものともせず、例のタマゴンとか言うものを口に含んだ。
その瞬間、クラス内で少しばかりざわめきが巻き起こった。
幸伶「ほら!食べれるよ!ゲテモノじゃないよ!」
英春「…はぁ…まさかこの幸伶が、まともに食えるものを作り出すとはな…。」
望美「信じられない…。」
なんということか、幸伶は口に含んだアメ玉を、そのまま食べてしまった。幸伶の体に、特に異変はない。幸伶が作ったそのアメ玉は、本当に食べ物として成り立つ代物だった。
優来「なあんだ。なら大丈夫だね。私も食べよー!」
凌貴「君のチャレンジ精神もすごいな…。」
英春「そういえば幸伶、紙袋の中、タマゴンとまめめん1個ずつしか入ってなかったよな。食べても大丈夫なのかよ。」
虎彦「あ、確かにそうだな!」
七夜「…本当だ、この紙袋からっぽだね…。」
鍛郎「やっちまったな…。」
幸伶「あ………。」
今更ではあるが、何も考えずに幸伶が(恐らく)試作品であるこのアメ玉を食べてしまったので、もし幸伶案が通り、コレを祭で売り出すことになったとしても、それを大量生産するとなれば、サンプルは必須なはずだ。それがないとなると、作ろうにも作りようがない。そもそも作れるのかコレ。
その間にも、優来は残ったまめめんに手を伸ばそうとしており、幸伶はダッシュしてそれを回避しようとした。
…そういえば、さっきから矢張先生は何してるんだ。もう大惨事一歩手前まで来ているぞ。止めに入らないのか。
俺は後ろの方で座っているはずの矢張先生の方へ視線を動かした。
…ね、寝ていやがるこの教師…!仕事中に寝るな!そもそも何でこんなうるさい場所で寝られるんだ。
一方、幸伶は何とかまめめんを食べられるのを阻止した模様。だが、話を聞かない優来により、なぜか追いかけられている。
それらを止めようと瑞穂や幾斗、鍛郎や望美らが動いたため、教室内はもはや話し合いの場というより戦場だ。
英春「………どうしたものか…。」
疾照「………矢張先生は、起きそうにありませんし、職員室に行ってほかの先生を呼びましょう…。」
英春「……そうだな。凌貴、七夜、お前らも来てくれ…。」
凌貴「わかった…。」
七夜「…散々だよもう…。」
その後、俺たちが呼んだ他の先生により乱闘は中断され、俺たち4人以外は全員職員室送りにされた。ちなみに矢張先生も大目玉を食らっている。
幸か不幸か、1時間目に話し合いをしていたため、俺たちはその後の授業がなくなってしまった。
職員室にいる先生方は10人の処遇に追われているので、こちらに手が回らない。
そのまま、俺たちは午前だけ自習をして、午後は休みになった。
英春「最近こんなのばっかりだよな。」
疾照「ですね。何か、日を追うごとにひどくなってると言うか…。」
七夜「そのうちとんでもない事件に巻き込まれそうで怖いね。」
凌貴「縁起でもないこと言うな。」
まともに会話が通じるこの4人で帰路についたが、何とも言えない空気が流れていた。
…祭以前に、このクラスのまとまりについて議論するべきだったのかもしれない。
後書きなんて滅多に書きませんが、今回は必要なので書くことにしました。
今回の話で登場した「タマゴン」「まめめん」は、私の友人によって考案・デザインされました。
友人本人としっかり連絡を取ったうえで、キャラを使わせてもらっています。使用許可、本当にありがとうごさいます(友人本人がこの文を読んでくれるといいのですが)。
これからも、この2キャラを丁寧に扱っていきたいと思います。




