第25話 退屈な天井
熱中症になり、自宅での待機を命じられた俺は、7時半になった今も、こうして布団に寝転がっている。
すでに外は明るくなり、電気をつけていなくても部屋は明るい。本当は元気だし、読書やゲームなどやりたいのだが…、こういう時に遊ぶのもどうかと思い、こうして寝転がっているのだ。
英春「…あれ、いつの間に…。」
なぜか、布団の横にゼリーが置いてあった。幸伶や望美がこんな気遣いができるわけがないので、疾照や和城のおかげなのだろう。ありがたくいただくことにした。
英春「ふんふん…、ヴッなんだコレ…!!ゼラチンが固まっていやがる…!」
ゼラチンがきれいに混ざらず、そのまま残ってしまっている…。このミスは、…どちらもやる可能性がある…。
なんだろう…、作ってもらっておいて非常に申し訳ないが、かなかなの…、ものだ…。
残すのも失礼なので、何とか胃の中に流し込んだ後、俺はまた布団の上に寝転がった。
窓を少し開けているので、釣り照明が揺れている。
もう梅雨が明けたと言えるくらい、今日もしっかり晴れている。今日は一段と風が強いらしく、少し涼しいくらいだ。
机の上に置いてある本も、バサバサとページがめくれていく。けっきょく昨日出された宿題もやっていない。
…しかしどうしても暇だ。どうにか気を紛らわせる方法はないものか…。
最終的に、俺は窓から外を眺めることにした。
ちょうど家から湖が見える。湖面は太陽の光を受けて少し輝いている。木々もかなり緑が濃くなっていた。
…夏もだいぶ本番だ。
英春「…いい景色だ…。」
こうして1人で無駄な時間を過ごしていると、ついつい過去の記憶が思い出される。
夏休みといえば、俺はもっぱら公園で1日中暇を潰すことばかり考えていた。
今はどうだろうか。とても有意義に過ごしている。さらに有意義なものにするためには、早く体調を万全な状態にするしかない。
外を眺めるのをやめて、早く寝よう。それが一番いい。
俺は窓から離れて、再び寝転がった。…のはいいのだが…、
英春「……暑い…。」
そう。風が止んでしまったので、これでもかというくらい夏特有の熱い空気が入ってくるのだ。
熱中症で休んでいるのに、これでは本末転倒だ。
仕方なく、俺は2階の物置から扇風機を引っ張り出し、風向きを微調整して電源を入れた。
英春「ひゃあああああ、涼しい〜〜〜。」
扇風機1つつけただけで、かなり快適になった。
そうこうして寝転がっていると、眠気が襲ってきた。
俺は、何の抵抗もせずに睡魔に身を預けた。
目が覚めると、空は赤く染まり、山々も夕日の影響で赤くなっている。
みんな帰ってきたようで、下からはいつも通りの騒がしい声が聞こえてきた。
体調もだいぶ良くなってきたので、俺は下に降りた。
望美「体調はもう大丈夫なの?」
英春「ああ。大丈夫だ。」
幸伶「ならさ、英春くん、ゲームしよ?この格闘ゲーム!」
和城「あ、僕もやりたい。」
望美「私もー!」
疾照「できれば、私も…。」
やけにみんな一緒になって行動してるが、まあいいか…。
俺は幸伶の誘いに乗ることにした。
英春「…疾照、どうした?この部屋暑いか?」
疾照は、なぜか汗をかいている。みんなが帰宅してから結構経っているようだし、疾照だけ、というのも変な話だ。
疾照「べ、別に大丈夫ですよ。気にしないでください。」
…明らかに動揺したな…。それに、俺から目もそらしてくる。
…あのゼリー、疾照が作ったのか…?
まあ、無意味な詮索はするものではないな…。
幸伶「このゲームねえ、キャラ多すぎるんだよ…。」
英春「うわッなんだコレ!?」
和城「えええ…、前作はこんなにいたっけ…。」
ゲームの画面には、ズラーッとキャラクターが並んでいる。これ全部、操作できるということだろう…。
望美「私はねえ、よく使うのは決めてるから。」
疾照「羨ましいですよ。私は迷ってしまって…。」
英春「ああ、俺も迷ってる…。」
とはいえ、決めないとゲームは進行しない。俺や疾照、和城は適当に決めた。
あとは、操作感の運である…。
幸伶「…英春くん、本当に初心者?もう和城倒しちゃったよ…。」
英春「敵の動きの法則を見れば、動きの予想なんてたやすい。」
和城「バケモンだ…。」
望美「ねえ…。私たちなんてしょっぱな負けちゃったもん…。」
疾照「英春さんは、やっぱり多才ですね…。」
後ろから野次がとんでくるが、俺はそんなのに気を取られるわけには行かない。
前回のレースゲームとは違い、幸伶はガチで勝ちに来ている。油断できない…。
幸伶「………!!あ……。」
望美「あああああああ!!」
和城「操作ミス…。」
幸伶側が技の入力をミスし、隙ができた。その隙を逃さず、俺は最後の一撃を与えた。
幸伶「うわー、負けた…。」
英春「うん、1日中寝てると集中できるな。」
小さなトラブルはありながらも、何とか体調不良は治ったようだ。…元から直ってた気がするが…。
とはいえ、明日からまた学校へ行くことになる。
不安なのは、どこまで運動会練習が進んだか…、である。




