146.事務的会話
フローリアが通された部屋は、食堂としてはそれほど広くない部屋だった。
「この食堂はアレクシウス様専用の食堂でして、普段はアレクシウス様と私ともう一人の従者グイドのみが食事をします」
「そうですの、これから私たちはこちらでご一緒してもよろしいのでしょうか?」
「はい、今日はアレクシウス様がまだお越しではないですが、次からはアレクシウス様がフローリア様をお迎えに参りまして、こちらでご一緒にお食事をお取りいただくことになります」
このように硬い会話を交わしているのは、給仕係りが何人もいるからだ。
勧められた席に着くと間もなくアレクシウスが入ってきた。
「フローリア姫、お迎えに上がれず申し訳ない。ここは私的な食堂だ。ゆっくりと寛いでくだされ」
立ち上がって礼の姿勢を取っていたフローリアは
「ありがとうございます。従者も一緒にお召し上がりになるとか。普段私も従者と食を共にしておりますので、ラナダに居た時と変わらずで、とても落ち着きます」
「そうですか!ささ、座られよ。給仕、始めてくれ」
「はい、アレクシウス様」
早速食事を始めながら、かなり事務的な話をフローリア始めた。
「アレクシウス様、私の従者の部屋は遠いのですか?遠いと心配ですので」
「いや、それほど遠くはない。あとでグイドに案内させよう。従者の荷物は部屋に運ばれているはずだ」
「女官も近くに部屋があるのですか?」
「女官の方が近いかな。あと部屋の前に近衛が常に二人配置される。私の部屋の隣があなたの部屋なので、両方の部屋で四人だ。城内に進入者など私が産まれてこの方なかったので本来は必要ないが、一応王位継承権があるので常に四人は居る」
「分かりました」
「あと分からないことがあれば女官に聞いてみてくれ。要望があれば私に直接言ってもらってもいい」
「はい、お気遣い感謝申し上げます」
その後は給仕係に聞かれても当たり障りのないような会話をしながら、食事を楽しんだ。
食後のデザートの紅茶を給仕された後、アレクシウスは給仕全員を人払いした。
「人払いをしても大丈夫なのですか?」
「いつものことだ、気にすることは無い」
婚約者と一緒の第2王子の言葉づかいではなく、妹に話しかける兄の言葉遣いに変わった。
「給仕が出た後に結界を張りましたから、普通にお話ししていただいて大丈夫ですよ」
とグイドが付け足した。
「今夜シルフィーナの様子を見に行ってこようと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、俺も行こう。爆睡が気になる」
フローリア同様、アレクシウスも爆睡と言う言葉に引っかかりを感じたようだ。
「ええ、では、お兄様迎えに来てください。あの子に今のところ引っかかりそうな事柄は無いと思います。ただ疲れて眠っているだけだとは思うのですが確認しに行ってこようと思います。キア、いいわね」
『はい、フローリア様』
晩餐には参加しないが、神使のキアとジーンは当然食堂に居る。
「それと個人的にあの子のお気に入りのモリエール侯爵のお顔を拝見したいわ」
「ああ、そうだな。近衛騎士団の団長なのでお前に紹介しておくべきだな」
「ダーレン、外の近衛兵に呼んで来いと言ってこい」
「かしこまりました」
ダーレンが食堂を出て行っても神の会話は続く。




