おしゃべりは楽しい
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デニスがやってきて
「どうだった?」
と訊く。
「やっぱりティモシー様でした。でも、噂なんてあてにならないものですね。ちっとも怖い方じゃなかったです。」
「そうか、まあ、レベッカだからだろうな。レベッカは貴族のご令嬢らしくないし、かといって平民でもない。貴族と平民の悪いところを取って、良いところを加えたみたいだからなあ。」
「よくわかりませんけど、そういえば私、レベッカとだけしか言ってませんから、どこの家の娘かバレでませんね。」
「バレたらまずいのかよ。」
「まずいってわけでもないですけど、私は貴族のお付き合いしませんから、バレるとめんどくさいです。」
「レベッカが貴族のご令嬢って格好したらきれいだろうよ。きっとやればモテるぞ。」
「いやですよお、デニスさん。貴族のご令息って、気持ち悪い女ったらしみたいな人ばっかりですもん。私はだめ。デニスさんみたいな人のほうがいいな。奥様が羨ましいです。」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるぜ。うちのカミさんに聞かせてやりたいぞ。」
「あら、奥様前にデニスさんがとっても優しいって仰ってましたよー。うふふふ。」
「何言ってやがんだい。仕事しろ仕事。」
「あー、デニスさん、照れてるー。」
しばらく一心不乱に剪定作業をしていたレベッカは、いきなり
「レベッカ」
と声をかけられて驚いて木から落ちそうになった。
「きゃっ」
「あぶないっ!大丈夫か?すまない、驚かせてしまった。」
「いいえ、私がいけないんです。私って、なにかに熱中すると他がなにも見えなくなっちゃうので。」
「そうか、さっきから、手際の良い仕事ぶりだなと思って見ていたんだ。」
「まあ、私ったらちっとも気づかず、失礼しました。きっと間抜け面してたでしょ。やだわ。」
「間抜け面って・・・ははは、そんなことはなかったぞ。誰かに言われたのか?」
「はい、いつも。あははは」
「君はこの仕事、長いのか?」
「そうでもありません。2年経ちました。まだまだです。実は剪定の仕事はあまりしません。今回は急病でできなくなった人の代理なんです。ですから頑張って良い仕事をして合格点を出したいと思っています。」
「そうか。君はとても良い仕事をしてると思うが。」
「今回は仕事の出来もそうですが、ティモシー様やお邸の方々に失礼のないように、ということがとても大事なんです。公爵様のお邸のお仕事させていただけるというのはとても大きな仕事ですので、失敗は許されません。頑張らなくちゃ。」
「公爵家だから頑張るのか?」
「公爵家だから、というか、大きなお邸ですので、仕事量が多く、やりがいがあります。」
「ああ、そういうことか。」
「・・・もしかして、ティモシー様は爵位が上だから、とお考えでしたか?」
「あ・・・ああ、そうだな。」
「ふふふ、たぶん、ですけど、公爵家だから頑張って男爵家だったら手を抜くということはないと思います。公爵家のお邸は大きいから、という理由なので、もし男爵家のお邸のほうが大きければもっと頑張ります。平民の世界だとお邸が大きいか小さいかということは問題になるって、私はそういうところが好きなんです。貴族の社会は爵位の上下で態度が変わったりして、それが私は苦手です。」
「そうだな。俺は公爵家だからということで寄ってくる者たちは信用できない。こんな顔でも俺の嫁になりたいと言ってきた者は何人もいた。だが、我が家は自由に使える金が少ないと知り、さらに顔を見て逃げていった。親は顔など気にせず嫁にいけと言っていたが、本人が泣いて嫌がった。そりゃそうだ、金が使えない醜い男の嫁になるなんて、嫌だよな。まあ、ある意味正直で良いな。女は金と見た目と地位で嫁に行くからな。」
「そうですか。でも、それはたまたまそういう人たちだったのかもしれませんわよ。少なくとも、お顔が原因ではないと思います。お傷は大きいですけど、醜いってほどじゃありませんし、もともとがきれいなお顔だから、今でもきれいなお顔だと思います。たぶん、お金でしょうね。パーティーごとに新しいドレスを仕立てて周りと競う、とか、そういう贅沢できなきゃいやって人は多いですから。そしてそのパーティーやお茶会って人によっては毎日どこかに行ってるみたいですもの、相当な出費でしょうね。領民もたまりませんねえ。お気の毒に。」
「まったくだ。奥方の浪費のために高い税を払う身になってみろと思うな。」
「奥様の力は強いですのでね。気をつけないと。うちは母は病弱なので社交ができないということになってますので質素です。うちは質素ですけど領民は税を課していません。それが誇りです。私も同じく病弱なので社交はできませんのでパーティーなどは行きません。」
「お母上は病弱なのか?」
「あははは、ピンピンしてますわ。あ、これは内緒ですわよ。」
「はははは、そうか。そして、君も病弱なのだな。」
「はい、もう病弱なので、貴族の学校にも通えませんでした。あははは」
「学校はどうしたのだ?」
「平民の学校に行きました。楽しかったですよ。今でも友達とたまに遊んでます。」
「羨ましいな。ご両親がよくできた方なのだろうな。」
「そうですね、父も母も理解がある人で私は運がいいと思っています。」
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