第17話 犯行時刻
剣蔵をなだめ、さて3人で協力して犯人を見つけよう、と息巻いたはいいものの、俺たちは理科室の前で立ち止まった。なぜなら、そこから人の気配がしたからだ。
虎彦「…案外人の気配ってわかるもんなんだな。」
英春「静かに。犯人が立てこもってるかもしれんだろ。大人を呼ぶぞ。」
剣蔵「…いや、ここは俺たちで捕まえよう。」
英春「正気か!?剣蔵が何かボクシングとかレスリングとかやっていたとして、相手が銃だのナイフだのを持っていないという確証はないんだぞ。」
剣蔵「…アレはどうだ。消火器。あと、AEDとか。」
剣蔵は、近くにあった消火器を指さす。
それに、先ほどの体育館にAEDはある。
英春「AEDはだめだろ。そもそもその目的で置かれてるわけじゃないし、体育館まで取りに行くなら警察官を呼んだほうがいい。」
虎彦「消火器で目眩ましをして、その隙に縛り上げるってのは?」
英春「無茶が過ぎる…。…が、やむを得んな…。それで行こう。」
俺たちは心もとないながらも、先生が使うような大型のほうきを手にとって、扉の前まで来た。
ここまで近づくと声が聞こえる可能性があるので、
俺は手で合図を送ろうと試みた。
…たぶん伝わっていないのだが、それはこの際どうでもいい。
俺は思いっきり戸を開けた。
そして、消火器を持つ虎彦が先に入ったのだが…。
虎彦「せ、先生!?」
英春「え…?…うわッ矢張先生!大丈夫ですか!?」
そこにいたのは犯人ではない。拘束された矢張先生だったのだ。
よく思い出してみれば、学校に着いたあと、俺たちは矢張先生を見ていなかった。ほかの先生はほとんどいたにも関わらず。
そんなことより、早く先生を助けなければ!
虎彦「先生、何してんだよ!」
虎彦が先生の拘束と口につけられたガムテープを取り外した。
直我「っはーーった、助かった…。ありがとう3人とも…。」
英春「なんで拘束されてたんですか、矢張先生…。」
直我「いや、後ろから急に殴られてな、ふらついた瞬間に手を拘束されて、その後全身固められた…。」
剣蔵「…殺人犯だな…。」
英春「ああ、間違いない…。」
直我「君たちこそ、こんなところで何をしてる。ご覧の通り、学校の中も安全というわけではない。早く戻りなさい。」
剣蔵「戻りはする。が、先生。まずはやられた相手の特徴を教えてくれ。」
剣蔵はまだ続ける様子。協力すると言ったからには俺たちも引くわけには行かないようだ。
直我「さっきも言っただろ?後ろからやられたんだ。ほとんどヤツの顔は見えなかったよ。それに、チラッと一瞬顔は見えたが、フードに覆われててほとんど見えなかった。俺が捕まった後、どこに行ったのかも不明だ。」
先生の証言で、調査は前進すると思われたが、また事件は迷宮入りし始めた。
虎彦「じゃあさ、犯人がその後どういう行動を"したい"のか考えようぜ。」
剣蔵「は?"したい"?犯人が考える理想ってことか?」
英春「…なるほどな。予想より理想のほうが、確実性が高い。」
虎彦「そう。そういうことだ。」
犯人と接点が一切ない以上、行動予想などできっこない。なら、先生を拘束した後、どのような行動をしたがるか、考えればよい。
何かしでかした後、しばらく隠れていたいと考えるのは万人共通だからだ。
英春「先生、拘束された時刻はわかりますか。」
直我「ああ、だいたい11時くらいじゃなかったかな…。」
11時。俺たちが博斗くんの家を出た時刻とおおよそ同じだ。そう長い時間は経っていないな。
虎彦「なら、この学校に子供を受け入れ始めた時刻は?」
直我「10時半だ。」
先生が捕まる30分前…。俺たちが学校に来たとき、それなりの人数の警察官がいた。
その頃から警察官はいたと考えてよさそうだ。
だとすれば、犯人がこの学校から逃げることは事実上不可能。
まず間違いなくこの学校内にいる。
だが、この学校は狭いため、数分で敷地内のどこへだって行くことができる。
やろうと思えば、屋上に逃げることだって可能だ。
だが、ここから遠すぎると逃げてる最中に見つかる可能性があり、逆に近すぎるとすぐに見つかる。
この中間の、絶妙な位置にいるはずだ。
英春「先生、警察の人に連絡って取れますか?」
直我「ああ、取れるぞ。」
英春「なら、この学校に人を集めるように言ってください。犯人は、間違いなく学校にいる。」
剣蔵「…は、もしや…。体育館…、とか?」
虎彦「た、体育館!?」
剣蔵「ほら、英春たちが来たとき、ちょうどごった返してただろ?その中にまぎれて、体育倉庫に忍び込んだとか…。」
虎彦「で、でも、俺らも体育倉庫の近くにいただろ!?」
英春「…あの辺りにも、先生と親が結構いた…。」
それに、体育館は先程言った"程よい位置"に入る。
犯人がいる可能性は大だ。
それなら、あそこにいるみんなが危ないのではないか…?
冷や汗がたれてきた。これは、まずい…!
英春「せ、先生は、早く連絡してください!増援を呼べって!2人とも!体育館へ急ぐぞ!」
虎彦「おう!」
剣蔵「まかせろ!」
俺たちは急いで体育館に戻った。途中、何回か警察官に止められたが、素早く事情を説明してついてきてもらった。
閉まっていた体育館の扉を空けた時、俺たちは絶望した。予感は的中…。
殺人犯が…、その場にいる全員を人質にしていた…。




