第47話:暗躍のバーバラ
ステラが控え室に来る十五分前――。
(ふふっ、うまくいったわ)
ノエルの手を引き、バーバラはほくそ笑んだ。
王宮のパーティーに招待され、有頂天になったもののバーバラはすぐに打ちのめされることになった。
人々の注目がステラに集められたのだ。
(何よ、ステラばかりチヤホヤされて!)
美しく着飾ってきたというのに、誰もバーバラに声をかけてこない。
こんなはずではなかった。
錚々たる貴族が集まるパーティーで自分は注目を集め、いろんな男性から求愛される予定だったのに。
そして、ローワンとヨシュアに囲まれるステラの姿。バーバラは屈辱に打ち震えた。
(やっぱり公爵夫人の座を奪わないとダメね)
バーバラは苛立ったまま会場を出た。
廊下を歩いていると、お菓子を抱えた城侍女に目がいった。
「ねえ、そのお菓子は誰の?」
明らかに子ども用のお菓子ばかりだ。
「こちらはアトキンス公爵のご子息用です」
戸惑いながらも、城侍女が教えてくれた。
(えっ、子どもを連れてきているの?)
バーバラはハッとした。
(そうだわ。子ども……。継子って言ってたわよね? つまりローワン様の甥っこ。ノエルの面倒を見られていないとなれば……株が下がるに違いない)
バーバラは足取りも軽く、城侍女のあとをついていった。
お菓子を渡した城侍女が部屋から出て行くのを見計らい、部屋へ入ろうとした時だ。
「わーーーー!!」
「きゃーーーー!!」
大広間の方から大勢の悲鳴が聞こえてきた。
「な、何?」
兵士たちが廊下を走っていく。何か騒ぎが起きたらしい。
すると、部屋から執事服を着た赤い髪の青年が飛び出してきた。
「マリエル、ノエル様を頼む! 旦那様たちの安否を確かめてくる!」
そう言うと、赤髪の執事が廊下を走っていった。
(なんだかわからないけど……これはチャンスじゃない?)
バーバラはするっと部屋に入った。
「!!」
若い侍女とノエルが部屋にいた。
ふたりとも怯えた様子でバーバラを見つめる。
「覚えている? ステラの妹のバーバラよ」
「あっ、バーバラ様!」
マリエルがホッとしたように肩を落とす。
「ステラから言いつかってきたの。ノエルを連れてきてって」
立ち上がろうとするマリエルを、バーバラは手で制した。
「私が連れていくから、あなたはここにいて」
「でも……」
「あなた使用人でしょう? 大広間には貴族しか入れないの!」
きつい口調で言うと、マリエルがぐっと詰まった。
「さ、行くわよ、ノエル」
ノエルが困ったようにもじもじしている。
「ステラが呼んでいるのよ!」
強い口調で言うと、ノエルがようやく立ち上がる。
バーバラはノエルの手を乱暴につかんだ。
部屋を出ると、大広間とは逆の方向へと歩き出す。
(さて……どこかの部屋に閉じ込めるか)
だが、バーバラも王宮は初めてでよくわからない。
幸い、王宮内は大騒ぎで誰もバーバラたちを気にしていなかった。
(この混乱に乗じてやるわ)




