人間観察
朝目覚めると、日光がカーテンの隙間からさしていて眩しかった。今日からシーピーの世界での一日が、現実での五分になる。シーピーで超加速していても、現実での体は大丈夫なのか不安はある。だがそれ以上にワクワクしている自分がいることに気付いたジマだった。
「おはよう。いよいよ今日からだね」
「おはよう。そうだな、今日からはどれだけ早くラスボスを倒せるかになってくるな」
「急がば回れっていうし、のんびりいこうよ」
ユリと話していると不思議と安心してくる。
「よっ!お二人さん朝から熱いねぇ」
リュウが煽ってくる。
「ぜ、全然そんなことないぞ」
「そうそう、今日から頑張らなきゃねって話をしてただけ」
「そうだな。リアルでは五分しか経過していなくとも、こっちでは一日だもんな」
「昨日の鑑定の心得を習得した時に思ったんだが、これは他のことも鑑定出来るということじゃないか?」
「あり得るねー、それ」
「鉱物鑑定とかか?」
「その通り。だけど今日試すのは人間観察だ。せめてNPCと人間の区別は出来ないものかと思ってな」
あわよくば相手のスキルも分かってしまうんじゃないか、と期待もしている。
「けどよー人間観察ったって、広場で一日中ボーっとしてるのはあきるんじゃねーか?」
「大丈夫、良い場所がある」
そこで俺は一点を見つめて指を指す
「それは闘技場だ!」
と、言うわけで朝練の後、闘技場に来た三人だった。闘技場は予想以上に人がひしめきあっていた。ログアウト不可なのだから攻略優先だと思っていたが、その前に強者を見つけてパーティーを組もうと言うことらしい。
俺達は観客席に座るために、最低限の賭け金を払って入場する。最初に観戦するバトルは悪魔対天使。一応悪魔の方に賭けたが、はした金なので勝敗はどうでも良い。悪魔をじっと観察する。特に分かることはない。
試合が始まった。天使の光属性魔法がバシバシ飛んで来て、悪魔は劣勢気味だ。だがここから空中戦が始まった。すると悪魔の方が空中戦に慣れているのか、闇属性魔法を駆使しながら、天使のHPをじわじわと削っていく。それならばと接近戦に持ち込んだ天使だったが、近接戦は悪魔が圧倒して終わった。
「流石に一戦目から鑑定が手に入るとは思ってねーよ?」
「だな」
「のんびりいきましょう」
二戦目ドワーフ対ドワーフ。ガトリング対ハンマーの戦いになった。といっても遠距離からガトリングを撃ちっぱなしにして、ガトリングの勝利がすぐに決まった。
三戦目エルフ対エルフ。どこかで見た顔だと思ったら、クロキチだった。一応クロキチに賭けてみる。試合開始直後、稀有なことが起こった。クロキチじゃないエルフが突っ込んで行ったのだ。魔法大対戦が起きるだろうと予想したみんなを、出し抜いたのだ。クロキチも距離を取りながら戦ってはいるが、エルフは魔法耐性が強いので、当たっても大したダメージはなく、その距離は詰められるばかりだ。とうとうクロキチを追い詰めたエルフは、その拳と脚でボコボコにするのだった。
「うわぁ、凄い試合だな」
とリュウも言うとおり、とてもエルフ同士の戦いに見えない。
「近接戦で殴ってる方、ケンカ慣れしてるような気がするよー」
ユリも格闘技経験者であるため、目をそらすようなことはない。
「ああ、俺も思った。ケンカ慣れしてるなって」
マウントを取ったままエルフはクロキチを、パウンドで殴り続け、あっという間勝利してしまった。
こうやって見ているだけというのは性似合わず、またもや闘技場で戦うことを決めたジマ逹だった。
「人間観察も楽じゃないな」




