第3話 瘴気の原因と魔導具の強化③
『ニンジンー』
『タベルー』
『ヨコセー』
工房をちょろちょろ動き回る白いハネウサギが3羽。かわいいが勝手に動かれると困る。
「ちょっとこの行燈を光らせてみてくれる?」
『ニンジンー』
「はいこれね」
『ワカッター』
チビハネウサギのわがままを聞きつつ、行燈を光らせてもらう。
「やっぱり微弱だけど電流は流れてるな」
クランプ型電流系で計測するとわずかだが電流を検知した。1アンペアに達しないレベルだ。電圧も計測したが、ちょうど乾電池と同じ1.5Vだった。
「ベルーイゲンの木が魔力を電流に変換してるのか。コンバータみたいな感じかな。魔力を電気に変換する」
コンバーターとは電気の流れを適切な形に変換するための装置の総称だ。交流を直流に変えるのもコンバータの仕事だ。
構は考える。魔力量と電流が比例関係にあれば、魔力が増えれば電流値が増え、明るさも増すのでは?と。
「ま、机の上で考えてても答えは出ないっと」
構は楽しそうに笑った。こんなことは困難ですらない。試行錯誤は楽しい娯楽だ。
「漏斗は行燈内部ぎりぎりの大きさだから変えられない」
構は書きだす。漏斗の形にヒントがあるのではと考える。
「漏斗の役割は、液体や粉を口の細い容器に入れやすくすること。入る速度を上げたら電気も強くなるか?」
重力任せだったものに圧をかけてより多く流れるようにするのだ。
「ポンプが設置できる空間はないし、こんな小型のポンプなんてないしな。そもそも液体でもないか」
構はフームと考える。
『ニンジンー』
『ナクナッター』
考え込む構の足をチビウサギたちがポムポム叩く。構は下を見た。
「君たちは健啖家だねぇ」
『ケンタンー?』
「おいしそうによく食べるねってこと」
構は冷蔵庫にしまってあるニンジンを取ってチビウサギたちに渡す。
『『『アリガトー』』』
チビウサギがモモモとニンジンにかぶりついた。構はふふっと頬を緩めて作業台に向きなおした。
「押し込みと言えばファンだな」
ファンは風を送るのではなく押し込むのだ。空気にも抵抗はあるので、空気を押してやらないと届かないのだ。
漏斗はそのままで風量を上げる工夫。
「小型扇風機でもくっつけるか。ミニモーターをつけて羽を回せば風圧も期待できそうだ」
構はタブレットでモーターのカタログを調べ始めた。ラジコン用やミニ4駆用のモーターは種類も豊富だ。
「おもちゃの進化もすごいよなぁ」
構は出てくるモーターの数に驚くとともにおもちゃにも高等技術が使われているのはうれしくもあった。小さく作るという行為そのものが高等技術なのだ。
「次は羽のサイズだ」
漏斗のサイズもあるから大きすぎてもだめだし、モーターの出力も関係する。モーターも数種類選び、それに合った羽の大きさを決め、通販で注文する。
「よし、今日のところはこんなもんだ」
チビウサたちに終了を伝えた。
㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢
数日後、頼んでいた小型モーターと羽が届いた。到着日はわかっていたので朝からチビウサたちが来ていた。工房はさながらウサギの託児所だ。
構は考えていたモーターと羽の組み合わせを行燈に組み込んだ。モーターの電源は魔力を流した際の電気だ。その後にファンで電気を増やしてやればいいという設計で、ターボの仕組みに近い。
「おチビさんたち、手伝ってくれる?」
『ナニー?』
『ヤダー』
『ニンジンー』
「ニンジンは食べたでしょー? 食べたらお仕事だぞー」
構はチビウサを作業台にのせ行燈を渡す。
「光らせてくれる?」
『ワカッター』
チビウサの返事と同時に行燈が光り、モーター音も聞こえた。
「あれ、元のよりも暗いな」
『クラーイ』
「暗くなっちゃったねぇ」
『シッパーイ』
チビウサは行燈を置いて作業台から降りてしまった。子供だから飽きやすいのだ。
「もう一回光らせてくれる?」
別なチビウサを抱えて作業台にのせた。
『シカタネー』
「生意気だな。ママに言いつけるぞ」
『マカセロー』
現金なものだ。
行燈が光ったので構は電線を電流計で測定する。
「あれ、電流が落ちてるじゃん。モーターで消費しすぎてるのか」
モーターが強すぎて電流を使ってしまいかえって暗くなってしまったのだ。
「意味なしだなこれ。よし、モーターを変えよう。失敗は成功の基! レッツチャレンジ!」
弱いモーターに変えたところ、こんどは過電流で電線が溶けた。
「これだと増えた電流が大きすぎるのか。モーターを小さくして回転数を落とそう」
一番弱いモーターでも過電流となった。構はむむむと唸る。これより小さいモーターはあるが専用品で高くつく上に簡単に入手できない。
「じゃあ電線を太くするか」
電流は電線の太さによって変化する。太くなれば許容電流値も大きくなる。2サイズアップの電線に変えたところ、断線は無くなったが明るさはあまり変わらない結果になった。




