表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/51

第46話:暗殺阻止

 ローワンがそっと箱の蓋を開ける。

 次の瞬間、箱の中から薄桃色の物体が大量に飛び出した。


「わああ!!」

「素敵!」


 パーティー会場に歓声が広がった。

 皆、頭上に広がる高い天井を見上げている。


 空高く舞い上がったのは、ピンク色の花たちだった。

 突然の花の舞に、皆がうっとりとした表情になる。


(ただの花?)


 ステラがホッとしたときだった。

 ボッと小さい音が耳に届いた。


 その音は広がり、宙を舞う花たちが突如燃え上がった。

 花は無数の火の玉となってパーティー会場に降り注いだ。


「きゃーーーー!!」

「火が!!」


 歓声が悲鳴に変わり、逃げ惑う人々で大騒ぎになった。


「みんな、屈んで!!」


 ステラはブレスレットから魔宝石を引きちぎり、声を張り上げていた。

 今この会場で、異常事態に備えていたのはステラだけだった。


「凍れ!!」


 ステラはすべての力を振り絞り、フリーズストーンの力を解き放った。


 パキッ!! パキパキ――。


 涼やかな音を立て、火の玉となった花々が一瞬して凍りついた。

 そして、氷の塊となりポトポトと落ちてきた。


(全部――全部凍らせられた?)


 凄まじい集中に頭がくらくらする。


 地面に伏せている人たちの合間を縫って、ステラはようやくローワンの近くへとたどり着いた。


「ステラ!」


 ローワンが壇上から駆け下りてくる。


「これは――きみのフリーズストーンが?」

「はい!」


 会場を見回したが、火の手が上がっている場所は一つもない。


 床に伏せていた貴族たちもこわごわ立ち上がり始め、一斉に出口へと向かっていく。


「大丈夫ですか!」


 異変に気づいた兵士たちも会場に雪崩(なだれ)れ込んでくる。


(やり遂げた……!!)


 ホッと肩の力を抜いた瞬間、ステラはローワンに抱きすくめられた。


「よくやった!!」


 突然の出来事に硬直しているステラの髪をローワンが撫でる。


「大惨事になるところだった! きみはすごい」


 ローワンに褒め称えられ、ステラはテロを防げたことを実感した。


 ホーキンス公爵が企んだのは王の暗殺だけではない。

 有力な貴族たち全員を火によって苦しめ、死に追いやろうとしたのだ。


 何もかも失った公爵の恨みの深さを感じる。


「ローワン様、お話ししたいことが……」


 あまりに強く抱きしめられていたので、くぐもった声になってしまった。

 ハッとしたようにローワンが体を離す。


「私、宝石の記憶を見たんです。これは顔に傷がある男性――おそらくはホーキンス公爵の企みです」


 ステラの言葉にローワンが息を呑む。


「証拠は!?」

「ありません」


 ステラは首を横に振るしかなかった。


「それでは……王に進言するわけにはいかないな……」


 ローワンが考え込む。


「ローワン様! ステラ様!」


 名前を呼ばれ、ステラはハッと振り向いた。

 血相を変えたケンドリックが駆けつけてくる。


「ご無事で……! いったい何が」


 呼吸を整えているケンドリックに、ローワンが静かに状況を伝えた。


「おそらくテロだ。パーティー会場に火をつけようとしたが、ステラが魔宝石で防いだ」

「なんと……! おふたりがご無事でよかった」


 ケンドリックがホッとしたように緊張を緩めた。


「騒ぎが控え室まで伝わってきて……慌てて駆けつけたのです」


 パーティー会場はショックでうずくまっている人たちや、出口に殺到している人たちで混乱が続いていた。


 騒ぎに気づいた兵士や使用人たちも入り混じって大変なことになっている。

 ステラは玉座を見やった。


「そういえば王は?」

「すぐさま近衛兵が避難させた」


 どうやら玉座の奥に通路があったらしい。王の姿は消えていた。


「パーティーはお開きだな。ステラ、詳しい話を聞かせてほしい。なぜホーキンス公爵の仕業だと思ったんだ? 誰の宝石の記憶だ?」


 ステラはシャーロットの顔を思い浮かべた。


(これは……シャーロット様も共犯になってしまうのでは……)


 王の姪も関わったとあれば、王宮内の混乱は必至だ。

 そして、自分もまだ動揺している。


「少し落ち着いてからお話ししてもいいですか?」


 ステラはちらっとケンドリックを見た。


「ノエルは?」

「マリエルと一緒に待機させています。移動させた方がいいでしょうか?」

「心配なの。ノエルと一緒にいたいわ」


 初めて来た場所で騒ぎが起こり、きっと不安に思っているに違いない。

 ステラは足早に控え室に向かった。


 廊下は血相を変えて走っている兵士や、動揺して叫んでいる貴族の女性などでごった返している。

 まさか王宮でテロが行われると思っていなかったのだろうから当然だ。


(国で一番安全なはずの場所で死にかけたんですもんね)


 そういう自分もまだ平静ではない。


「ノエル!」


 控え室に入ったステラは目でノエルの姿を追った。

 だが、いない。マリエルが駆け寄ってくる。


「奥様! ご無事でしたか?」

「ええ、私たちは大丈夫。ノエルは?」

「あの……奥様のご指示でバーバラ様が連れていかれましたが……」

「は?」


 一気に高所から突き落とされたかのような衝撃にステラは襲われた。


「どういうこと? バーバラが来たの?」

「えっ、ご存知ないんですか?」


 マリエルの顔から血の気が引いていく。


「ど、どうしよう、私……」

「何があったのか話して!」


 ステラはマリエルの両肩に手を置いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ