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祖父の工房が異世界の森につながっていた件~森の賢者は魔道具修理やさん~  作者: 海水『墓地ダンジョン』書籍化予定
第一章 森と工房

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第3話 瘴気の原因と魔導具の強化④

「おろ、ほとんど変わらないじゃん。ってことは、電線はぎりぎりの太さだったのか。で、ちょっと増えたら断線しちゃったと。さすがじーちゃん。ぎりぎりを攻めてるなぁ」


 祖父が設計した電線は容量ぎりぎりだったのだ。電線の許容量を増やしたが、実際に流れている電流はさほど増えていなかったことが露呈した。

 構は腕を組んでムムムと唸る。色々失敗しているが、楽しい。めっちゃ楽しい。悩んでいる顔でも内心はワクワクが止まらない。


「ちょうどいいから休憩しよう」


 ニンジンをむさぼってるウサギを横目に構はコーヒーを飲んだ。構はブラック派だ。この苦さが頭をリフレッシュさせていいのだ。


「よーし、同じ回転数でも風量が上がる羽に変えよう!」


 電線を強化したので問題ないと構は判断した。プロペラは羽の傾きや数で風量は変わる。効率が良い羽に変えればいいのだ。


『ヒマー』

『ツナンナーイ』

「もう少しだから頑張って、はいニンジン」

『オナカイッパーイ』

『マンプクー』

「そんなー。もうちょっとだから頑張ってよー」


 わがままなウサギをなだめながら改良を行う。


「よし、これでどうだ!」


 羽を変えた試作行燈をウサギに渡す。


「動かしてみて」

『ワカッター』


 ウサギが返事をすると、行燈がまばゆく光る。


『マブシー』

「おー、すげー光ってる!」


 構は照度計を探して明るさを測った。照度とは光の明るさを表す単位の1つで単位面積当たりの光量を指す。建物を設計する際には、用途によって空間の明るさを決定するのだ。単位はlx(ルックス)だ。

 読み書きする空間は明るく、倉庫などは暗く、が一般的である。


「いままでのが300lxだったけど改良品は750lxだ!」


 構は思わずガッツポーズする。300lxは会議室などでの設計照度で、750lxは書類作成などをする事務所の照度になる。数値的にも倍になったのだ。大成功である。


「これで試してもらおう。今日はもう終わりだよ。で、これを持って帰ってママに渡してほしいんだ」

『ママー? ワタスー?』


 構が改良型行燈を渡すとチビウサが首をかしげる。長い耳も揺れてかわいらしい。お土産にニンジンを持たせた。


『イクー』

『カエルー』

『バイバーイ』


 チビウサギたちが工房を出て森に消えた。騒がしいチビウサがいなくなると工房は途端に静かになる。森の木々が風に揺れる音しかしない。


「いると騒がしいけど、いないと寂しいな」


 構はコーヒーを口にした。



㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢



 構に行燈を渡されたチビウサたちは森を跳ねてママウサギのもとへ急いだ。構の工房から10分もしたあたりに巨大なたれ耳ウサギのママウサギがいた。


『『『ママー』』』

『おかえり、今日はもういいのかい?』

『『『デキター!』』』

『ほぅ、できたのかい。はやかったねぇ』


 チビウサギから差し出された行燈をママウサギは受け取る。ママウサギは行燈をしげしげと見まわしコテンと首をかしげる。


『ふーむ、変わりないようだけど』

『『『マブシー』』』

『まぶしいのかい?』

『ソウー』

『アカルーイ!』

『オメメイターイ』


 チビウサギらがコクコクと頷くので、ママウサギはその頭をそっと撫でる。


『きちんとお仕事ができて偉いねぇ』

『ホメラレター』

『ヤッター』

『ワーイ!』


 チビウサギらが喜んで跳ねまくる。そんな様子にママウサギはふふっと笑った。


『さて妾はこれを試さないといけないね』

『ママイクー?』

『オデカケー?』

『あぁ、ちょっと行ってくるから、いい子にして待ってるんだよ』


 ママウサギは頭上に大きく飛び、羽を広げた。


『さぁて、使えるものだといいんだけど』


 ママウサギは森の上空をすべるように飛んでいく。遠くに見える黒い霧を睨みつけた。


『変わりはないようだね』


 ママウサギは木々の隙間から森の中に着地した。周囲にはチビウサギたちが行燈を抱えて瘴気から領域を守っている。黒い霧と行燈の光は、寄せては返す波のように拮抗していた。


『『『ママー!』』』

『みんなご苦労だね。ママはいまからちょっと試すから気にしないでいるんだよ』


 ママウサギはチビウサギたちに言い聞かせる。驚いて行燈の光が消える恐れがあるからだ。


『さーて、新しい魔導具はどんな塩梅かねぇ』


 ママウサギが魔力を流すと行燈がまばゆく輝く。森の陰を押しのけ、周囲のチビウサギたちが持っている行燈の光を霞ませるレベルだ。

 その光はすさまじい勢いで黒い瘴気を蒸発させていった。いままでの行燈では食い止めるのがせいぜいだったが、瘴気を大きく後退させていた。


『へぇ、これはいいじゃないか。こいつがたくさんあれば、妾たちの住処は安全だ』


 ママウサギの声は弾んでいるが『待てよ?』と顎にもふもふの手を当てた。


『妾達が持っている魔道具全部にやらせるには、それなりの代償が要るねぇ』


 さすがにただでやれとはママウサギも言えない。いまでも修理の際にニンジンをもらっているのだ。畑で収穫されたニンジンには魔力が豊富でチビウサギの成長にもいい影響を与えている。

 構は魔力がなく感知もできないのでわかっていないが、工房がある土地は豊富な魔力であふれていた。この森も魔力が漂っている豊かな森だが、あそこは別格だ。しかも魔獣が入れない結界すらある。神に守られた土地だった。

 なぜ神が守っているのかはママウサギも知らないが、利用することはできる。


『ヨシ、果物の種を持って行こうかねぇ。あいつにだって利はあるさ』


 ママウサギは近くにいたチビウサギに行燈を渡すと元居た住処に帰っていった。

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