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FELLO WSHIP WORLD 〜人の心を描く者より〜  作者: ハクタカ ヒバリ
執行編

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第22話 内心の距離

6月も下旬になり、だいぶ暑くなってきた。

ついこの前まで5月どころか4月だったような気がしなくもないのだが、これが時の進み。受け入れるしかない。

今日は週に一度の買い出しの日だ。不足した食材を買う必要がある。基本的に台所は俺が、風呂と洗濯は疾照が、庭は和城が管理しているので、必然的に買い出しも俺1人となる。

幾斗「なに紙とNIRAMEKKOしてんだ、HIDEHARU。」

英春「ああ、今日は買い出しに行く必要があるからな。」

素朗「大変そうだね…。」

瑞穂「うちはお前らの辛さを理解できるぞ。」

素朗「あれ、瑞穂って何か手伝いしてたっけ。」

瑞穂「アホか!うちの家は宿屋だからな。掃除洗濯料理まで、いろいろ手伝わされたさ。おまけに給料なんて出やしない。ただ働きもいいとこだ。」

英春「…そっちもそっちで大変なんだな…。」

今は、こうして終礼チャイムが鳴るまで教室で雑談することしかやることがない。

今日の買うものは、キャベツとウスターソース、じゃがいも、後は明日明後日とかに使う肉類か。

あとは適当に惣菜でも買っとくか。明日が生ごみの日なので、今日は魚にしよう。

考えているとチャイムが鳴ったので、俺はすぐさま教室を出た。これからスーパー内では地獄が始まる。

村唯一のスーパーに、ほぼ全員が集うわけだ。

あんまり人混みが得意ではないので、俺は急いだ。

スーパーに着いたら、俺はすぐさカゴを手に取った。

カートは…、まあ、いいか。いらない。

望美「あ!いたいた!ヒデー!」

英春「…なんでいるんだよ…。」

望美「だめ?」

英春「だめではないが、菓子ものは買わんぞ。」

望美「えー?ケチ!」

英春「そんなの買ってる余裕ないし、まだあるだろうが…。」

なぜか望美がついてきていたようだ。食材の目利きを任せるとなかなかの実力を発揮するので、ありがたいとは思っている。問題は集中したい時に横からアレはどうだろうコレはやめようだの言ってくることだ。

望美「今日はどうするの?」

英春「うーん…魚だな。」

望美「えー?お肉食べたい。」

英春「魚だってある意味肉だぞ。文句言うな。」

望美「ちえー。」

この通り、とても同級生とは思えない会話が展開されているが、これが普通なのだ。大丈夫だ。問題ない。

望美「じゃあさ、サバの西京焼きにしようよ。」

英春「あー、最近食べてないな…。」

望美「じゃあ取ってくるねー!」

そう言って、望美は魚コーナーのところへ向かった…。相変わらず食べ物には目がないな…。

…ふと横を見ると、親子で買い物に来ている人もいるようだ。母親と見える女性が、幼い子の手を引いている。その姿には、何か考えさせるものがある。

親がまともだったら、幼少期に死にかけることもなく、前の学校でいじめを受けることもなかったはずだ。でも、俺が小学校2年生の頃の友人である、山本俊也に出会ったのは、同じいじめられっ子だったという共通点があったからだ。もし、俺が普通に暮らしている少年だったら、俊也とは友達になれなかっただろう。そして、ここで暮らすこともなかった。

店内の軽快な音楽と、人の話し声のなかに、かすかながら雨音が聞こえてくる。

…なぜか心に虚ろさが灯った。生活に不満があるのか…?いや、俺には仲間や、友人と呼べるような存在もいる。確かにトラブルには巻き込まれたが、それを差し引いたとしても、大量の釣り銭が来る。

…そうか、俺が勝手にアイツらと壁を作っていたんだ。表面上の壁じゃない。心の距離間だ。

あいつらは、死にかける恐怖を知らない。心身共にボロボロになるまで追い詰められたことがない。その差に、距離間を感じていたんだ…。

まだ、俺の心は癒えていないらしい。

迷惑にならない位置で立ちすくんでいたが、やけに時の流れが遅く感じた。

ちょっとすると、望美が戻ってきた。

望美「あったよー!…あれ、ヒデ、どうしたの?」

英春「いや、何でもない。ほかのものも買うか。」

どうやら顔に出ていたらしい。…俺の過去を教えるのは、この心が完全に癒えた後にしよう。

そうしないと、話しているうちに倒れそうだ。

その後、俺と望美は必要なものを全て買い、スーパーから出た。ちょうど雨が止んだらしい。

望美「この雲じゃあ、夕日は見れそうにないね。」

英春「…梅雨が明ければ晴れが増える。夕日や朝日が見れないのは今だけだ。」

望美「そうだね。さ、帰ろうよ。みんな待ってるよ。」

英春「…ああ。」

その時の俺の表情を、俺自身が知るすべはないが、たぶん、少しだけほほ笑んでいただろう。

距離婚を感じるとはいえ、仲間であることには変わりない。それでいいのだ。俺は、望美と談笑しながら帰路についた。


疾照「ちょっと幸伶さん!?タオルは洗濯機に直入れしないって何度言えばわかるんですか!!」

幸伶「え、ごめん!」

和城「あー、すまない、疾照。それ、僕もやってしまった…。」

疾照「ああああああ!!もうヤダあああ!!」

英春「…疾照、君は、もう寝なさい…。」

望美「疾照…。ごめんね…。」

この家の様子は、俺の心境への配慮もへったくれもないようだ。

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