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お立ち寄りいただきありがとうございます。


 「レベッカ、君のラストネームを訊いてもよいか?」

「ラストネームを申し上げたら私がどの家の娘かわかってしまいます。それをお知りになりたいと?」

「・・・・・・」

「ふふふ、日々の生活に少し謎があっても面白いと思ってはいただけませんか?」

「わかった。レベッカ。君は庭師のレベッカだ。」

「ありがとうございます。」

レベッカは輝くような笑顔をみせた。


 「君の将来の夢は何かな?」

「そうですね、なにか園芸に関係のあることをしたいとか、お菓子やパンを作って売りたいと思っています。子供をたくさん産まなければならないので、子供を産んでも続けたいです。たぶん領地に戻ってそこで農業をするのがいいかなと思っています。私はいつもはお店の農園で植物の管理をしているんです。それは農業にも通じるし、薬草は医学にも通じます。ですから将来そういう関係ができたらいいなって思っています。」

「なぜ子供をたくさん産むのだ?それは嫌じゃないのか?」

「嫌どころか、子供がたくさんいるのは楽しいから楽しみです。今もね、孤児院によく遊びに行ってます。子どもたちと遊ぶのは楽しいですよ。」

「そうか。でも領地に戻って、ということは、結婚せずに領地に戻るのか?それで子供を産む?」

「そうですよね、変ですよね。まあ、結婚しなきゃいけませんね。あははは、実はあんまりちゃんと考えてないんです。」

「ははは、そのようだな。君はまだ若いからな。」

「若くもないですけどね。でもまあ、兄もいて、兄もまだ独身ですから、私は気が楽です。」

「ああ、兄上がいらっしゃるなら、君は跡取りとかは考えなくてもよくて気が楽だな。」

「はい。」

「少し羨ましいな。俺は兄弟姉妹がいないので、跡取りなのだ。しかし我儘なので、妥協せずにまだ独身だ。」

「妥協して結婚して奥様を不幸にするくらいなら、結婚しないで養子でも取ったほうが良いのではありませんか?」

「そうだよな。親父にそう言ってくれ。はははは。」

「ふふふ、兄はそう言って、私に子供を産めと言っています。その子を養子にするそうです。それもいいかもしれないなと思います。まあ、私が子供を産むような環境になればの話ですけど。あはは」

「兄上は結婚はしないのか?」

「はい、しないそうです。」

「それでご両親は良いのか?」

「本人の自由だと言っています。」

「理解のあるご両親なのだな。」

「そうですね。私達はラッキーだと思います。」


 「だがそのぶん君に責任がかかってくるだろう?それは良いのか?」

「私は、もし結婚できて、子供が産めたらその期待に応えると思いますけど、結婚できなかったら、兄はよそから養子を迎えると言っていますからあまりプレッシャーは感じていませんわ。」

「なるほどな。君の話を聞いていると、気が楽になる。」

「そうですか?うふふ、それは嬉しいです。」


 「それで、君には結婚の当てはあるのか?」

「まだありませんけど、いずれ出会いがあったら、平民のどなたかと結婚するかな、なんて思ってます。でも、私魅力ないし取り柄もないので、どうなりますか。」

「平民と結婚したいのか。」

「したいしたくないというより、私貴族社会に出てませんから出会いもありませんし、それに私、貴族の殿方って、なんていうか、側女とかってお考えみたいですから苦手です。」

「貴族の男がみんながみんなそうではないぞ。」

「うーん、そうですね。うちの父も兄も堅いです。でも、そんなの釣書だけじゃわかりませんでしょ?でもまあ、結婚しますけど、社交はしません、仕事したいです、なんて言って、それでもいいよっておっしゃる貴族の方はまずいそうもないですから、それで平民だったら一緒に働けば良いからどうかしらと思ってるんです。」

「そうか・・・しかし、君はひとつ思い違いをしているぞ。君はとても魅力があるし、取り柄もある。」

「まあ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。」

レベッカがにっこり笑った。


 「おーい、レベッカ、どこにいるー?」

デニスが探している。

「はーい、ここにいまーす。」

ティモシーは

「では邪魔したな。また話しに来てもよいか?」

と訊いた。

「もちろんです。楽しかったです。ありがとうございました。」

「俺も楽しませてもらったよ。ありがとう。では、またな。」


 ティモシーが去ったすぐあと、デニスがやってきた。

「あれ?ティモシー様かな?・・・まいっか、レベッカ、どこまでやった?」

「ここからあそこまでです。」

「おお、頑張ったな。それに、いい出来だぞ。こんなふうにできるなら、今度から剪定の仕事をもっと入れるかな。」

「ええっ、ほんとですか!嬉しいっ!ありがとうございます。だからデニスさん好きー!」

「おい、そういうこと言うなって、照れるぜ。」

「えへへへ。」

「レベッカ、きょうはもう上がっていいぞ。頑張ったな。疲れただろ。」

「デニスさんも?」

「ああ、これからポールの病院に行こうと思ってな。レベッカも行くか?」

「はい、よろしいですか?」

「もちろんだ。ポールの奴、ゆうべヒイヒイ言ってうちまで這ってきたからな、ちょっと心配なんだ。レベッカも行ったら喜ぶぞ。」

「いったんお店に寄りますか?そうしたらお花持っていけるんですけど。」

「いいよ、あいつは花は似合わん。」

「あっははは、デニスさんったら。」

「じゃ、行こうか。」

「はい。」

レベッカはティモシーがレベッカの花が咲きこぼれるような笑顔を遠くから見ていたことに気づいていなかった。


 デニスとレベッカが病院に行くと、ポールは部屋で眠っていた。

担当医によれば、手術は無事に済んだそうだけれど、少々こじらせていたので、通常より長い入院となるだろうということで、2週間くらいかかるらしい。

ポールはよく眠っていたので、デニスとレベッカはメモを残して帰った。

それからレベッカは店に寄り、裏の農園の水やりをして家に帰った。


お読みいただきありがとうございます。

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