↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祖父の工房が異世界の森につながっていた件~森の賢者は魔道具修理やさん~  作者: 海水『墓地ダンジョン』書籍化予定
第一章 森と工房

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/9

第1話 祖父の工房とハネウサギ⑥

2日目3話目です。

 翌朝。ポスポスポスポスと工房の戸が叩かれた。窓の外はもう明るいが時計は6時を指している。とうぜん朝である。

 現状は無職と言える構は昨日からだらけた生活になっていた。昨晩も工房で就寝である。


「んーーーー早すぎない?」


 寝ぼけ眼をこすりながら構はベッドから起き上がる。来客はわかっているが、もう少し時間には手加減願いたい。

 ポスポス叩かれる戸を開けると、昨日と同じくウサギが転がってきた。今朝は1羽だ。同じように作業台にぶつかり、小さな手で額を押さえている。

 構はすぐに行燈を手に取りウサギに渡す。ウサギは行燈をしっかり抱えたが、視線は構に固定されたままだ。


「……まさか、ニンジンもか?」

『ミュー!』


 そうらしい。

 構は家に戻り冷蔵庫からニンジンを持ってきた。昨日買い物に行って良かった。

 今日もラピュタトーストで朝ご飯だ。片手で食えるのがいい。

 一心不乱にニンジンをかじるウサギを眺める。最高のおかずだ。今日のパンはいつもの5割増しは旨い。

 先に食べ終えた構は木の実を手にウサギに問いかける。


「昨日もらった木の実はどうすりゃいい?」


 ウサギは問いかけを無視して食べ続ける。食べ終えてからようやく構をむいた。


『ウエルー』

「なるほど、植えるのか」


 構は食わなくてよかったぜ、と胸をなでおろす。木の実もすべて可食ではない。当然毒もある。救急車を呼んでも20分は来そうもないこんな田舎で食中毒なぞ考えたくもない。


『アリガトー』


 役目は終えたとばかりに、行燈を抱えたウサギは礼を述べて工房を出て行った。


「忙しねーな」


 構は片付けをしつつ木の実を植える場所を考えた。どんな木なのかは知らないが、窓から見える場所がいいだろうと。

 もし大木になってしまうなら工房の近くはダメだ。根が家の土台を破壊しかねない。


「植えるなら、あの柵の扉の脇でいいか」


 構はさっと洗い物を済ませた後、マイナスドライバーと木の実を持って外に出た。シャベルの替わりだ。こんな使い方はダメなのだがあるあるだ。タガネ代わりにもしてしまうのも悪い癖だ。

 扉との距離を適当に測り、マイナスドライバーで地面を掘る。


「木の実だから掘ったらダメかも? まあでも掘ったし」


 園芸はさっぱりな構はそのまま土に埋めた。工房の隅にじょうろがあったので水をたっぷりかける。


「忘れたころに芽が出るでしょ」


 工房に戻った構は、無職を返上すべく何でも屋の活動の準備に取り掛かった。


「何でも屋はいいけど、どうやって知ってもらうかだなー」


 役場には何でも屋をやると伝えてはあるが、それで広まるとは思えない。かといってネットに広告を出しても、田舎のお年寄りの目に留まるとも思えなかった。新参者ゆえに伝手もない。


「ダメじゃん」


 構はがっくり肩を落とす。

 金はあるので贅沢をしなければ20年は生きていけるが、贅沢もしたい。人間はわがままな生き物なのだ。

 「どうするかー」と3時の一服でコーヒーを決めていると、外から『ミュー』と鳴き声が工房に入ってきた。ウサギが来たのだ。『ミュー』『ミュー』と複数の声が聞こえる。


「また2羽か」


 構がドアから顔を覗かせる。ちょうど木の実を植えたあたりに羽の生えたウサギが3羽いる。白、茶、黒。行燈は2個。


「増えた。しかも色違い」


 構が顔を出したからか、ウサギがぽてぽて歩いて来る。かわいい。


『アリガトー』

『ナオチテー』

『ナオチテー』


 差し出されたのは栗の実と行燈。さっと底面に視線をやり、祖父の物と確認する。直さねば。

 行燈と木の実を受け取ると、ウサギ3羽は飛び跳ねて森に帰っていった。相変わらず忙しないウサギである。


「今度は栗かー。季節外れもいいとこだ」


 今は初夏。栗の時期には早すぎる。


「植えるか」


 木の実を植えた柵の扉の反対側に、少し距離を離して植えた。


「桃栗3年。食えるのはだいぶ先だ。それより修理修理♪」


 スキップしながら、構は工房に戻った。



㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢



「壊れ方はみんな同じだな」


 構は作業台に置かれている行燈を眺めてつぶやく。

 行燈は2個とも断線だった。その前も断線。構には、過電流で配線の許容能力を超えての断線に見えた。


「漏斗みたいな部品からエネルギーが流れて水晶が光るんだろうけど。俺が持っても光らないんだよなー」


 構が直した行燈を持っても何も起こらない。ウサギが持つと淡く光るのだ。その差は何だと考えてしまう。


「羽の生えたウサギなんて普通じゃないけど」


 構は普通の成人男性だ。身長も成年男子には届いていない160センチ。高身長男子がうらやましいお年頃だ。おかげでここ数年彼女はいない。


「気になるのは、行燈の数が増えたことかな。全部じーちゃんが作ったものに違いないけど、何台あるんだろ」


 ウサギの様子からすると、明日はさらに増えそうな気配があった。どうせ直すなら一気にやりたい気持ちもある。

 はんだ付け程度だから1台当たり20分もあれば終わる。何でも屋はまだ開店もしていないので暇だ。暇ならば時間つぶしが欲しい。個人的な事情が強い。


「聞いてみるか」


 構は腕を組んで唸った。

1更新の文字数を2000文字くらいにしていますが、もうちょっとほしいなどありましたら教えてください。

2話目から変更するかもです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。