第24話 暑さに対する油断
梅雨が明けたと錯覚するように、昨日に続き今日も晴天である。そして、例に漏れず体育もある…。
今日ばかりはしっかりと水分が必要そうだ。望美に大型の水筒を持って来るよう伝えたが、なかなか降りてこない…。
疾照が朝食を作ってくれているとはいえ、あまり時間を無駄にしたくない。
英春「望美、いつまで探してんだ!早く降りてこい。」
…返事はなかった。様子を見に行く必要があるらしい。
英春「疾照、台所を頼めるか。」
疾照「ええ。大丈夫ですよ。」
英春「任せたぞ。」
和城は庭の水やりだし、幸伶も一緒になって庭に出ている。…というか、そもそも幸伶に何かを頼みたくない。しかたない。1人でいかないと行けないようだ。
俺が階段を登っている最中、なにやらガタガタと音が聞こえてきた。本当に何してるんだあいつは…。
家の物置は、個室のある2階にある。なかなかの広さなので、初日に持ってこれず、そのまま使わなくなったメンバーの家具がたくさん転がっている。そのなかに水筒も放り込んでおいたのだが、ものがたくさんあるわけではないのに、なぜそこまで時間をかけているのか…。
俺は物置の戸を開けたのだが、なぜかそこに望美はいなかった…。…え、なぜ?
英春「…望美?どこ行った…?」
望美「ヒデ〜、何も見えない〜…。」
なぜか望美の声は聞こえてきた。確かにこの部屋にいるようだ。そして、声は目の前に転がっている段ボールから聞こえてくる…。
恐る恐る俺がその段ボールを触ると、突然段ボールが動き出した!!
英春「うわああああああああああああ!!」
望美「きやああああああああああああ!!」
目の前でグルグル円を描いて動き回る段ボールの中から、望美の声がしている。
…ああ、そういうことか…。なぜかこの段ボールの中に望美が収まってるのか…。…なんで??
俺は何とか段ボールをつかみ、放り投げた。案の定、中から望美が出てきた。
望美「…え、あ、え??ひ、ヒデ?」
英春「……なにしてんだ……。」
望美「いや、水筒探してたら上から何か落ちてきて、そして次の瞬間、視界が暗くなって…。」
…本当に、何がしたかったのかわからないが、何とか水筒も見つけ、学校へ出発した。
今日の体育は玉入れだ。対戦学年は5年生なので、俺たちにハンデが設けられるようだ。
幸伶「暑いー…。」
幾斗「A☆TSU☆I☆ZE!」
凌貴「あー、めんどい…。」
虎彦「帰りたいぜ。」
もはやほとんど真夏だ。3時間目にもなると、日差しもかなり強くなってくる。
直我「よーし、始めるぞ。用意…、始め!」
ピストルのかわりの笛の音が鳴り、やる必要生を感じられない玉入れ練習が始まった。
幸伶「うーん、入れずらないなあ…。」
虎彦「玉がどう飛んでいくかと、どこへ飛ばしたいかをしっかり考えるんだ。そうすると、ホラ。」
虎彦は自信ありげに玉を投げたのだが、きれいに外した。
虎彦「…あー、外れることも…、あるよな…?」
剣蔵「かっこ悪い…。」
英春「………。」
七夜「…英春くん…?どうしたの?ぼーっとしてたけど…。」
英春「……!い、いや、大丈夫だ…。」
素朗「無理しないほうがいいよ。」
英春「いや、本当に大丈夫だ。」
…しかし、確かに体が重く感じる…。それに、動きづらい…。…先生に言って、水を飲みに行こう…。
英春「先生…。飲み物飲みに行ってもいいですか…?」
直我「ああ、いいぞ。気をつけて行けよ。」
許可をもらい、俺は下駄箱近くにまとめて置いてある水筒の場所まで向かおうとした。しかし、やはり足が重い…。動きづらい…。そのとき、オレの視界は急に暗転し、俺は意識を失った…。
幸伶「…え、うわああああ!!英春くん!!」
望美「ヒデえええ!?」
瑞穂「おい!ヒデ!大丈夫か!!」
目が覚めると、そこは保健室だった。窓から見える空は、少し赤みがかっている。既に夕方らしい。
「やっと起きたわね。英春くん、熱中症で倒れたのよ。」
保健室の先生が駆け寄ってきた。
英春「熱中症…。そうか…。日差しが…。」
「あまり水分を取っていなかったでしょう?念のため、明日は安静にしていなさい。」
英春「…はい。」
「動けそう?」
英春「はい。なんとか。」
「そう。気をつけて帰ってね。」
俺はベッドから身体を起こし、立ち上がった。誰かしらが持ってきてくれたランドセルを背負い、俺は校舎から出た。
英春「…あ、弁当…。」
朝作った弁当の様子が不安で、ランドセルから出してみた。
…空だ…。…なんで?
よく見ると、弁当箱の裏側に何かが書いてある。
俺は、そのふせんを剥がして、書いてある字を読んだ。
英春「…なになに、ごめんね、英春くん。勝手に弁当の中身を食べました。許してね。…幸伶より…。…あの野郎…。」
とうとう盗み食いまでするとは…。…とはいえ、今は怒る元気もない…。明後日くらいに罰金でも請求しようか…。
体調が万全とは言えない状況で、変なことを考えているが、それでも何とか帰ってくることができた。そのあと、俺は自室にこもり、安静にしてそのまま寝てしまった。…明日は、恐らくとんでもなく空腹になっているだろう…。




