第3話 瘴気の原因と魔導具の強化⑤
翌日。庭でラジオ体操していた構のもとにママウサギが来た。デカかわいいたれ耳ウサギだ。
『新しい行燈はすごい効果だったさ。あれがたくさん欲しいが、できるかい? もちろんただとは言わないさ』
ママウサギは種が入った袋を渡した。
『いろいろな果実の種が入ってる。木になるから庭に植えるといいさ』
言うだけ言ってママウサギは帰ってしまった。構は袋の中を覗く。
「うわ、また種がたくさん入ってるなぁ」
構の頭には、一晩で育った野菜が浮かぶ。
これも一晩で育っちゃうのかな?
ちょっと怖くもあった。
「でも、収穫しなかったら翌日もそのままだったんだよねぇ」
毎日採れるからとまめに収穫したら冷蔵庫がパンクしたのだ。ニンジンはウサギが食べるのであふれることはないがほかはウサギは食べなかった。
ご近所は農家が多く、お裾分けも進まない。ついでに言えば、栗もぷっくりした実が落ちている。ちょっと拾っただけでも50個あった。まだまだ木になっており、末恐ろしさに寒気が来るほどだ。
だが、収穫をあきらめた時に、翌日も変わらないことに気が付いた。数日たっても大きさも変わらなかった。
「こーゆーもんだと思うしかないな」
構は考えることをやめた。
「ともかく植えるか」
構は工房の周囲に植えることにした。収穫も運ぶのも楽だから、と手抜き思想だ。
「これは柿かなぁ?」
なんとなく見覚えがある種もあるが5メートルほど距離をとりながら種を植えていく。裏の池の水をたっぷり上げることも忘れない。
「あの池に水中ポンプを置いてホースで引っ張ればいちいち汲みに行かなくても済むかも? そうしようそうしよう」
構はさっそく買いに行った。
「水中ポンプは沈めとけばいいけど、電源は……工房の壁を抜いちゃえばいいか。防水コンセントも買って。あ、窓の方にもコンセントが欲しいからふたつだ。それ用のケーブルも。ついでに外用の照明もつけちゃおうかな」
ホームセンターに来た構はQOLを上げるには必要だと割り切って爆買いだ。妄想しつつ買い物をするのは楽しいものだ。
「さーて帰ろう」
ほくほく顔で帰った構を迎えたのは、腕が4本ある熊のシュウチョウだった。
何か問題があったのだろうか。構は工房を出た。
『ウサギがだいぶ遺跡に攻めたようだが』
「あぁ、魔道具を改良して強化してみたんです」
構にはピンと来ていた。瘴気の範囲を狭められればクマたちの生存エリアも広がるのだろう。食料を考えれば当然だ。クマが何を食すかは知らないが。
『これも強化できぬか?』
シュウチョウが毛皮の中から龕灯を出してくる。予想通りだ。構はちょっとワクワクしていた。だって祖父の考えたものを改良するのだ。祖父を超えた気がして、ちょっぴりうれしい。
「試してみましょう」
シュウチョウから龕灯を受けとった。
㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢
「さーてこれはどうしようかなぁ」
作業台に龕灯を置き、コーヒーで頭をしゃっきりさせる。作業前の脳内クリーンだ。
「ケーシングはベルーイゲンの木だろうけど、これは変えられない。そもそも材料がない」
ふむと構は考える。行燈は漏斗が電源と言えたが、龕灯はケーシングそのものが電源だ。一番はケーシングの変更で、それは電源強化だ。
ファンをつければ龕灯の光を遮ってしまう。行燈と同じ仕組みはデメリットしかない。
「うーん、どっかにこの木材が落ちてないかなl」
構がコーヒーカップをぐいと持ち上げようとした時だった。外からメキメキメキと木が割れる音が聞こえた。ザザザドスーンと倒れる音。何ごとかと構は飛び出した。
「うっわ、木が倒れてんじゃん!」
根本だけを残して倒れた木は、最初に植えたベルーイゲンの木だった。幹は構の胴回りを超える大木で、葉はすべてなくなって丸裸になっており、倒れた木の先端がギリギリ工房に届かないほど育っていた。
構は柵の扉に駆けた。
「育つのに20年とか聞いたけど、早く育った分枯れるのも早かった?」
倒れたベルーイゲンの木の断面は、すぐにでも使えそうなくらいからからに乾燥していた。まるで「使え」と言っているようだ。
「……この木を加工してもっと大きな龕灯のケーシングにすれば強化可能だけど」
誰かの差し金にしか思えないが、その思惑に乗ってやろうと構は考えた。




