降下そして師に出会う
「2・1・開傘。」
バフバフッ
声にあわせてタグを引くとシールドの両脇一部が剥離し小型の落下傘が現れた。
ボフッ
そして、遅れて真下から大型の落下傘が現れた。
「ぶふぉあっ?!」
なんというサプライズ。いきなりふっかふかの布団にダイブしたような感覚だった。
速度はかなり落ちたが、波乗りのパドリングみたいに乗る部分につけちゃいかんだろう。
「なるほど失敗作か。」
あいつは速さだけを口にしていたが、はたして人が上に乗ることまで考慮されていたかと言えばおそらくノーだ。
無理言って借りてきたのはこちらだから怒る訳にはいかん。
しかし、先に飛ばしたロケットは一体どこへ飛んでいったのだろうな。
そう思いながら落下傘のロープをたどり板部分に戻る。
着陸まで後少し。
最後の減速の為に俺は両手に風を集め始めた。
「ぬあああああっ。」
俺の魔法は呪文を唱えない。
四属性の風系統ではなく、純粋な魔力だけで行使する無属性魔法。
だから、普通の魔法は使えないが魔力さえあれば自らの意志と想像力で行使できる極めて自由度の高い魔法。
「…いや、使うだけ無駄かも。
集めた風をそのまま握り霧散させた。
落下傘がしっかりと上昇気流を捉え十分速度を落としてくれているから、ランディングポイントを探すのに専念したほうがよさそうだった。
なにより帰りのほうがはるかに厳しいんだからな。
◇
「なんてこった。」
森の中をグルグル歩きながらたくさんのキノコを集めたのだが、肝心の絶倫茸の形状が曖昧だ。
松茸ににたのからブナSimeji、果てはワンアップキノコみたいのまで集めた。
特に怪しいがシンボルそのままみたいのキノコも数種類集まった。
音速の半分ほどで飛行時間三十分で二三百キロか。
とりあえず、それらしいカルド山らしきの麓には到着出来た。
「しかし、これが山とは驚きだな。」
とてつもなく高くて大きな木にしか見えない、まあ幹とよぶには太すぎるから確かに木のような山かもしれない。
「表面は確かに石なんだよな。」
コンコンと叩いて調べるが石と言うより鋼鉱石に近い硬さだ。そんな物でできたモノが樹木であるはずもない。
それこそそんな巨木は世界を支える世界樹くらいしか思いつかないが、コレは違うだろう。
世界樹は人が近づけばその姿を変えてしまうと聞いた覚えがあるし、なにより麓には森の番人エルフの始祖たるエルダーエルフの楽園があるはずだ。
エルフの村はあるんだが楽園とは言い難いな。
ウチのスラムに毛が生えたくらいの建物に農園とか果樹園。
間違いなく村だしかも農村。
茸は村人に聞いた方がはやそうだ。
と言うわけで、村の入り口にいた10才くらいの女の子に聞いて見たんだ。
「お兄さん集めたキノコってほとんど毒入りだよ。」
「…なぬっ?!」
「ほんとほんと、ほとんどが幻覚を起こしたり身体おかしくするような物ばっかり。」
なんてこった、あれだけ集めたのに当たりがないだなんて、まるでキノコガチャ。
「…もう一回集めてくる。」
「いや、もうお兄さんはキノコとるの止めたほうがいいじゃないかな?」
「どうしてだ。」
だいたい言いたい事はわかるさ、変なの集める才能がある。とは言えないよな、少女は恥ずかしそうに言った。
「どの道、受け顔なら使いどころなんてないでしょ?」
「ブフォッ!?」
この少女腐海の住人だ、世界樹の麓の清廉潔白なエルフとはかけ離れた思考ここは生ける物全てが呪われるという土地なんだろうか。
まぁ、エルフは美形だらけと聞くし。
田舎だから女の人達がそんな事になったりするんだろうか?
「オレにそっちのけはない、誰か薬なんかに詳しい人はいないか?」
「このあたりの植物なら村の人みんな知ってるよ?一番詳しいのはお爺ちゃんかな。」
「頼む連れて行ってくれないか。」
「いいけど、多分怒られるよ?。」
なんで、怒られる前提になるんだ…。
◇
「しかし、この辺りに生えてるキノコの中にはそんな効果があるものはきいたことがないのぅ。」
「…そうでしたか、ありがとうごさいます。」
エルフ村の長老さんがいうのだから間違いなくないのだろう。
しかも、本当に怒られたし。なんでかってーと、よくわからずに薬に頼るバカが嫌いなんだそうだ。
いや、心因性だから根本的な解決しないと意味がなく、薬だけでは無駄だそうな。
「お主の場合心因性のもんじゃから薬物で無理にアレするのもどうかと思うしのぅ。」
「そうなんですか?」
オレとしては、とりあえずたちゃいいんだけど、キノコじゃだめなのか?
「当たり前じゃい、普段はアレしても肝心な時にアレにならんと話しにならんわ。
シンボルなんざ、好いた娘と一緒ならいくらでもアレになるんじゃ、それをしなびたSimejiを薬で無理やりアレにしてるようじゃ何の意味もない、ワシ長く生きたおかげでそういった心得があるからの。
ワシが試した方法をいくつか伝授してやるわ。」
「!師匠とお呼びしてよろしいでしょうかっ!!」
なんとも頼もしい言葉にオレは平伏し、村長を尊敬の眼差しで見つめた。
「うむ、時間はかかるが己の意志を自由に通わす事がせば容易にアレになるだろう。
日帰りだといってたのう。今日はとりあえず旅の扉の魔法でも覚えてかえるがよい。」
「はいっ!よろしくお願いいたします。」
こうしてオレはエルフ村の長老に弟子入りする事となった。
ついでに、今は失われた古代魔法の転移を教えてもらい、修行のために毎週エルフ村に通うことになる。
◇
「極めれば下は〇歳上は米寿っまで大丈夫じゃ。」
師匠のレベルが高すぎてはなしにならなかった。




