第27話 限界戦争
午前の競技は全て終わり、昼休憩になった。みんな各自で昼食を食べているのだが、俺はすみの木陰で弁当を広げていた。なにせ、みんなほとんど親族のところに行ったか、建物内のどこかに行ったからだ。
とはいえ、これまで散々グループで騒いできたんだ。1人でゆっくりするのも悪くない。
…決してボッチを肯定する言葉ではないのだ。
英春「…トンカツなんて入れなきゃよかった…。」
"勝負に勝つ"というゲン担ぎでトンカツを入れたが、なにぶん脂っこくて胃に負担がかかる。
…失敗したな…。
あとで知ったことだが、そんなトンカツでさえ、望美の口にかかればいとも簡単に吸い込まれるようだ。
休憩も終わり、午後の競技が始まった。
一発目に、騎馬戦がある。
待機席に戻った後も、念のために休息と称してグダグダしていたのだが、なぜか素朗から呼び出された。
そこには、クラスメイト全員が集まっていた。
英春「……どういう状況……??」
素朗「みんなで円陣を作ろうと思ってね。」
幸伶「いい思い出になるでしょ?」
え、エンジン…?冗談抜きで、そのエンジンとやらの理解ができず、俺はその場で凍りついた。
疾照「…もしかして、円陣が何か、わからないのですか…?」
英春「…恥ずかしながら…。」
素直に知らないことを認めることにした。見栄を張っても意味がないからだ。
瑞穂「こんな感じで、みんなで円を作るんだ。」
瑞穂の説明の最中、みんなは動き出し、その場で円を描くように並んだ。そこに、1箇所だけ空きがあった。そこに入れということのようだ。
望美「ほら、早く!」
英春「………。」
まだ要領を得ないのだが、とりあえず参加した。
幾斗「おいHIDEHARU!なんか言え!」
英春「…何を…。」
凌貴「まあ、みんなでみんなを応援するような言葉でいいと思うよ。」
英春「…そうか。よし、みんな、ハンデなんて打ち破って、勝つぞ!!」
「おおおおおお!!」
円陣が終わると、すぐ号令がかかった。
俺たちはすぐさま入場する。
さて、俺たちは散々練習をしてきた。単体で見ればかなりよいと言えるだろう。問題は、先ほど言った通り、対戦相手の3年生チームに与えられるというハンデだ。どんなものなのかは、今日という日まで教えられなかった。…のだが…。
こうして対面して、そのハンデの重さを、内心甘く見ていたことに気がついた。
鍛郎「…なんだ…!?あれ……。」
剣蔵「おいおいおい、嘘だろ!?」
凌貴「………マジか……。」
瑞穂「きっしょ!!」
和城「露骨だな…。」
望美「えええ!?あれに勝てって言うの!?」
優来「人殺しー!!あんなの死ぬに決まってるよ!!」
そう…。みんなが驚いたり、恐れたりする理由…。それは、教師陣チーム(全員体育教師)が、一組混じっているということだ。
いくら年齢差があるとはいえ、たった1年。大人を動員するほどの戦力差があるわけではないのだ…!
おまけに、教師陣が加わったことにより、向こうのほうが1チーム多くなった。
……歳上の扱いが雑だ…。……逆に、教師陣を早くに倒せれば勝てるのだが…。
号令も近づく。俺たちは騎馬の体制になった。
「それでは、騎馬戦を始めます。用意…、はじめ!!」
俺たちのチームからは、女子チームが出た。
さすがの教師陣でも、力が弱い女子になら手を出しづらいだろうと踏んだのだ。
俺たちは、それぞれ学年カラーの帽子をかぶっている。4年生が赤帽子、3年生が白帽子だ。
それを取られれば倒されたという判定になる。
相手から出てきたのは…、まさかの教師陣…!
虎彦「だ、大丈夫か…!?」
英春「……。まずいな…。幸伶チーム、ただちに敵本陣へ突入!相手の防御態勢を固めさせろ!」
幸伶「え、いいの!?防御させちゃって。」
英春「ああ。大丈夫だ。俺に考えがある。俺たちはこのまま教師陣を追うぞ!和城、指示を出せ。」
和城「わかった。騎馬、教師陣へ進軍!!」
俺たちは、規律よく走り出した。長期の練習のおかげで、素早く移動できるようになったのだ。
女子チームは、教師陣からの猛攻を何とかすり抜けているが、体格のよい体育教師の帽子など、かすめもできないだろう。実際、大将の望美は、前後左右に揺れるためかなり消耗している。
そうこうしているうちに、俺たちは教師陣の背後へ回ることができた。教師陣は、大人気なくも倒そうとすることに必死で、俺たちの気配に気づいていない。
英春「…今だ、和城!!」
凌貴「よし来た!」
和城「とりゃあ!!」
俺が言うと、和城は騎馬の上で立ち上がった。
今までは、大将が騎馬の上でかがんでいたときの話。立ち上がれば、本来の高身長の恩恵を授かることができる。
和城は、落ちかけながらも何とか教師陣の大将から帽子を奪った。
しかし、残念なことながら、同時に教師陣が女子チームの帽子も手に取った。
和城「取ったああああああ!!」
剣蔵「うおおおお!!やったぜ!」
英春「……後は任せろ。必ず勝つ。」
望美「頼んだよ…。私たちは、もう疲れたから…。」
時を同じくして、3年生連中を引きつけていた幸伶チームは、人に押されて大将の幸伶が転倒。失格となった。
残党の視線が、一気にこっちへ向いた。
凌貴「…これ、実質無敵じゃないか…?」
英春「…そうだな…。よほど注意を怠ってなければ…。」
剣蔵「え……。」
和城「………。進めええええ!!蹴散らせええええ!!」
英春凌貴剣蔵「おうおおおおおああああ!!!」
俺たちは、まさに暴れ馬のように走り、3年生集団の全員の帽子を手にした。3年生は、化け物を見たかのような顔つきにかわり、まさに死ぬ気で逃げ回っていた。この時の大乱闘ぶりはなかなかのもので、観客の方もだいぶ盛り上がっていたようだ。そして、すべての敵を倒した俺たちは、騎馬戦で勝利を納めたのだ。
…あとで聞いた話だが、4年生対3年生の騎馬戦で、4年生が勝ったのは今回で3回目(競技自体は40回程やられてある)のようだ。…やりすぎだろやっぱり…。




