迷いの森を抜けて
リュウは、ナナとエル二人を担いできた。
「どっこいせっと。いくら軽いと言っても二人を一キロメートルも担いで歩くのはいささか疲れるものがあるな」
「お疲れ、リュウ。二人を部屋まで送ったら、リュウも寝て良いぞ」
「ああ、悪いけどそうさせてもらう」
迷いの森で散々歩かされたのだろう。リュウの顔には覇気がなかった。このあとユリと話し合って、お化けマッシュルームについて掲示板に書き込むことにした。なおその際、眠り耐性を持っていた方がいいことも明記しておいた。
「これで攻略一番乗りだな」
ジマはなんだかワクワクしてきた。と、同時に不安にもなる。攻略最前線は狙われるんじゃないかとか、嫉妬されるんじゃないかいったようなことである。しかし、みんながログアウトを目指している今、邪魔はされないような気もする。とりあえず今晩はもう寝ることにした。
次の日の朝。目覚めると、朝練のためのウォーミングアップをした。掲示板も見てみたが、まだ第六の街へ到着しているのは、ジマ達だけだった。
「さあ、朝練といこうじゃないか!」
ユリはやる気満々である。第六の街にはリングや道場があって、わざわざ始まりの街へ帰らなくても練習することが出来た。
ジークンドーにやられた三人はこの三日間、きっちりジークンドー対策をしていた。おかげで勝率は五分。リュウに至っては七割から八割ほど勝っていた。エルにリュウ対策を聞かれるほどだった。だから俺は
「ボクサーは足元がお留守だぞ」
とだけアドバイスした。
それだけで、またエルの連勝になったのだから、実力は伯仲しているのだろう。逆にユリ、ナナ、リュウの三人にはジークンドー対策を聞かれたが、
「スピードで圧倒しただけ」
としか答えられなかった。実際今ほどのスピードがなかったら、どうしていたかあまり想像したくない。おそらく近距離戦に持ち込んで、肘打ちと膝蹴りでどうにかしていたのだろう。
昼食も、たまにはNPCのお店で食べてみるかという話になった。第六の街の高級そうなレストランへ入店する。ランチタイムということもあって、お安く済ませることが出来た。そして味の感想はというと、
「美味しかった」
「美味かった」
と上々の感想だった。
「やっぱりNPCはこのシーピーで生きているわけだし、料理も上手くなるわな」
リュウの言うとおりだと思った。
昼練の後は、エルにナックルを作ってあげようと話になっていた。すると
「材料なら揃っています」
準備万端のようだ。
「今までは独り身の探求者だったものでしたから、ユニークモンスターを狩るまでやりこむのが普通だと思っていました」
さらっとすごいことを言うエル。
「まあ、ソロプレイでどこまでやるかは人それぞれだしな」
ちなみに四人ともソロプレイの時は、ユニークモンスターを倒すまでやっていた。
とりあえず、ヨウさんのお店に行こう。
「こんにちは、今大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。どうされました?」
「実は彼女にナックルを作ってもらいたいんです」
「はじめまして、ヨウです」
「はじめまして、エルです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「ナックルの他に作りたいものはありませんか?」
「ビッグフロッグの皮があるのですが、五人分なにか作れませんか?」
ジマが聞く。
「この量ですと、二人分の装備が限界かと思われます」
「では二人分で装備の強化をお願いします」
「あっ、装備の強化でしたか。それでしたら五人分の装備の強化が出来ますよ」
「是非それでお願いします」
こうして、五人分の装備の強化が決まった。
「明日のお昼頃までに出来ます。是非お時間を作ってお越し下さい」
「はい、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
「贔屓にしているお店なんですか?」
「ああ、腕は信用して良いぞ」
エルの質問にジマが堂々と答えた。




