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祖父の工房が異世界の森につながっていた件~森の賢者は魔道具修理やさん~  作者: 海水『墓地ダンジョン』書籍化予定
第一章 森と工房

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第1話 祖父の工房とハネウサギ③

初日3話目です。

 白いウサギは小さな体には不釣り合いな大きさの行燈を抱えている。和紙で囲まれた手持ち式の行燈だ。構の視線がその行燈の和紙に書かれた模様にくぎ付けになる。

 構にはそれに見覚えがあった。手放した工場のマークである、丸の中にスパナが交差するものだった。


「それ、うちのマーク!」


 構が呆然としている間に、羽のはえた白ウサギが柵にある扉を抜け、大きな足をぺたぺたさせて歩いて構の足元まで来た。立ち上がったら膝くらいまでの大きさだが、ウサギにしては大型だ。そもそも何かを持って二足歩行する生き物ではない。

 構は震える手で行燈を指す。


「それって」

『ナオチテー』


 羽のはえたウサギはぐっと背伸びをして行燈を差し出した。


「なおちて?」

『コワレテルー』

「コワレテル? 壊れてるのかこれ」


 構は行燈を受け取り、目の高さまで持ち上げた。人間が手に持ってちょうどいい大きさだ。ウサギには大きいだろう。

 

「軽いな。フレームは木か軽い金属か?」


 行燈の上部は開け放たれており、中を覗けばゴルフボール大の水晶めいた透明な球体が見えた。台座で固定されているのか揺らしても動かない。その代わり台座の奥でコツコツと音がする。何かが壊れてる音だ。

 構は行燈を持ち上げて底を見た。底面は木製で、そこには【源三】と手書きで彫られていた。


「これ、じーちゃんの作品だ」


 祖父は自分の作品のどこかに名前を彫る癖があった。しかもへたくそな字でだ。目の前にある彫られた文字も、見覚えのあるへたくそな字だった。

 目の奥が熱くなる。


「直したい」


 声に出た。祖父の遺品にも思える。

 構は底面にビスの頭を見つけた。十文字なのでプラスドライバーでいけるだろう。


「ともかく開けないと話にならないな」


 構はすでにやる気になってしまった。ウサギはじっと構を見上げている。構はその無垢な視線に気が付いて苦笑した。


「おっと、ごめんね。俺って集中し過ぎちゃう癖があってさ。えっとね、直すにしても調べないといけないんだ。とりあえず明日また来れるかな?」


 小さな子に語るような口調になってしまうが相手がウサギなので仕方がない。


『アシター?』

「そう、明日」


 ウサギが可愛く首をかしげると長い耳もふんわり揺れた。構の頬も緩む。


『ワカッター』


 ウサギはそう言うとくるっと向きを変え、大ジャンプで柵を飛び越えて行った。すぐに森に隠れて消えてしまう。


「夢でも見たのかな俺」


 ウサギに似た何かの姿は消えた。残ったのは手にある行燈だけ。しかも祖父が作ったもの。

 信じきれないのは当然だ。と同時にワクワクもしていた。


「じいちゃんの作ったものを見られるじゃん」


 モノづくり大好きな構は行燈を大事に抱えて工房に入った。工房へ戻った構は作業台に行燈を載せる。


「ばらすためには」


 とそこで軽トラに荷物を置きっぱなしだと気が付いた。工具もそうだが着替えなどもある。


「ぐぅ、先に荷物を運ばないとダメか」


 後ろ髪を引かれる思いで、構は工房を出て行った。



㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢



「やっと終わった」


 荷物を家に投げ入れ、近所に挨拶もせず、構は工房に舞い戻った。はちみつに執着するクマのごとしだ。


「さぁさぁやるぞー」


 構は手をこすり合わせ、満面の笑みだ。まずは、と行燈を持ち上げてくまなく観察する。

 修理するにも分解は必要だ、そのためには構造を調べねばならない。底面にビスはあったがそれ以外に見落としがあるかもしれない。

 構は、こと工作に関しては有能な男だった。それ以外は無念と言えるが。


「ふーん、やっぱり底面のビスを外さないと進まないな」


 行燈を慎重に逆さにして作業台に置く。ビスは4か所。ビス頭にあうプラスドライバーを手に取る。左手で行燈を固定し、ゆっくりドライバーを回していく。最初だけ抵抗があったが、後はすんなりだ。


「錆はなさそうだ」


 抜けたビスはきれいだった。


「こんな小さなビスでもないとダメなんだよな」


 製品は部品の集合体だ。どんな小さな部品でもなければ機能しない。小さいからとバカにはできないのだ。


「よっとな」


 構は残りのビスも外していく。底面がぱかっと取れた。内部には漏斗(じょうご)のような金属と、細い電線がある。電線の末端が漏斗の近くにあった。その反対側は行燈の中にある水晶の玉の台座に入り込んでいる。いたってシンプルだ。


「もしかしたらこれが断線した?」


 仕組みは不明だがなんとなくの直感でこれをつなげば直りそうだ、と考えた。


「配線を引き直しは難しそうだから、はんだでくっつけよう」


 構は工房の中を探した。ほどなく壁の工具置き場にはんだごてとはんだを見つけた。はんだに消費期限はないが、念のためフラックスを塗れば問題ない。フラックスとははんだ付け促進剤のことだ。

 電源のコンセントが遠いので延長コードも探した。


「欲しいものが必ずあるな、じーちゃんの工房は」


 感心とともに祖父を思い出し、胸が痛くなる。

 もう頼れる人はいない。ひとりで生きて行かねばならない。

 この事実が重くのしかかる。


「ネガティブはだめだ!」


 構は首を横に振って叫んだ。

1更新の文字数を2000文字くらいにしていますが、もうちょっとほしいなどありましたら教えてください。

2話目から変更するかもです。

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