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帝国の話

―これから、百の兵で南にある国を一つ落としてご覧にいれます。

そう宰相が約束したが故に、貴族を集め娯楽として見る事となった帝国軍人の勇姿。


「………」


宰相も言葉を失ったかのように立ち尽くしている。


これは、なんの冗談なのだ?


彼の国は、街に被害が行かぬよう自ら帝国軍を城まで通らせた。

遥か上空から映された映像では、内門に並んだ騎士団が丸見えになっており、開門した先の兵力で迎え撃つつもりなのだと、宰相もそう判断しこの愚かな国を支配した後の処理を言い渡した所だった。


帝国軍人ひとりで、属国化した地方兵士五人分の働きをする。

彼の国の騎士団は兵士を合わせても二百程度しかなく、大した抵抗もなく(・・・)終わるハズだった。


だが、帝国兵は今武装を全て解かれ、彼の国の騎士に拘束されていくだけ。


「宰相よ」


「…はっ!」


ビクリと身じろぎし、脂汗を浮かべた宰相が自ら跪いた。


「彼の国の召還勇者はここまで強いとは不運であったな」


「申し訳ございません、この責任は…」


「あれは余興だ。私は余興であれば誰も咎めぬ」


たった一人門の前にのこされた勇者が成したのは帝国兵の完全無力化。


「奴らは、南側の戦力の把握という役目を果たしている。身の代金を払ってでも全員連れ戻せ。」


「御意に!」


宰相が、慌てて部屋を出て行く。


攻め入うとしたが、武器を奪われ鎧を脱がされ拘束された。

それだけだ、こちらの落ち度しかないが、何一つ奪っていない。

誰も命までは取ろうとしないだろう。


そう思っていたのは、その日の夜までだった。


深夜、白い鎧を着たあの兵士が現れるまでは。



「や、申し訳ない」


「…いや、気にしなくていい」

天井に大穴を開けて現れた少年は謝りながら巨大な盾を横によけた。


綺麗な銀髪に女性的な顔立ちをした少年の顔が無骨な鎧に埋もれている。


映像では分からなかったが、愛らしいとさえ言えそうな存在から放たれる圧倒的な存在感は一体なんだ。


「へいか…こうていへいか、ふひゃ」


そして彼の脇に抱えられた、私が任命した使節団の責任者の…おそらく伯爵だった者。

ガタガタと震え、こちらに必死に手を伸ばして助けを求めている。


「こここころ…ころしゃれ、ふひぅ」


「あっちゃー、大丈夫っす、帰りは転移しますから任せて下さい」


“後で弁証に来ますんで”と言い残し彼は一度去った。


幻であったかのように消えて見せた。



「いや、あの人が一度でいいから空を飛んでみたかったなんて言うから、飛んでみたんですけど凍えちゃったらしくて急いで向きを変えたら落ちちゃたんです」


「…そうか、それは大変、っだったな」


再度現れた彼は何事も無かったかのように穴の補修を始めた。

周りを、建物の周りを兵士が取り囲んでいるのだが、一向に気にする様子がない。


「いやしかし、おじいさんも大変っすね。こんな小屋に一人で住んでるなんて」


小屋、そう、ここは広大な帝城の片隅に作られた納屋だ。

110才まで生きた先代皇帝は100を数えた所で血族の粛然をし数人の血族を小屋に押し込めた。

そして、恐怖乃代名詞《皇帝》は少しに前なくなり私が後釜についた。

しかし、その恐怖は私を含め誰一人として忘れさせてもらえない。

故に、先代皇帝の言いつけを守り皇帝となった今も小屋から住まいを動かせずにいる。


お前に人のなどいらぬのだと、与えられた何もないこの小屋が、唯一無二の現皇帝の私室なのだ。

昼は、皇帝が夢見た世界制覇の指示を出し、夜は、《皇帝》から少しでも見えなくなるように小さくなって眠る。


暗殺者すらも見分けられなかったそれを、一目で見分け人質を見せつけた少年が恐ろしい存在に見えた。


先代皇帝が集めた奴隷勇者最強の者は、宰相の指示で数人の仲間とともに彼の国へ向かった。

まだ、数人奴隷勇者が居るが兵器として他国へ送られている。

しかし、それらがいたとしても役に立つとは思えなかった。


治世を脅かすと皇帝が廃した宗教に描かれていた女神の生き写しがそこにいたからだ。


世界を救ったとされる女神の一柱カヅサ


「おじいさん、汗臭くって悪いね」


補修でもなく屋根を作り終えた少年は、上着を脱いで腰から取り出した布で上半身を拭っている。


その形状から自身の下着だろう。


その後、一言二言話しをすると迷惑料と食料と金を此方に押し付け、帰ると告げて彼は消えた。


食料は間違いなく竜の肉を干した物だった。


子供の頃から毎日のように狩っていたと笑う姿に、冗談かとも思ったが、あながち嘘では無いのかもしれない。


―誰も勝てん

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