第16話 ギスギス
ものの数分で、俺たちは学校に着いた。
体育館に全員集められたのだが、人口が少ないがために、子供の人数もほんの少しだ。
子供を送ってきた親も多いらしく、体育館には結構な人数が集まっている。そのなかでも、俺たちのクラスメイトは本当によく目立った。
鍛郎「お前らも来たんだな。」
凌貴「君たちだけ来ないから、心配したんだ。」
幸伶「いやー、後免、後免!」
英春「それ高知県の地名…。」
案外あっさりと4年い組は集合した。のだが、転校生の2人は来ていない。何をしているのか…。いや、まだ来てないだけだ。
素朗「でもさ、連続殺人犯なんて、顔見たことないよ。そんなのわかるわけない。」
優来「あ、確かに!今思えば顔写真たことないよね!」
虎彦「それは心配御無用!」
和城「うわッ!どっから出てきたんだよ!」
和城の隣には、いつの間にか虎彦がいた。本当に唐突すぎる。彼に気づかなかった人のほとんどが驚いて腰を抜かした。
虎彦「母ちゃんからポスターをパクってきた。これだ。」
そう言って虎彦は、自身の手に持っていた丸めてある紙を広げた。
そのポスターには、メガネをかけた40代と思われる男が写っていた。名前の欄には、内藤誠二と書かれてある。
幸伶「うわー、いかにも悪そうな顔してるね。」
瑞穂「どっかで見たことあるような顔…。」
疾照「え!?」
瑞穂「あー、違う。近所の石田っておっちゃんに似てただけ。」
幾斗「なんだよー、はっきりSHIROYO。」
瑞穂「お前に言われたくない。」
いつの間にか送迎の親もいなくなっている。
こんな感じで、各々がポスターを見た感想を言い合う中、突然、体育館中に手を叩く音が聞こえてきた。
何なんだ?その音が響いた次の瞬間には、話し声であふれていた体育館が静かになった。
前を見ると、2人の警察官が立っている。
樹春「失礼。私は愛知県警の杉浦樹春と言います。」
勝唐「同じく愛知県警の上田勝唐といいます。」
樹春「例の連続殺人犯の影響で、捜査に支障をきたさないために君たちはここに集められました。危険だから、この場では、私たちの言うことを聞いてほしい。」
勝唐「犯人はまだまだ捕まる気配がないが、安心しなさい。必ず捕まえる。俺と樹春はこの場にいるから、何かあったらすぐ言いなさい。」
話はそれで終わった。体育館には、再び話し声が広がり始めた。
望美「あの男の警官の人、すごい太ってるね…。」
疾照「中年って年にも見えませんし、どうしたんでしょうね…。」
英春「見た目いじりはやめておけ…。」
和城「…そう言えば、あいつ、剣蔵は?全く見てないが…。」
その言葉を聞いて、全員思い出した。そうだ、虎彦と一緒に転校してきた、塩谷剣蔵がいないのだ。
虎彦「剣蔵なら、あの隅っこでなんかしてるぞ。」
虎彦が指差す方を見てみたが、確かに剣蔵はいる。
紙に一生懸命何か書いてるが、遠すぎて全く見えない。
素朗「相変わらず、よくわからないやつだね。」
七夜「…ちょつと、怖い…かも。」
優来「わかる…。得体のしれない存在って感じ…。」
幸伶「最初の頃の英春くんみたいだね。」
英春「……。そうか?」
保育園時代には仲が良かったが、今はまだほとんど話したことがない。俺は、どうもあいつとは違う気がしている。あいつは、他人とは会話する。それでいて、何か隠してる。
俺みたいに、はっきりと"近寄ってくるな"という雰囲気は出していない。
ただ、何か書いてるだけだ。それだけで、近寄りがたい…。…謎なやつだな…。
すると、警察官の人が、なにやら電話しだした。
突然の内容らしく、かなり焦っている様子。
電話を切ると、すぐに2人で体育館を出ていってしまった。
剣蔵「…今か…。」
…かすかに聞こえた。剣蔵の声。
剣蔵は、警察官がどこかで行くと、立ち上がって体育館の戸を開け始めた。
虎彦「お、おい!剣蔵!何してんだよ!」
虎彦が走り出す。しかし、剣蔵はすでに戸を開けてどこかへ走り出した。
幸伶「ちょっと!虎彦くん!」
英春「おい!幸伶!」
望美「ちょ、ちょっと!3人とも!」
七夜「え、えええ!?」
俺と幸伶、望美、七夜が虎彦に続いた。
そのまま外廊下を通って、校舎の廊下に来た。
虎彦が引き留めたらしく、剣蔵はそこで止まっていた。
虎彦「剣蔵、何してんだよ。」
剣蔵「…この事件を解明する糸口を見つけた。」
幸伶「ええ?何言ってるのさ!ほら、早く戻ろう?危ないよここは!」
望美「そうだよ。今この瞬間も、犯人が聞き耳立ててるかもなんだよ?」
剣蔵「黙れ。」
剣蔵が発した重い言葉に、原因がひるんだ。
何だこいつ、昔からこんなんだったか…?
剣蔵「何もわからんやつは早く戻ってろ。邪魔だ。行くぞ虎彦。」
虎彦「え?俺?」
剣蔵は、虎彦を連れてまだ奥に行くつもりだ。
英春「やっぱりそうか。お前、裏があるだろ。この村に引っ越してきた理由にもつながる裏が。」
剣蔵「…英春、お前にはわからんだろ。親に期待されない辛さが。」
何か始まったが、とりあえずは続けないといけないようだ…。
英春「すまん、みんな。剣蔵の言う通り、戻ってくれ。」
幸伶「え、でも、」
英春「でもじゃない。早く戻れ。お前らがいると、話しづらいからな。」
望美「…わかったよ…。」
しぶしぶだが、俺と剣蔵、通虎彦以外はみんな戻っていった。
虎彦「…な、何が始まるんだよ…。」
英春「…親がいるだけマシだろ、剣蔵。お前が志す分野がなにかわからんが、親が全てなのか?お前にとって。お前にも友達いるだろ。そいつらに認めてはもらえねえのかよ。」
虎彦「ひ、英春…、あんまり言うと…、」
剣蔵「俺には、友達なんて虎彦しかいない…。ああ、そうだよ。ほとんど親が全てだ!俺は、親に認めてもらえなければこの先やっていけないものになろうとしてんだ!やっと期待されるような人間になれるチャンスが巡ってきたんだ!ほっといてくれよ!!」
英春「…今じゃだめか…。」
剣蔵「…ああ…。」
自身のなかの気持ちをすべて吐いて、少しは落ち着けるらしい。今なら対話できる。
英春「…虎彦、いっちょ、協力できるか?」
虎彦「まかせろ。大方、自分の手で犯人を捕まえるんだろ?手伝わせてくれよ。」
剣蔵「……頼む。」
何とか剣蔵を落ち着かせることができた。それはそれでいいのだが、新たな問題が浮かび上がってきた。
…それは、目の前にある理科室から、人の気配がすることだ…。




