第11話 村の不可解
…家に帰っても、俺は例の書物を読み進めていた。
今日は望美と疾照に頼んで料理当番を代わってもらっている。
…とはいえ、相変わらずの難読文なせいで、理解しているのかどうか、自分でも怪しい。
そもそも、この本の出どころがわからない。
本の最後には、出版社どころか著者や発行年月日すら記されていないのだ。
英春「…つくづく怪しい本だ…。あんまりこれに書いてある内容を鵜呑みにできんな…。」
読み解くのにかなり頭を使ったので、俺は傍にあったラムネを食べた。
…こうして深く考えてみると、この追風村そのものが、不審に見えてくる。新城の東隣らしいが、
俺の故郷、豊橋から行けなくもないし、そんな近い場所のことを何も知らないのが、そもそも不気味だ。
あと、この村は小さすぎる。
これだけの小ささなら、平成の大合併で新城市に取り込まれていてもおかしくはない。
…いや、小学生があれこれ考えても、大人は杞憂で片付けるはずだ。この考えは捨てよう。
そうして、俺は残ったラムネを一気食いして、その本をランドセルの中にしまった。
居間に行くと、すでに夕食の準備ができていた。
和城「遅いぞ。何してたんだ。」
英春「ちょっと読書だ。」
望美「とりあえず食べよ。ほら、早く座って。」
そうして、全員揃ったところで挨拶をし、各々食べ始めた。
みんなが楽しくテレビを見ながら箸を進める中、俺は未だに頭の中で思考していた。
あの本の中に書いてあった紅葉神社の伝説、紅葉人術伝説についてだ。
本によると、善行をした人間へ与えられるという力らしいが…。その思考も、幸伶によってほとんど消されていた。
幸伶「うわ、すごいね。この機械。本当に動いてるよ。」
和城「やっぱり巨大ロボットは男のロマンだよな…。」
どうやら、テレビの中で実物巨大ロボットを動かすバラエティ番組がやっているらしい。
英春「…ロボットアニメなんて見てこなかったからな…。」
望美「確かに、ヒデは現実志向な感じがするよね。」
幸伶「ね。夢がなさそう。」
…さすがにキレた。無言の圧に負けたのか、幸伶は謝ってきた。
疾照「…ですが、やっぱり巨大ロボットは実戦向きじゃありませんよね…。二足歩行だと機械として安定しませんし…。」
幸伶「えー、疾照も現実志向じゃん。」
疾照「い、いやいや!あくまでも現実で作ったらの話ですよ。そもそもがフィクションなんですから、それはそれで楽しんだほうがいいですよ。現実は現実、アニメはアニメってことで。」
まともな意見だと思うな。非常に、まともな意見だ。
幸伶「僕もそのうちロボット使ってみたいな…。」
望美「…え、あのサイズを…?」
幸伶「いやまさか。お金が尽きるでしょ。」
そのとき、俺と疾照、そしてたぶん和城は、同じ事を考えたはずだ。
幸伶がまともなことを言っている…?????
それだけで、ひどく困惑できる…。こいつは、何者なんだ…。
食後、俺と幸伶、疾照の3人でレースゲームをすることになった。もう辺りの日もしっかり沈み、この前のような美しい星々が空にかけられている。
疾照「私、レースゲームやったことないんですよね…。」
英春「奇遇だな。俺もだ。」
幸伶「よーし、二人をボコボコにしてやる!」
疾照「お手柔らかに…。」
俺たちが座布団を占領している間、望美は外で季節外れの月見をしている。その辺の雑草を生けてまで…。
そのそばでは、団子がえげつない速度でなくなっていく。そのさまを一瞬見てしまい、少し身震いした。
そうしている間にも、ゲームは始まった。
幸伶「あ、ポテチとかあったほうがいいよね。」
英春「今さらすぎるな。」
疾照「そうですね。それに…。幸伶さん…。」
幸伶「え、うわあああああ!始まってるじゃん!!
うわあああああ!!最下位いいいい!???」
俺と疾照はしっかり画面を見ていたので発進できたが、幸伶はよそ見をしていたので、出遅れたらしい。
それがショックだったのか、終盤まで幸伶は最下位付近を貫き、俺たちが彼に負けることはなかった。
幸伶「悔しい…。も、もう1回だ!!」
英春「だめだ。風呂に入らせろ。」
疾照「私も日記を書かないと…。」
幸伶「うう…。仕方ないか…。コンピューターと対戦しよう…。」
風呂に入っている間、窓を少し開けていたので夜風が入ってくる。おまけに相変わらずキレイな星空を眺めることができる。
…充実しているな…。この生活が、まだ始まったばかりだということに、驚きを隠せない。まだ、4月。
思う存分、これまで廃れきった心を洗うことができる。さて、明日も学校だから早く寝よう。




