表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/79

第56話 賢者、興奮する

「援護は!?」

「お願いします! 聖女の力というものを味わいたいのでね!」

「任せなさい!」


 この戦闘狂が……なら、さっさと潰してやろう。

 コイツは良くも悪くもコウやララの援護が出来てしまう程に強力な存在だ。レミィを倒した後から基礎的な技術は休みなく叩き込んでやったからな。そんな存在が僕の与えた目的で潜り込ませたのに、僕の命令よりも僕との戦闘を望むだなんて……本当に配下に加えて正解だったよ!


「楽しませてくれるのだな! 直ぐに死ぬなよ!」

「当然! 聖女の加護があって直ぐに死ぬと!?」

「なら! 死ぬと良い!」


 ギリオルをコウと同等に見てはいけない。

 コイツは僕の教えを多量に飲み込み続けるような本物の天才だ。才能面だけで見ればレミィやカイリに少し劣るだけの原石を持ち、戦闘の勘だけで言えば二人を圧倒的に凌駕する。今はまだ不可能だとしても後にミルファとも戦えるようになるかもしれないからな。


 まぁ、それも生かしたから知った事実だが。

 本当ならば、計画に少しも必要性が無ければ殺していたかもしれない存在だ。今となっては少しだけ早計だったと後悔すらしているよ。だからこそ、僕の愉悦を妨げられるだけの力を見せられないのならば関係無く殺させてもらおう。


「ふむ、対応するか!」

「これが聖女の支援……! さすがに伝説に残るだけのものではある! だが……!」

「基礎がなっていないな! ステータスの高低で勝敗が決まる訳では無いのだぞ! 剣を上手く振れないのであれば他の事で対応しろ!」


 わざわざ、薬物強化を切ってやったんだからな。

 別に二人を馬鹿にして切った訳では無い。ギリオルを殺す気で戦うのと同時に、これは一つの命の奪い合いとしての講義でもある。僕の剣術に慣れたのなら少しづつ速度を上げていってやればいい。


 八振り目、ギリオルの守りが追い付いた。

 そこから一段階だけギアを上げて剣の重みを少しだけ重くする。普通の鉄の片手剣だとはいえ、勇者と打ち合える剣が軽く流せるものでは無い。もっと言ってしまうのなら風儀神翔とララの強化で何とか耐えられた段階だ。普通なら勢いのままに斬られて終わりだろう。


「火を司りし神よ! 御身の加護を不遜なる私の身に宿したまえ! 焔ッ!」

「無理やりステータスを上げるか! だが! それでは付け焼き刃にしかならないぞ!」

「それは! 私一人で戦えばの話でしょう!」

「撃ち抜けッ! 多重展開ッ! 雷槍ッ!」


 上位魔法の雷の槍を三百は作り出したのか。

 詠唱自体は聞こえてはいなかったが……魔力の巡りがララにあった時点で詠唱を脳内に浮かべ、唱える事でイメージの補填を補っていたというところだろうな。わざと僕に突っかかって戦っていたのもヘイトを稼ぐためだったのかもしれない。


「だが! そんなものは無意味だ!」

「知っていますよ! だから! 何重にも罠は張り巡らせて頂きました!」

「何を……!」


 ギリオルの事だ。何かを狙っている。

 目には映らない魔力による罠か、それとも物理的な強化を行う準備か……違う、両方とも無駄な魔力が流れていない時点で否定出来る。なら、ララの方に何かがある……それもきっと無い。アレだけの魔法を使うためなら幾らララでも余裕は───





「貴方なら! 勘繰ってくれると思っていました!」

「な! ただのハッタリか!」

「ええ! 体勢が崩れればコチラにも!」


 チッ、確かにステータス差で押し込まれた。

 構えすら取っていない現状、打ち合いを続ければ少しづつ僕の方が追い込まれていくだけだろう。それが勇者と戦っていない僕だったら、な。アイツを相手にする中で剣の扱い一つで抑えられなければ力負けして死ぬだけだ。


 ただその教えはレミィから学んだ事だろう。

 自身の行動から相手は自身の先の動きを測るために余計な思考を巡らせる。それが必ずしも自身のために動くとは限らないが……相手が格上となれば自身の利を少しでも手に入れるためには必要な行動だろう。その点は確かに褒めてやってもいいが……。


 剣の扱いという一点に置いては利は僕にある。

 今だって無理やりにでも体勢を崩そうと力任せに振っているはずだ。多少、大振りな時点で早期決着を狙いたいのだろう。その流れなら次は……右袈裟斬りだ。それさえ分かれば下に流しながら軽く上に飛んでしまえばいい。そのまま、右手首を斬り付けて首を掴めばギリオルは攻勢に移れない。


「崩れれば、なんだ」

「ええ! 崩してくれましたね!」

「ご苦労様! 空間断絶ッ!」


 なるほど、最初から時間稼ぎだっただけだと。

 レミィと戦っていた時とは変わったな。あの時なら恐らくは他者のために動く事はしなかった。他者に任せるという事は勝敗も自身の命すらも預ける事になってしまう。それ程までにララは信頼出来る存在に映ったか。


 そして、空間魔法最高難易度の技を放つか。

 それは空間魔法を覚えたての人間が放って良いようなものでは無い。僕が作った結界すらも簡単に壊してしまい、触れる相手が僕以外なら存在すらも抹消してしまうだろう。放ったララだって死に体に近いはずだ。それでも撃ったのは対応する姿を見たいからなのだろう。




「壊せ……※※※」


 誇っていい、これは僕の隠し球の一つだ。

 勇者にしか使わないと決めていたモノを自分の身を守るために使用した。どれだけ言い訳を並べようとも結果は変わらない。さすがに名前まで口にしてしまえば範囲が制御し切れなくなってしまうから濁しはしたけどな。だが、今の一撃のために全魔力を注ぎ込んだのだろう。もう勝敗は決している。


「これで聖女は沈んだな!」

「貴方だって! 魔力量の大半を使っているように思えますけどね!」

「勝手にほざくといい!」


 残りは聖女の強化が切れたギリオルのみ。

 あまり時間はかけられないからな。試練の一つでも与えてやりたいところだったが……今与えられるのはこれくらいだ。コウが対応出来なかった剣から身を守る、ただそれだけ。まぁ、出来るとは少しも思っていないけどな。これを攻略出来たのは十人にも満たない。


 静かに静かに……ギリオルヘ距離を詰める。

 聖女の与える力というのは強力だ。その力を制御出来てしまっているララが仲間にいるのなら気が大きくなるのも分かる。それでも英霊とSSランクでは差があり過ぎるんだよ。現にコウと同じく幻影対処が出来ていない時点で採点は終了してしまった。悪いけど……死ね。






「……ほぅ」

「姿は見えず、足音も消し、気配も消せる……ですが、私の心臓の音の反響までは消す事が出来ませんでしたね。目で追えないのならば他の何かに頼る、この程度の動きなら見透かされないと思っていましたよ!」

「止めるか! やるでは無いか!」

「ご冗談を! 試されていたのでしょう! 俺に貴方を傷付けられる力が少しでもあるのかを測るために!」


 そこまでは求めていない……ただ満足だ。

 僕の一撃への対応は数十通りはある、ただそれを成せるかどうかは別問題だからな。特に死が迫る状況で行える存在なんて、それこそ、僕の知るSSSランク冒険者達だよ。だからこそ、小さな不満だってある。


「こっちを! 向けッ!」

「君は遅いな。それでは」

「雷波ッ!」


 へぇ、覚えていなかった雷魔法を操るか。

 才能があった……というのは当然の事として勇者の魔力量で無理やり発動させたといったところだろうな。僕に効かないとはいえ、そこまで出来るのなら多少は許してやってもいい。何と言っても今の僕は自分でも驚く程に興奮している。


 今の一撃はコウのみでは不可能なものだ。

 つまり、ララが既に復活している。幻覚魔法の類では決して無いな。それなら既に探知している。賢者として力を手にした時点で僕より高度に魔法を扱える存在は数少ないだろう。それを一介の人間に行えるはずも無い。


 なら、目の前にいる伏せたララが本物だ。

 魔法を放てば結界に防がれた。予想通り、死んだ振りを続けていたのだろう。それらを視線を交わすだけで息を合わせたのだ。魔力の乱れ等も起こさずに動いていた時点で相当な負荷がかかったはず。アレだけの魔法を放って尚も勝ちに貪欲とは……口角が上がってしまうじゃないか。




「三対一……なるほど、これは結構だ。ここまで出来るのであれば君達はロレーヌ家に相応しい。そしてギリオル、君は冒険者の中で最上位に至れる数少ない存在だろう」

「あッ! 二人共! 止めて!」

「美しくは無いが……詠唱を破棄する。暴発せよ、大爆発ッ!」


 この魔法は長々とした詠唱が大切なんだ。

 だというのに、詠唱破棄してしまうだなんて本当に美学の欠片も有していない。それでも最高峰の魔法を持って終わらせてあげるのが格上となる僕の仕事だ。愉悦の時間はここまでにしておこう。そうでなければ……本当に王国を消してしまいそうだからな。

宜しければブックマークや評価、いいねや感想などよろしくお願いします! 作品制作の意欲に繋がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ