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第49話:能力発揮

「すいません、失礼します! 宝石に触れさせてください!」


 ステラはなりふり構わず、宝石をつけた人を見かけるたび突進していった。


 もちろん、言われた相手は驚く。

 そこはローワンの出番で、自分の知名度と王の許可証を生かし、なんとか宝石に触れさせてもらうよう交渉した。


(助かるわ! ローワン様のおかげでスムーズに触れられる)


 あとはステラの能力次第だ。

 これまで、ステラはただ宝石の記憶を読み取ることしかしてこなかった。


 だが今回は違う。

 はっきりした目標があり、その目的のために記憶を選び取ることが必要だった。


(そうだわ、この能力ももっと磨けるはず!)


 宝石に触れるたび、ステラは願った。


(ノエルの情報を見させて!)


 ノエルの姿、声、体温、匂い――すべてを呼び起こし、指輪を介して宝石の記憶を呼び覚まそうと試みた。


 だが、まったくノエルの情報がない。

 焦りだけが募っていく。そのとき、ローワンがガッと肩をつかんできた。


「闇雲に探しても見つからないんじゃないか?」

「でも……他にどうしたら……」


 ローワンが壁を指さす。


「行き交う人より、定点観測している物の方が効率がいいだろう?」


 ステラはハッとした。

 廊下の壁沿いに置かれた壺や絵画の額縁などの飾りに宝石が使われている。


「ノエルとバーバラは部屋から出ていった。まずは部屋周辺の物に触ってみるんだ」


 焦るあまり、宝石を身につけるのは人だけだと思い込んでしまっていた。


(そうだわ、宝石はアクセサリー以外のいろんなものに使われている)


 ステラは控え室の周囲の宝石に触れてみた。


「あっ……」


 廊下を歩くバーバラとノエルの姿が映った。


 ノエルがバーバラに引きずられるようにして、大広間とは逆方向に歩いて行っている。


「こっちです!」


 ステラは廊下を走り、辺りを見回した。


「ステラ、こっちに宝石がある!」


 ローワンの声に陶器の置物に駆け寄る。


(ノエル……ノエルの姿を見せて!)


 必死で願うステラのこめかみに痛みが走る。

 ずっと集中していたためか、頭がズキズキする。


(そういえば、短期間でこんなに力を使ったことがないわ)


 鼻の下をぬるっとした液体が垂れる感触があった。

 手でぬぐうと血がついていた。気づいたローワンが目を見開く。


「ステラ、鼻血が……!」

「大丈夫です!」


 ステラはハンカチで鼻を押さえた。これしきのことで止まる選択肢はなかった。


(ノエル……どこなの。無事でいて!)


 宝石に触れようとしたが、不安と恐怖で指が震える。

 ステラの手に大きな手が被せられた。


「えっ」


 ローワンがステラの手を支えるようにぐっと握っている。

 思わず見上げるステラの目に、こちらを真摯に見つめるローワンの顔が映った。


「大丈夫だ。絶対に見つかる!」


 ローワンの力強い言葉にステラはうなずいた。

 ステラは宝石に意識を集中させた。



「ああ、もう!」


 バーバラは舌打ちをした。

 どこか適当な部屋にノエルを押し込めるつもりだった。だが、空き部屋がない。


 開放されている部屋には人がいるし、それ以外の部屋は施錠されている。


「思ったより厳重なのね……」


 こんなにも広いというのに、自由に使える部屋がないことに苛立ってきた。

 うろうろしているうちにどんどん時間が過ぎ去っていく。


(早くなんとかしないと……)


 バーバラは不安げなノエルを見やった。


 人がひっきりなしに通る一階を諦め、バーバラは上へと進んだ。


「ねえ、おかあさまは……?」


 ノエルが小さい声で聞いてくる。


「上! 上にいるわ!」


 適当な返事をし、バーバラは引きずるようにしてノエルを連れていった。


 階段を上がっていくと、広いバルコニーに出た。

 騒ぎが起きているせいか、見張りの兵士の姿はない。


(誰もいない……ちょうどいい場所だけど)


 ノエルを閉じ込めておけるような場所がない。

 そのとき、そびえたつ尖塔が目に入った。


(あそこはどうかしら?)


 バーバラは尖塔に向かって歩き出した。



「上です!」


 宝石の記憶を読んだステラはよろけるようにして階段に向かった。


「危ない!」


 階段の一段目でつまずいたステラをローワンが抱き留めた。


「その服で階段を駆け上がるのは無理ですよ!」


 パーティー用の丈の長いドレスが、ステラの前進を阻んでいた。


「わっ」


 いきなりひょいっと持ち上げられ、ステラは声を上げた。


 ローワンが軽々とステラを抱え上げていた。

 まるで自分が小さな子どもになった気分だ。


「ロ、ローワン様!?」

「俺が連れていく! 上なんだな!?」


 しっかりドレスアップをしているステラが軽いわけはない。

 だが、ローワンはステラを抱えながら、軽快に階段を駆け上がっていく。


「すごい!」


 思わず声を上げるステラをローワンがちらりと見た。


「これでも鍛えているんだ。剣も弓も使える」


 実際、触れる体からはたくましさが伝わってくる。


 階段を上りきると広々としたバルコニーに出る。

 辺りを見回していたステラは目を見張った。


 尖塔に向かう階段で、バーバラに手を引かれたノエルが見えた。


「ノエル!!」


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