第4話 お嬢様(?)がやってきた④
「魔力がないのになぜ直せるのだ」
「使えないだけで修理は可能ですし。そもそもこれを作ったじーちゃんが使えなかったんだから、問題ないでしょう?」
構からしたらその考えが不思議だった。作る人と使用者は別。作った機器を使えた方が良いかもしれないが、現代において設計、製造、試験は別な部署が行う。もちろん情報の共有はされているが、専門性を求めるならあれもこれも手を出すのはよろしくない。知っておくことは大事だが、それは程度である。
「私にはよくわからないが、そういうものなのか」
スフレはまだ疑問に包まれた顔をしている。構としても自分の考えを押し付けるつもりはない。会社でもそれぞれが思想を持っており、押し付ければ衝突もした。
「先ほども述べたが、我々が来たのは先代ゲンゾー殿が作った魔導具の修理を依頼するためだ」
「その魔導具を見せてもらってもいいですか?」
祖父が作ったのであれば、名前が刻まれているはずだ。まずその確認をしたかった。
名前がないのであれば修理ができないかもしれない。安請け合いはしたくなかった。
「直す魔導具は、どんな魔導具なんですか?」
祖父が作ったとはいえ、構は全く知らない。まずはどのようなものかの情報からだ。
が、ふたりは手ぶらだ。魔導具らしきものはない。よほど小さいものなのか。
「クッキー」
「はいお嬢様。これになります」
スフレの指示でクッキーが腰のポシェットから大きな丸太を取り出した。クッキーは静かに作業台の上に置く。直径が30センチ、長さは1メートルほどはありそうな丸太だ。構が作った新しい龕灯よりも長い。
丸太の片方の端はえぐられており、内側に銀色の金属が貼られている。
その丸太の真ん中ほどに工具を交差させたあのマークがあった。まだ源三のサインを見ていないが、間違いないだろう。
「間違いなくじーちゃんが作ったものですね。それよりも、そのポシェットから出てきたように見えたんですけど」
「マジックバッグですので」
構の疑問はさらっと流された。そっちの方が気になるが修理が先だと思考を変えた。後ろ髪はひかれっぱなしだが。
「これはどんな魔導具なんです?」
構は全体を見ながら声をかけた。
「これは『大筒』という魔導具でまばゆい光で瘴気を滅し、魔獣を弱体化させる」
「瘴気。魔獣」
構は顎に手を当てた。ママウサギとシュウチョウが持ってきた魔導具は瘴気を浄化したり追い出す魔導具だった。魔獣には触れていない。魔獣は自分たちで処理するのだろう。以前イノシシの魔獣をポイしたくらいだし。
それに、行燈などはこの丸太に比べれば小型だが、それ故に単機能だったのかもしれない。
これも同じような仕組みだとすると、と考えた構はこの形に見覚えがあった。
「ペン型ライトかなこれ。でかいけど」
「ペン?」
「あいや、こっちのことです。触っても大丈夫ですか?」
「どうぞ。触らないと直せないだろう」
スフレがスンとして許可するのを、構は「そりゃそうだ」と苦笑してかえした。ごもっともだ。
試しにと魔導具を持ちあげてみた。10キロくらいはありそうだ。小脇に抱えて使うのだろうか、と構はあたりをつける。
構はくぼみと銀色の部分に触れる。爪先で叩けばカンカンと硬質な音と感触。反射板は金属だろう。銀かアルミか。ライトであれば電球がある部分には何もない。
「台座はあるな」
「そこには魔水晶が付いていたが魔獣との戦闘の最中に割れてしまったのだ」
「……戦闘ですか?」
「うむ。この魔導具から出る光を魔獣に当てると、魔獣が弱体化する」
「なるほど……」
構はなんとなくだが理解した。シュウチョウが持ってきた龕灯の強化版だ。構が作った龕灯よりも強力だろうと察せた。
さらに魔導具を調べて行き、反対側の端に祖父の名前を見つけた。
「あぁ、名前があった」
確定である。
構は詳細に見ていく。長い丸太に見えるが、30センチくらいの長さの丸太を繋いである。材料はベルーイゲンの木だろうが、一体ではないのは量の都合だろうか。
構は考えながらケーシングに触れていくと、つなぎ目に隠された小さな六角ボルトを見つけた。分解可能な造りだ。
「分解できるけど、結局は魔水晶がないと直せないな。じーちゃん、どこで買ったんだろ」
「魔水晶の入手が困難か?」
構のひとりごとをスフレが拾った。
「無い部品は買わないと修理ができないけど、じーちゃんがどこで買ったのかわからないんで」
部品がなければ修理はできない。しかもそれが重要な部品ならば。
ただの水晶なら通販でも買えるが【魔】が付く水晶など構は知らない。思わず腕を組んで天井を見た。




