第36話 夜闇会談事件
さすがにお昼でこりて反省したのか、望美の大食いも少しばかりおとなしくなった。さすが海が見える旅館というだけあり、魚や甲殻類などの海鮮類料理が多かった気がする。まあ、俺は魚好きだから全然ありがたいが。
そんなこんなで夕食を済ませたわけだが、どういうわけか、今度は和城と幾斗の部屋に、俺と幸伶が行くことになった。
…なぜ…。
本当になんで呼び出されたのか見当がつかない。
幾斗に来いとだけ言われて来たので、特に目的があるわけでもない。
和城と幾斗の部屋に入ると、2人はダンマリとした状態で待っていた。
英春「…な、なんなんだ…。この空気…。」
幸伶「…え。……ええ?」
あの幸伶ですら困惑するとは、相当な事だ。
そんな空気を打ち破るように、幾斗が口を開いた。
幾斗「…KOIBAMA、するぞ…!」
英春「…へ?恋バナ…?」
これだけ神妙な顔をしていたとは思えないほどごく普通な話題を提示してきたため、ついつい素っ頓狂な声を発してしまった。
だが、この時俺は、少しばかり嫌な気になった。
そもそも恋愛話に興味ないし、そもそもあんまりしたくない。だから、俺はただただ聞く耳を立てるだけにしておくことにした。
幾斗「SACHREI、お前からだ!」
幸伶「えー、僕は気になる人いないなあ…。」
幾斗「TSUMARAN。次、和城。」
和城「さっき話しただろ。僕も興味ある人はいないね。」
幾斗「お前らSEKKYOKU性なさすぎるだろ!!」
なんということか、この場にいるうちの過半数が"興味ない"と解答した。
和城「そういう幾斗はどうなのさ。さっきも言わなかったじゃないか。」
幾斗「え、…いない…。」
全会一致で"興味ない"になった。
その後は、幸伶が持ってきたトランプで遊んだり[大富豪は俺の全勝]、なんとなくテレビを観ていたりしていた。何気にこういうところでやるいつもの遊びが、1番楽しい気がする。
英春「ちょっと飲み物買ってくる。」
幸伶「いってらっしゃい。」
和城「僕も行くよ。」
ちょうど手元にある水筒の中が空になった。
散々遊んでいたため、飲み物買ったらそろそろ寝よう。
和城「…二人いるとはいえ、夜のホテルの廊下は不気味だな…。」
英春「…ホラーゲームのやりすぎだと思うがな…。」
自販機はエレベーターのすぐ横にあり、品揃えもまあまあよい。俺はかなり安いサイダーを、和城はグレープジュースを買った。
英春「さて、戻るか。」
和城「ああ。」
飲み物は自室で飲む。俺たちはすぐさま戻ろうとした。のだが、廊下の奥のほうに、何やら黒いものが見える。
和城「な、なんだあれ…。」
英春「ああ…。なんだろうな…。」
どうやら和城も気が付いたらしい。本当にホラーゲームみたいな状態になってしまった。
俺たちの部屋はそんなに遠くないため、奥のほうまで行く必要はないのだが、とてつもなくその黒いものが気になったり…する…。
和城「な、なあ…。あの黒いの…、人に見えないか…?」
英春「ひ、人…。確かにな…。」
しばらく遠くにあるそれを見ていたのだが、とうとう飽きて、いったん和城の部屋に戻ることにした。
幸伶「おかえり。遅かったね。」
和城「うん。なんか怪しいものを見つけてね…。」
その後、幸伶と幾斗に、黒い謎のものの話をしてみた。
さすがに信じられなかったが、俺は試しに外に出て確認してみろと言ってみた。
言われた通り幸伶と幾斗は外に出た。
幸伶「…何もいないじゃん。」
英春「…はあ?」
和城「そんなわけなかろう。」
幾斗「いないもんはINAIのだ!」
2人にそう言われ、俺と和城も外に出てみた。周りを見渡してみても、確かに先ほどの黒い何かの姿は見えなかった。
何かの影だったと結論付けて、俺たちは布団に潜り込むことにした。
が、さて部屋に戻ろうと幸伶とともに廊下を歩いていると、遠くからドアが開く音がした。
ほかの人も飲み物を買いに来たのかと思った。そして振り返った。
幸伶「ひ、英春くん…。あれ…。」
英春「…あ。」
遠くには、先ほど見た黒い何かがいた。部屋から出てきたのか…?しかし、そんな考え事をしている暇はなくなった。そいつはすさまじい速度でこちらに迫ってきた!!
幸伶「うわあああああああああああ!!」
英春「ちょっと予想ついてたあああああああ!」
そのついてくるなにかから、俺たちは全速力で逃げた。正直ほかの部屋の人への配慮なんてしている余裕もなかった。
エレベーターは全然来なかったため、階段を使って逃げることにした。
幸伶「どこまで逃げる!?」
英春「とりあえず一階まで逃げるぞ!!」
俺たちは振り返らずに、転げ落ちるかのように階段を下って行った。
結局、自分たちの部屋に帰ってこれたとき、すでに日をまたいでいた。
瑞穂「…あれ、冗談のつもりだったのに、ガチ逃げされた…。…素朗?なんかヒデたち逃げたんだが…。」




