第1話 祖父の工房とハネウサギ⑦
ウサギに聞くなど頭がいかれたのかと思われそうだが現実なのだから仕方がない。
翌朝早朝。またも戸を叩く音で構は目が覚めた。
「いま何時?」
寝ぼけ眼でスマホを見れば、5時半過ぎであった。昨日よりもさらに早い。
「健康になっちゃうじゃん」
ぼやきつつ戸を開ければ、コロコロコロコロとウサギが転がり入ってきた。もうお約束だ。
構は揃って作業台にぶつかってるウサギ4羽を見た。
「今日は白、茶、黒、ブチ柄か。増えてないか?」
『『『『ミュー!』』』』
「戸に体を押し付けてるから転がるんじゃん」
構はウサギの抗議を軽くスルーした。作業台から行燈をとって床に置き、構も屈む。
「あのさ、壊れた行燈ってまだあるの?」
ニンジン片手に構が声をかけると、ウサギたちは顔を見合わせた。
『タクサンー』
『アルー』
『イッパイー』
『アルヨー』
「たくさんかー。具体的にいくつくらいかわかる?」
構が再度問うと、ウサギたちは『ワカンナーイ』と首を横に振る。正直、かわいい。
だがしかし、数がわからないのは構も困る。毎日修理するのはいいが、毎日早朝に起こされるのはやめてほしい。寝坊もしたいのだ。
「一度に10個、持ってこれる?」
『10コー?』
『10コドレクライー?』
『タクサンー』
『ワカッター』
黒のウサギさんがわかってくれたようで、短い手を挙げてくれた。
「じゃあこれが行燈ね。あと朝食のニンジン」
修理済みの行燈を渡せば、仄かに光り出す。どうして自分が持っても光らないのか。ウサギじゃないからか?
ウサギ4羽は一心不乱にニンジンにかぶりついている。食べ終わるまで会話にはならないだろう。
『『『『アリガトー』』』』
ウサギは食べ終えると、揃ったお礼とともに大ジャンプで森へ消えた。
「やれやれ、やっと朝食の準備に取りかかれる」
今朝もラピュタトーストだ。
栄養?
明日考える。
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森に帰った羽ウサギたちは一目散に森の奥を目指していた。大木が多く陽の光が届かない森は暗いが下草がないので羽うさぎはピョンピョコ跳ねる。激しく飛びながらも行燈はしっかり抱きしめていた。
森を進むこと20分。4羽の羽ウサギは巨大な羽ウサギのもとにたどり着いた。おおよそ2メートルはあろうかという真っ白でたれ耳の羽が生えたウサギだ。大木のうろの中でまったりしていた。
『『『『ママー』』』』
4羽のウサギはその巨大なウサギのもとで止まった。
『おかえり。【瘴気避け】の魔道具は直してもらったかい?』
『『コレー!』』
白と黒のウサギが両前足で行燈を掲げるとママと呼ばれた巨大なウサギは『よしよし』と2羽の頭をなでた。
『じゃあそれを持って森の奥に行こうかね』
『ママー』
『ツギタクサンー』
『モッテコイッテー』
『10コー』
『うん? どういうことだい?』
ママウサギは顔を下げ、耳を小さなウサギに近づけた。
『アイツー』
『10コー』
『モッテコイッテー』
『10コー』
『ほぅほぅ、ちまちま持って行くんで無しにまとめて持って来いってことかい。じゃあ次はママが行こうかね。その前にこいつを戻さないと瘴気にやられちまうよ』
巨大なママウサギは行燈を手に持ち立ち上がる。
『ママはちょっと行って来るから、お前たちは休んでな。いい子にしてるんだよ』
『『『『ハーイ』』』』
子ウサギたちの返事ににんまりとした巨大なママウサギは森の奥へ向かった。
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「え、エアコンを見てほしい?」
構は役場からの電話に対応していた。修理もできると伝えたらさっそく出番となったのだ。
「ぬるい風しか出てこない? 多分冷媒ガスが漏れてますね。新しいのを買うにも店に行けない? そうなんですね。わかりました。直せるかの保証はないですけど。ハイ住所がそこなんですね」
構は話を聞きながらメモを取る。工場での仕事が生かされている。
「家庭用のエアコンだとまぁフレアで漏れてるね。じゃあ真空引きとフロンガスが欲しいな。この辺だの空調関係の資材屋さんはどこだろ」
原因を考えながらも工具類を軽トラに積んでいく。現場仕事はワクワクする。
「材料や資材を買って一行きますかねー」
構は軽トラで出かけた。




