140.モリエール侯爵邸の探検
「そうかも知れませんね。でもどうも4階は女性の部屋のように思います。男性は別に部屋があるのかもしれませんね」
「あ、なるほど。お風呂も大きいけど一つだものね」
シルフィーナはガイにお姫様抱っこをされたまま、2階に降りた。
2階は食堂やサロンのほかには図書室、応接室など日々使われそうな部屋があり侍女たちが忙しそうに動き回っていた。
使用人たちが使うような作業部屋もいくつもあり、2階がどうやら侯爵家の中心のようだった。
侯爵の執務室では驚いたことにママが書類に目を通していた。
何の書類なのか覗いてみたら、今年の小麦の収穫高と前年比のグラフがあり、今年の植え付け予定と書かれていた。
いつも夜遅くに来たら侯爵が書類を処理しているのは知っていたが、どうやら侯爵が公務の時には夫人が大まかに領地を管理し、侯爵がその確認と言うように分担しているようだった。
「仲のいい夫婦だってお兄様が言っておられたけど、仲がいいだけではなくお互いを信頼していないと一緒に領地経営ってそう簡単に出来ないものよね?」
「そうだと思います。いいご夫婦のようですね」
「そうね、私のパパとママだもの、うふふ」
1階に降りてみた。
立派な玄関ホールには二階へ上がる階段が正面にあり途中から左右に分かれてその上部は吹き抜けになっている。
玄関ホールの左手には大きなホールがあり、夜会などはここで行わるのではないかと思われるが、久しく使っていないようで、ここでも調度品には布が掛けられていた。
玄関ホールの右手には来客用に使われるような応接室やダイニングなど2階よりは大きめの部屋がいくつもあった。
奥に回ると大きなキッチンがあるが、ここも来客が無いと使われないようで、静まり返っていた。
「それにしてもこんな広い邸宅に住んでいるのは侯爵夫婦だけとは、使っていない部屋が多いのは納得ね」
「シルフィーナ様がお生まれになったら、きっとこの屋敷も活気づきますよ」
「そうね、私が産まれたらガイは私から離れてはダメよ。キアやジーンは結構あちこちにふらふら行っているようだけど、ガイはダメ。ずっと私の傍らで居るの。ママの腹の中に居る時はアベルとルーカスに必ず毎日会うのよ。分かった?」
「もちろんです」
次は外に出てみた。
玄関から門扉まではまあまあ距離はあるが、都会の真ん中にあるので見えないほどではない。
門の外には警備担当の門番が居るのが見えたので、ちゃんと警備を担う男性使用人も確保しているのが分かる。
表面はそれほどゴチャゴチャしていないが、目隠しの木々は生えている。
庭でまあまあの規模のお茶会が開けるぐらいのスペースもある。
裏手に回ってみたら、かなり広い手入れの届いた庭園があり、こちらでも散策やガーデンパーティは行えそうだ。
離れた場所にはたぶん男性使用人宿舎、もっと離れたところに厩舎や物置っぽい建物、車庫もあった。
「広すぎる。私この庭で遭難したら助けてね」
「かしこまりました。ぷふふ」
「ガイが傍に居てくれると思うと何でもしちゃいそう。きっと私はおてんばな娘になるわよ」
「今でも十分おてんばだと思います」
とガイがクスクス笑いながら言ってくれる。
シルフィーナは呆れた顔をしたが気を取り直すことにした。
「もう!言ってくれるわね。そろそろアベルとルーカスの所に行きましょうか?」
「そうですね、いつもよりはちょっと早いので。夜の早いアベルの所でもまだ賑やかかもしれませんが様子を見るのもいいかもしれませんね」
そう言うと仲良く抱っこされたままシルフィーナとガイはアベルの所に飛ぶのだった。




