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FELLO WSHIP WORLD 〜人の心を描く者より〜  作者: ハクタカ ヒバリ
解凍編

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第12話 残りの春

この村に来たのが4月の中旬なのに、もう5月さえ残り僅かとなってしまった。今日は休日。土曜日だ。

さて、今日は前まで読んでた小説を、もう一回読んでみようかな。

のんびりと休日を満喫するつもりだったのに、下の居間は騒がしい。そして、ここはあの問題児(イササチレイ)が住んでいるシェアハウス。

俺の理想も、簡単に打ち砕かれた。

幸伶「どんどんドーン!英春くーん!新じゃがの収穫に行こー!」

…ほらみろ。さっそくうるさいのがやってきた。だって、口でノック音を発するヤツもなかなかいないぞ…。

…今あいつなんて言った…?新じゃがの収穫?

その問いに答えるかのごとく、望美が続いた。

望美「瑞穂が家でじゃがいもを育ててるんだって。

ヒデにもお誘いが来てるよ。」

…じゃがいもか…。新じゃがは食べやすく、蒸してバターをつけて食べると非常に美味だ。

英春「…わかった。同行する。」

望美「よーおし、すぐ行こう!」

食欲に従うことにした。

俺は早急に支度して、部屋から出た。…のだが、

英春「…お前ら、芋掘りを舐めてるな…。」

2人の服は、いつもと変わらぬ軽装だった。

それに比べ、俺の服は、汚れてもいい作業着。

幸伶「え?舐めてないよ。だって土なんておいしくないし。」

英春「物理的な話はしてないんだよ。格好だ。そんなんでいもが掘れるか。早く着替えてこい。」

望美「えー?いいじゃん別にこの服で。」

…俺は呆れた。人の忠告をここまで無視するとは…。

その後、汚れても自己責任である旨を伝え、俺たちは家を出た。


瑞穂の家までは徒歩数分で着く。そこから少し歩いて畑まで行くらしい。家の玄関では、すでに瑞穂が待っていた。

瑞穂「よく来たな。ほら、早く行こうぜ。」

望美「あれ、親とかは同伴しないの…?」

望美が質問をしたおかげで、俺も異変に気がついた。

確かに、家の前には瑞穂1人で、親もついていくような気配がない。

瑞穂「あー、うち自身が管理してる畑だからな。個人管理にするっていう約束だから親の手が出んのさ。」

…は?畑を、個人で…?それが普通なのか…?

俺も田舎の方出身だが、畑を小学生が個人管理なんて初めて聞いた。…追風村ではそれが常識なのか…。

俺たちが困惑しているうちに、瑞穂はスタスタ歩いていった。

…置いていきやがって…。

…今思ったのだが、掘り上げただけで、いも自体は渡さない、なんてことはないよな…。

芋を掘ることには誘われているが、瑞穂がくれるなんて言った保証がないのだ。

…幸伶と望美が言わなかっただけで、普通にくれるのかも知れんが…。

そうこうしているうちに、畑に着いたようだ。

瑞穂「広いだろ?1人じゃ終わりそうにないから手伝ってもらいたくてな。安心しな。報酬は出すから。」

その言葉を聞いた瞬間、望美の目が輝いた気がしたが、放っておいた。いちいち反応していたら面倒なのでな。

俺たちは軍手をつけ、さっそく収穫に取りかかった。

幸伶「トラクターとか導入しなよ。」

瑞穂「んなことできるか。あんな高いものを買う金、小学生が持ってるわけないだろ。第一、一応土地の所有は親名義だから、現状に文句は言えん。この土地を自由に使わせてもらってるんだからな。」

望美「そりゃそうだよね〜。」

向こうで3人が話しながら作業をしている間も、俺は黙々と収穫した。

こういう庭いじり的なことは嫌いではないし、父方の祖母が農家なので、植物の扱いにも長けているつもりだ。やっぱり、単純作業は1人で。コレに尽きる。

実際、無駄なことを考えている今も、作業効率は向こうの2倍程度はある。

俺はこのまま黙って作業を続けるつもりでいたが、

案の定と言うべきか、その効率性もすぐ失われた。

幸伶「英春くん、会話に入ろうよ。」

英春「…。」

望美「ヒデー、ねえ〜。」

英春「……。」

瑞穂「こっち来いよ。ヒデ。」

英春「……集中させろお前らああああああ!!!」

幸伶「うわあああああああ!!英春くんがキレた!!」

英春「俺の作業を邪魔するな!せっかく集中してたのに!」

瑞穂「知らんな。ここではうちの言う事が法だからな。ヒデ!お前は私たちと会話しながら作業しろ!」

英春「あ、そう。じゃあ帰る。」

瑞穂「へ?」

俺が突然こんな事を言ったせいか、向こうもひどく混乱しているらしい。そりゃそうだろう。さっきまで黙々と作業していた人間が、突然やめるといい出したのだから。だが、俺は一度集中が切れると、すぐ怠けようとする人間だ。早いうちに切り替えたほうが周りのためになる。

そして、俺はこの日の夜、途中放棄したことをひどく悔やみ、申し訳なさから幸伶と望美に口を利けなかったのであった…。

…めでたさのかけらもないオチである…。

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