第6話 領都に行こう②
洗濯物を取り込み、購入した資材を工房に運び入れ、作業台にコーヒーと紅茶を並べ、一堂に会した。
「今日は魔導具の引き取りですか?」
構はスフレを視界にいれつつも初顔の男性ラスクを捉えていた。青い髪を後頭部で一つに縛ったイケメンだ。スフレと同じ青い服を着ている。
たぶんだけど自分よりは若いかな。スフレさんがお嬢様だし護衛なのかも?
構はそう考えた。
「そのつもりで来た。事前に手紙を送ってあったはずだが……」
スフレのうかがうような視線に、構は「手紙……」と天井に顔を向けた。そういえば一昨日、工房の戸の前に紙が落ちてたことを思い出した。何だかわからないが捨てるわけには、と言うことで保管はしてあった。
「何かが書かれた紙は見ましたが、見たことない文字だったので読めませんでした」
構は作業台に備え付けの引き出しを開けた。件の手紙を取り出しスフレに渡す。
「間違いなく受け取っていたわけか。なるほど、我らとは文字が違うようだな」
「お嬢様、この包装にある文字は読めません」
スフレの言葉にクッキーがチョコ菓子を掲げた。有名メーカーのホワイトの板チョコだ。
「それはホワイトチョコのお菓子ですね。甘くておいしいお菓子です」
「お菓子?」
スフレがほぅと興味を示した。
「割り込んで申し訳ないっすけどお嬢様。まずは俺の紹介をお願いしたいっす」
ラスクが片手を上げた。この場でお互いを知っているのは構とスフレクッキーだけだ。彼が置いてけ堀になっていた。
「あぁ、こいつは私付きの騎士でラスクと言う。クッキーの夫だ」
「ラスク・クリームと申します。シフォン伯爵麾下のクリーム騎士伯の3男です。先ほどは申し訳ありませんでした」
青い髪の男は起立し、直立不動から深く頭を下げた。
「物部構と申します。えっと、家では何でも屋をやってて、こっちでは魔導具ってやつを修理したり作ったりしてます」
「カマエ殿は先代森の賢者ゲンゾー殿の孫にあたる」
構の自己紹介にスフレから補足がある。
「お孫さんでしたか、重ね重ね無礼をお許しください」
ラスクはまた頭を下げた。
「あの、頭を上げて座ってください。あ、お菓子をどうぞ」
構は箱に入ったビスケットを大皿に入れる。チョコチップ入りのビスケットだ。ついでにスフレが興味を示したホワイトチョコもパッケージを空け、パキパキと割って銀紙を剝く。クリーム色のチョコを同じ大皿に入れる。
「ビスケットとホワイトチョコです。あ、俺が先に食べましょうか」
と構が大皿に手の延ばす前にクッキーが左手にビスケット、右手にホワイトチョコの欠片を持っていた。
「毒見ならわたくしが」
クッキーはまずビスケットを口に入れもぐもぐ。次いでチョコを口にしサクサク。にっこりと笑顔だ。毒が入っているなど端から考えてない顔だ。
「とてもおいしゅうございます。びすけっとは口に入れただけでほろほろ崩れ、その後にカカオがゆっくり溶けて行って、ふたつのハーモニーが素敵です! ほわいとちょこは硬さとサクサクした感触と、乳のような甘みがとてもおいしいです!」
食レポをしながら次を手に取っていた。それを見たスフレも手を伸ばす。
「ふむ、砂糖とバターを贅沢に使っているな。だが上品な甘さだ。白い方は面白い感触だな。サクサクしているのに口の中で溶けていく」
スフレも食レポをしながら次へ手を伸ばす。
構はコーヒーで一服できれば十分なのでビスケットをひとつかじっただけだ。
「クッキー、お嬢様の前でバクバク食うもんじゃないっす」
「ラスクも食べないと無くなってしまいますよ?」
「俺は紅茶でいいっす」
ラスクに窘められたクッキーだがどこ吹く風だ。
大皿が空になるころ、ようやく紅茶を口にしたスフレが「そろそろ本題だが」と取り繕う。ラスクが「食いすぎっすわ」とぼやいた。
「あ、大筒を先に返しますね。動作チェックはお願いします」
「心得た」
大筒を受け取ったスフレが外に出て森の上空に向け魔力を注げば、光線が空に走る。
「問題なしだな」
「おおお、マジで直ってるっす」
スフレは前回見ているので冷静だが、ラスクはたいそう驚いた。壊れた魔導具が直るなど今までもなかったし、聞いたこともなかったからだ。
「ラスク、カマエ殿が森の賢者だと分かったか」
「十分すぎるほどわかりました。カマエ様、本当に数々の無礼、申し訳ありませんでした」
ラスクはまたも頭を下げた。主人たるスフレの顔を立てる意味もあるが、本心でもあった。魔導具を作れるものはいるが個性が強く、直せるものはほとんどいないのが実情だったのだ。
工房に入り席に着くと「実はだな」とスフレが切り出す。




